性なる夜おめでとう


「お兄ちゃん!ホワイトクリスマスだよ!」

「今日はクリスマスイブな」

「どっちでもいいじゃん!」

「イブとクリスマスは全く違うだろ。てか寒いからドア閉めてくれ」 


雪もガッツリ積もり、朝はなかなかベッドから出れない日が続いている。


「もう学校の準備しないと遅れるよ?」

「分かってる」

「おはよう」


この極寒の中でも、愛莉は下着姿で家の中をウロウロしているし‥‥‥


「風邪引くぞ」

「大丈夫よ」

 

なにを根拠に‥‥‥玲奈も、とうとう愛莉が下着姿でウロつくことに、なにも言わなくなったし、俺も愛莉の下着姿は見慣れてきてしまった。


「とりあえず、ご飯できたら呼んでくれ」

「分かった!」


玲奈は一階に降りて行き、何故か愛莉は部屋に入ってきた。


「なんだよ」

「玲奈ちゃんにクリスマスプレゼントを買いたいわ。なにがいいかしら」

「なんでも喜ぶよ」 

「大人のオモチャとか?8パターンの振動が楽しめるみたいな」

「‥‥‥愛莉がプレゼント買いに行く時、俺もついていく」 

「一人で大丈夫よ」 

「絶対ダメだ」 

「それなら、今日行かないと間に合わないわ」

「んじゃ、今日の放課後な」

「分かったわ」

「お兄ちゃーん!ごはーん!」


玲奈が呼ぶ声がして、重い体を起こした。


「早いな〜」

「流川くん、私の下着姿を見ても鼻の下伸ばさなくなったわよね」 

「見慣れたんだよ」 

「それじゃ、これからは露出のレベルを上げてみるわ」

「やめて⁉︎もうそれ全裸だよね!」

「いつも似たような下着だからダメなんだと思うの。Tバックとかにしてみるわ」 

「‥‥‥ま、まぁ?一回ぐらいならいいんじゃね?」 

「分かったわ」


よっしゃー‼︎これで尻を見ても下着を見てた言い訳ができる‼︎尻は正義‼︎


それから朝ごはんを食べ、いつも通り学校にやってきた。


「おはよー」


秋月と夢野も教室にやってきて、秋月のマフラーが目に止まった。


「秋月、そのマフラー貸してくれ」 

「いいよ!」


秋月のオレンジのマフラーを借り、顔にグルグル巻きにした。


「ポチ?大丈夫?」

「なんでS組にはヒーターがないんだよ」

「それは分かんないけど」

「まじで今日こそ文句言ってやる」

「誰に?」

「天沢先生だよ!ガラス代ケチって段ボール貼っただけじゃん!そりゃ寒いよ!隙間から風入ってくるし!」

「誰に文句だってー?」

「あれ?朝のホームルームは?」

「サボった」


天沢先生は朝のホームルームをサボってS組にやってきた。


「よくサボりますね」

「いいんだよ。怒られてから謝ればいい」

「そんな子供みたいな」

「流川の方が子供だろ。それより愛莉」

「はい」

「明日の終業式が終わったら、次に学校に来るのは年が明けだ。机はそのままでいいのか?」


愛莉の机は落書きがされたままだ。


「問題ないです。私、前より強くなったので」

「そうか!ならいい!」


俺には見えないけど、きっと愛莉は明るい表情をしている。天沢先生の安心した表情で分かる。


それから放課後まで、秋月のマフラーを借りていて、どうして女の子の私物って、こんなにいい匂いがするんだろうと、秋月には言えないが、めっちゃ匂いを堪能してからマフラーを返すことにした。


「秋月、マフラーありがとう」

「うん!」


秋月はマフラーに顔をつけ、深く息を吸った。


「塁飛くんの匂いする!」

「私の匂いにしてやる!」

「あっ!ちょっと!待てー!」


夢野がマフラーを奪い、どこかへ走っていき、秋月もそれを追いかけて行ってしまった。


「んじゃ愛莉、行くか」

「そうね」 

「二人でどこか行くの?」

「玲奈のクリスマスプレゼントを買いに行くんだ」

「私も行きたいけど、夜食の準備が‥‥‥」

「あー、確かに。でも、日頃から頑張ってる白波瀬にも、サンタが来るかもな!」

「だといいわね!気をつけて行ってくるのよ」

「はーい」


白波瀬にも何か買ってやろう!


