エッチなことしたい?


夢野も退院し、学校も学園祭の準備で慌ただしくなり、今年はクッキング部と合同でメイド喫茶を開くことになった。

玲奈のメイド喫茶も見れるし、学園祭って素晴らしい!


そしてみんなで話し合い、メニューはオムライスとパフェとクレープ、それからパンケーキとカルボナーラに決定した。

俺はクッキング部に混ざって料理する役になったが、多分パスタを茹でることぐらいしかできない。


「ポチー!」

「んー?」 


夢野は学園祭用のチラシ作りをしていて、少し進むたびに俺を呼ぶ。


「見て!」

「いいチラシだな」

「まだ完成してないんだけど」


最初のうちは全力で褒めていたが、呼ばれすぎてやや適当になってしまうのはしょうがない。


「流川くん!」

「なんだー?」


白波瀬に呼ばれたり愛莉に呼ばれたり、秋月に呼ばれたりと、みんなの進行状況を見るためだけに俺は今存在している。まぁ、なにもしなくていいから楽なんだけど。


そして学園祭二日前。

準備の最終確認と生徒会からの最終OKを貰い、調理室でみんな喜んだが、琴葉の口から衝撃的な言葉が出た。


「三年生のクラスにもメイド喫茶あるから、お客さん取られないようにね!」

「そういうこと、メイド喫茶やるって言った時に言えよ!」

「その時はまだ決まってなかったの。ごめんね?」

「まぁ、こっちは美少女揃いだし!大丈夫だろ!」

「相手は普通のメイド服よりも、少し露出多めだよ?」

「みんな聞いてくれ!俺、当時は一人で行動しようと思ぐっ‼︎」


全てを悟られ、夢野に大事な二つの玉を蹴り上げられた。一瞬で血の気が引き、お決まりのように床に倒れた。


「私達は楽しめればいいよね!」

「うん!」

「るっくん大丈夫?」

「大丈夫そうに見えるか‥‥‥?」

「ダメそう‥‥‥」

「しばらくそっとしといてくれ、痛みと戦う時間が必要‥‥‥」

「夢野さんを怒らないの?」

「怒る時は怒る。今は怒る気力もない。怒ったら怒られるし」

「ポチー?なんか言ったー?」

「好きでーす」

「へへ♡」


付き合ったばかりのカップルなのに、すでに上下関係が出来上がってる俺達を見て、琴葉は苦笑いを浮かべて調理室から出て行った。


その日はやることが終わって下校し、学園祭1日前。俺は夢野の家に遊びに行き、ベッドに寝そべって夢野と一緒に漫画を読み始めた。


「こんなデートでつまらなくない?」

「全然だ!でも、夢野の体力が戻ったら遊園地とか‥‥‥」

「やだ」

「えぇ⁉︎」

「凛ちゃんと行った場所でしょ?」

「知ってたの⁉︎」

「凛ちゃん、今もだけど、遊園地行った時の写真大切そうに持ってるもん」

「そうなのか。で、でも同じ場所でもいいだろ?」

「なんか嫌だ!」

「嫉妬深いなー」

「んじゃ、私が他の男とデート行った場所でデートする?」

「は⁉︎デートしたことあんの⁉︎誰と⁉︎」

「ほら、嫌そうに慌てたー。ポチ以外の男とまともに話したこともありませーん」

「デ、デートって嘘か?」

「当たり前でしょ?」

「まったく。ビビらせるなよ」

「とにかく遊園地は嫌だ」

「嫉妬してる時の夢野ってさ」

「なに?」

「めっちゃ可愛いよな」

「バ、バカにしてるでしょ!」

「してないしてない!」

「ふん!」


照れながら怒るのも可愛い‼︎好きになってからは、どんな夢野でも可愛く感じて、なにをされても憎めなくなってしまった。

ただ、嫌そうに薬を飲む時だけは見ていて心が痛む。


「ねぇポチ」

「なんだ?」

「やっぱりさ、エッチなことしたい?」

「なっ⁉︎そ、そんなこと気にしなくていいって」


俺は慌ててベッドから起き上がり、まだ読んでいた途中の漫画を本棚に戻し、冷静に漫画を選んでいるフリをした。


「でも、男の人ってそういうことしないと離れていっちゃいそうで怖い」

「偏見だよ。俺は、もし一生できなくても夢野と居るよ」

「それじゃポチが魔法使いになっちゃう‼︎」

「おい!心配してんのかバカにしたいのかどっちなんだよ!」

「魔法使いになったら白いフクロウ飼わなきゃね」

「はいはい、最近そういう映画見たのね」

「でも実際どうなの?凛ちゃんと愛莉ちゃんみたいにスタイル良くて可愛い子と暮らしてるじゃん?」

「うん」

「しかもあの二人、ポチのこと今でも好きみたいだし、浮気しようと思ったらできちゃうじゃん。そういうことになったりしないの?」

「ないないない‼︎」


いつもギリギリだけどない‼︎


「あっ!まさか玲奈ちゃんと⁉︎」

「おい‼︎」

「でもさ、ポチが浮気しても、きっと私は好きでい続けちゃう。私はポチに人生を預けるつもりだから」

「そんなこと言ってくれる彼女が居るのに浮気なんてしないよ」

「だよね。ポチも私に玉を預けてるみたいなものだもんね。浮気するなら玉は犠牲にしなきゃね!」

「絶対しないから大丈夫だけど、なんかヒュンってなるから言わないで⁉︎」

「えへへ♡信じてるよ♡」

「お、おう!」

「ポチくーん!」

「なんかお母さんが呼んでる」


夢野のお母さんに呼ばれて二人で一階に降りると、夢野のお母さんは俺達をリビングに案内し、ふかふかのソファーに二人並べて座らせ、デジカメを向けた。


「写真ですか?」

「二人の結婚式で流す用よ!」

「気が早いよ!」

「そ、そうですよ!」

「夢桜、話が違うじゃない」

「え?」

「いつも『ポチのお嫁さんになったらねー♡』って、結婚する気満々で話してくるじゃない!」

「そうなのか⁉︎」

「い、言わないでよ!」


その瞬間にシャッターを切られ、真っ赤な顔の俺が、真っ赤な顔して怒っている夢野を見てる写真を見せられ、夢野はさらに顔が赤くなった。


「明日の学園祭、こっそり写真撮りまくっちゃうわよ!」


それはもうこっそりではない。でも、夢野のメイド服姿の写真欲しいかも!貰えたりするかな!


「んじゃお母さんは、ポチが三年生のメイド喫茶に行かないか見張ってて」

「了解!」

「行きませんよ!」

「私の娘を裏切ったら、いたーいことが待ってるよ」


そう言う夢野のお母さんの目はマジだった。夢野がこの人の血を引いていることがよく分かる。


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