‥‥‥白波瀬と別れ、愛莉とショッピングセンターの一階の一番右端にある、おもちゃ屋にやってきた。


「結構いろんなのがあるんだな」

「これは迷うわね」

「まぁでも、玲奈は単純だから、案外なんでも喜ぶぞ」

「去年はなにかあげたの?」

「去年は〜、現金」

「夢がないわね」

「いやいや『サンタさんがお金くれた!』って喜んでたぞ」

「早めのお年玉ね」 

「そうそう、そのお金で初売りの漫画福袋買ってきて、中身が全部BL漫画でさ、全部捨ててやったら、年明け早々大喧嘩になった」

「なにも捨てなくても」

「玲奈は純粋なんだぞ⁉︎『なんで男の人が上半身裸で抱き合ってるの?』とか言って」

「まぁ、とにかく入り口で立ち話もなんだし、色々見てみましょ」

「だな」


二人でおもちゃ屋をウロウロしていると、愛莉はキーボードピアノを見つけて、おもむろに弾き始めた。

愛莉は、声をかけるのが申し訳なるほど上手く、これが音が踊ってるってやつかと、完全に聴き入ってしまった。それに愛莉は、すごく楽しそうに演奏する。


「ごめんなさい。久しぶりで夢中になってしまったわ」

「いやいやいや‼︎上手すぎだろ‼︎」

「凛はもっと上手いわよ」

「マジ?」

「あと、凛はバイオリンも上手で、前におばさんに頼んで、コンテストに出してもらったことがあったみたいよ」

「結果は?」

「優勝に決まってるでしょ?」

「決まってないわ!なんなの⁉︎天才姉妹なの⁉︎」

「そうかもしれないわね」

「否定しろよ!」

「嘘はつかない主義なの」 

「嘘つくな‼︎」

「早く探しましょう」

「お、おう」


キーボードって二万もするのか‥‥‥さすがに買ってやれないな。


それからしばらく、二手に分かれておもちゃを物色していると、人生ゲームを見つけ、みんなで遊ぶのが大好きな玲奈には、人生ゲームをプレゼントすることにした。

白波瀬にはおもちゃの手錠、愛莉には、ごく普通の目覚まし時計をこっそり購入し、愛莉にバレる前に、こっそりラッピングまで済ませてもらった。


「流川くん、もう買ったの?」

「おう」


愛莉を探していると、愛莉は後ろから声をかけてきた。


「私はこれにしようと思うのだけれど、どうかしら」


愛莉が持っていたのは、キノコのキャラクターが、スイッチを入れるとブルブル震えるおもちゃだ。


「お前、なに意識してるか言ってみ?」

「おちんちっ」

「言わないで⁉︎」

「流川くんが言えと言ったんじゃない」

「もう少し恥じらいを持て。玲奈はスライムとかで喜ぶよ」

「あの、グチュグチュねちゃねちゃ、とろ〜んとしてるやつかしら」

「‥‥‥」

「あれ、遊んだ後にベタベタして大変なのよね」

「そうかそうか‥‥‥分かったからスライムでいいよ」

「探してくるわね」

「はい」


レジ近くで愛莉を待っていると、俺を見つけた愛莉は後ろになにかを隠し、ムッとした表情で俺を睨んでくる。


「入り口で待っててちょうだい」

「変なの買わないだろうな」

「大丈夫よ」

「分かった」


怪しすぎるよ‼︎ま、さすがに玲奈が喜ぶものではあるだろうけどな。


おもちゃ屋の入り口で愛莉を待っていると、愛莉は会計を終えて早歩きでやってきた。


「お待たせ」

「んじゃ帰るか」

「そうね」 

「そうだ、明日の夜まで、愛莉の部屋にプレゼント隠しててくれないか?」

「もちろん」

「ありがとう」


家に帰り、玲奈が一階に居ないのを確認して、速やかに愛莉の部屋にプレゼントを隠した。


「よし、普段通り振る舞えよ?」

「分かってるわよ」

「お兄ちゃん!」

「ななななななーんだ⁉︎」


いきなり玲奈が愛莉の部屋にやってきた。俺が全然普通に振る舞えなくて、軽く愛莉に背中をつねられてしまった。


「イブパーティーしよ!」

「イブパーティーってなにするんだ?」

「夜更かし!」

「パーティーじゃないし、愛莉が一生起きなくなるからダメだ」

「えー」

「パーティーは明日するんだからいいだろ。お兄ちゃんの言うこときかないと、サンタさん来ないぞ?」

「んじゃ、パーティーは明日!」

「玲奈はいい子だな!」

「うん!」


玲奈は白波瀬が居るリビングに行き、愛莉は首を傾げで聞いてきた。


「もしかして玲奈ちゃんって、サンタさんを信じてるのかしら」

「見たことがあるんだってよ。夢だろうけど」

「可愛いわね」

「うん。玲奈は可愛い」


悪いけどお前らの誰より玲奈は可愛い‼︎


その日、玲奈にプレゼントがバレることなく眠りにつくことができた。


‥‥‥翌日、終業式を終えるとS組に杏中と猪熊がやってきた。


「よ!」

「おいおい、また問題発生じゃないだろうな」

「違う違う!来年もよろしくって言いに来たんだよ!」

「あぁ、よろしくな!杏中も!」

「よろしくぅ!良いお年を!」

「良いお年を!」


二人はSのみんなと天沢先生にも挨拶を済ませて自分達の教室に戻って行った。


「お前ら、しっかりした友達を持ったな!」

「杏中さんは優しくていい子です」

「そうそう!杏中ちゃんはいいい子!」


みんな?アフロくんを忘れてますよ?


「とにかく、冬休みは二週間ぐらいしかないからな、生活リズムを崩さないように気をつけるように!」

「はーい」

「冬休みが終わったら、S組恒例のイベントがあるからな!」

「イベント?」


愛莉はなんのことか分からずに聞いた。


「あれだよ愛莉ちゃん」

「なに?」

「イベントって言えば聞こえはいいけど、単位稼ぎだよ。牛のフンとか掃除させられるんだよ」

「なかなか嫌ね‥‥‥」

「バーカ。次のイベントはいいやつだよ!楽しみにしとけ!」


天沢先生は悪い人じゃないけど、信用すると痛い目に合う。期待しないでおこう。


「それじゃみんな!良いお年を!」

「良いお年を!」


ぞろぞろと全校生徒が下校する中、俺達も全員で下駄箱に向かい、自分の下駄箱を開けると、一枚の手紙と白いマフラーが入っていた。手紙を手に取ると、横で靴を持ちながら夢野と秋月が満面の笑みで俺を見つめていた。不気味だ‥‥‥


「な、なんだよ」

「別に?」


手紙を広げてみると『私達からのクリスマスプレゼントだよ!夢桜と秋華より』とだけ書かれていた。


「え」

「ポチは寒がりだから!」

「二人で割り勘したんだよ!」

「いいの⁉︎クリスマスプレゼント⁉︎」

「うん!」

「めっちゃ嬉しい!俺、黒い服ばっかりだから、白いマフラーはアクセントになるし!シンプルで最高だよ!」

「こんなに喜んでくれると思わなかったよ!」

「嬉しいに決まってんじゃん!マフラーはずっと欲しかったからさ!今日から使うよ!」

「今つけてみてよ!ポチならきっと似合う!」


夢野に促されてマフラーを巻くと、夢野は俺の前に立ち、マフラーをいじり始めた。


「巻き方変だよー」

「マフラーの巻き方っていまいち分からないんだよな〜ぁあー‼︎っんっ‼︎」


夢野は力加減が分からないのか、マフラーをキツく絞め、俺は呼吸ができなく、夢野の手を必死に叩いた。


「大人しくして!」

「塁飛くんどうしたの?」


誰か‥‥‥気づいて‥‥‥白波瀬は⁉︎愛莉は⁉︎


「クリスマスパーティー楽しみね!」

「そうね!」


なに呑気に雪眺めてんの⁉︎俺死んじゃうよ⁉︎クリスマスパーティーどころじゃないよ⁉︎


「できた!」


俺を殺す準備ができてよかったな‼︎‼︎‼︎


夢野がマフラーから手を離し、俺はマフラーを解こうと全力で手を動かすと、夢野は俺を指差しながら笑い始めた。


「あはははは!どうしたの?顔真っ青!」

「この‥‥‥天然‥‥‥ド‥‥‥Sが‥‥‥」


そのまま気を失ってしまい、目を覚ますと保健室のベッドに寝ていたて、夢野と白波瀬の声が聞こえてきた。


「殺す気はなかったんです‥‥‥」

「犯人はみんなそう言うわ」

「本当なんです!」

「裁判長。判決を」

「判決は‥‥‥」


カーテンで見えないけど、愛莉も居るのか。この感じだと秋月も居るな。


「死刑」

「夢桜、さよなら‥‥‥」

「私だけなの⁉︎」

「当然よ。秋月さんはプレゼントしただけだもの」

「そんな!」


なに話してるんだか、パーティーの準備しなきゃだし、帰らないとな。


お腹の上にマフラーが置かれてあり、マフラーを適当に巻いてベッドから立ち上がった。


「帰るぞ〜」

「ポチが生きてる‼︎」

「よって、夢野夢桜さんは死刑」

「なんで‼︎‼︎‼︎」

「仲良くていいな。マジで死ぬかと思ったけど、マフラーはありがとう!」

「うん!」

「秋月もありがとうな!」

「どういたしまして!」


それから急いで帰宅して、白波瀬と愛莉は料理に取り掛かり、俺は部屋の飾り付けを始めた。


「やっぱさ、チキンぐらい買うべきだったかな」

「月末にそんなお金ないわよ」

「主婦みたいなこと言うなよ」

「ただいまー!」

「あ、玲奈帰ってきちゃった」


玲奈も今日が終業式で、帰りが早いことを忘れていた。玲奈はすぐにリビングに入ってきて、中途半端な飾り付けを見渡しながら、ワクワクしたように飛び跳ねた。


「クリスマス〜!」

「サプライズにしようと思ったんだけどな」

「私も一緒に飾り付けしたい!」

「するか!」

「うん!」


玲奈と一緒にリビングをクリスマス仕様に飾り付けし、最後にクリスマスツリーに飾り付けを始めた。


「本当に仲いいわよね」

「愛莉と白波瀬も仲いいだろ。玲奈とも仲いいし!」

「そうね」

「てかさ、クリスマスだぞ?もっと楽しそうな顔しろよ」

「愛莉先輩ってね!いつも無表情みたいな時多いけど、一緒にお風呂入ると『ふぁ〜』って声出して」

「玲奈ちゃん!」

「とろ〜んって可愛い顔になるんだよ!」

「へー」


なにそれ見たい‼︎‼︎愛莉って実は癒し系⁉︎


玲奈にお風呂でのことをバラされ、愛莉は少し恥ずかしそうに料理を続けた。

それから時間も経ち、玲奈と愛莉は先にお風呂を済ませ、夜ご飯の時間になると、白波瀬は、どんどんテーブルに料理を運び始めた。


「こんなに⁉︎」

「クリスマスパーティーだもの!」


白波瀬と愛莉のワクワクしてる表情っていいな、本当に楽しさが伝わる。多分、クリスマスパーティーも初めてなんだろう。


「海藻サラダ!唐揚げ!エビフライ!エビチリ!タコさんウインナーにグラタン!あとこれは、チンチンしただけだけれどピザ!」

「わーい!」

「白波瀬?チンは一回でいいからな?」

「あまり温まらなくて、二回チンしたからチンチンで間違ってないわよ?」

「違う意味に聞こえるから‼︎」

「流川くん」

「愛莉、変なこと言おって考えてるだろ。黙っとけ」

「酷いわ。間違ってないけれど」

「おい」


そして、オレンジジュースで乾杯し、クリスマスパーティーが始まった。


「うめー‼︎」

「よかったわ!」

「ねぇねぇ!サンタさん、何時に来るかな!」

「サンタさんはな、早く寝た人から順番にプレゼントを運びに来るんだぞ?だから早く寝ろよ?」

「食べたらすぐ寝る!」


なんて純粋な妹なんだ!俺の教育が正しかったんだな!さすが俺だな!


一通り食べ終えると、愛莉は冷蔵庫を開け、袋をガサガサといじり始めた。


「なに探してるんだ?」

「じゃーん!」


じゃーん⁉︎そんなテンションの子でした⁉︎ってなんだあれ。


「玲奈ちゃん、クリスマスケーキ食べる?」

「食べるー‼︎」

「いつの間に買ってたんだ⁉︎」

「最近、凛のバイト終わりに買ってきてきてもらったのよ」

「さっすが白波瀬!」

「お金は私が出したんだからね」

「さっすが愛莉!」

「誰にでも同じこと言うのね」

「さ、さぁ!食べよう!」


愛莉はチーズケーキを切り分け、一人一人に渡してくれた。


「なんか、愛莉のデカくね?」

「本当だ!愛莉先輩ずるい!」

「わがまま言う人は、ケーキ没収よ」

「わーい!愛莉先輩!ケーキありがとう!」

「はい。いただきます」

「いただきまーす!」


玲奈って世渡り上手そうだな‥‥‥


たわいもない会話をしながらケーキを食べ終えると、玲奈はすぐに歯磨きをし「おやすみ!」と張り切って部屋へ行ってしまい、俺達三人はリビングでクスクスと笑いながら玲奈が眠りにつくのを待った。


「玲奈ちゃんって本当可愛いわよね」

「だろ?」

「絶対彼氏とかいるわよ」

「いねーよ‼︎いたら許さん‼︎」

「静かに!」

「あ、ごめん」


玲奈が完全に寝たであろう23時までリビングで話し続け、ついに緊張のプレゼントを置く作業に取り掛かった。愛莉の部屋にプレゼントを取りに行き、一度、白波瀬と愛莉にあげるプレゼントは自分の部屋に隠してから、愛莉と二人で静かに玲奈の部屋に侵入成功。


「寝てるよな」 

「寝てるわね。それ、どうやって枕元に置くのよ」

「俺はテーブルの上に置く」


愛莉は静かに玲奈の枕の横に、ラッピングされた袋を置き、お互いにプレゼントを置き終わると、速やかに玲奈の部屋を出た。


「ふー。緊張したわね」


なにその笑顔‼︎抱きしめてもいいですか⁉︎


「あ、あぁ、そうだな。愛莉ももう寝ろ」

「そうするわ。おやすみなさい」

「おやすみ」


白波瀬も今日は愛莉の部屋で寝ることになり、各自、自分の部屋で静かな時間を過ごした。だが俺は、まだ寝るわけにはいかない‼︎

白波瀬と愛莉にプレゼントを置きに行かなきゃ‼︎と、思っているうちに爆睡してしまった。


翌朝目を覚ますと、心地よい暖かさを感じた。薄ら目を開けて横を見ると、白波瀬と愛莉が俺にピッタリくっついて眠っている‥‥‥


「なにしてんだよ」

「あら、おはよう」


白波瀬は目を覚まし、俺を抱き寄せて幸せそうな表情をした。


「クリスマスプレゼントは私です♡」

「はい⁉︎」

「私、今裸です♡」


疑いつつも白波瀬の体を触ってみると、スベスベの肌で、衣服のような物は感じられない。


「‥‥‥マジじゃねーかよ‼︎」

「今日はめちゃくちゃにしてください♡」

「アホか‼︎」


待て‥‥‥愛莉も裸だ〜‼︎‼︎‼︎


「それでご主人様?」


白波瀬は急に目を見開き、キス寸前まで顔を近づけてきた。


「なぜ愛莉と寝ていたんですか?」

「し、知らないよ」

「しかも裸で。ご主人様も裸ですし、おかしいですよね」

「ん?今なんて?」

「ご主人様も裸で」

「なんで⁉︎は⁉︎は⁉︎は⁉︎愛莉‼︎いつまで寝てんだ‼︎説明しろ‼︎愛莉‼︎」

「‥‥‥しゅき」


愛莉は俺の腕に抱きつき、聞いてはいけない言葉を放った。


「し、白波瀬、俺は本当になにも‥‥‥」

「好きってどういうことですか?」

「知らない知らない‼︎愛莉寝てるし‼︎寝言だよ‼︎」


その時、慌ただしく階段を降りていく玲奈の足音が聞こえ、数秒後、玲奈の嬉しそうな声が家中に響いた。


「やったー!パパとママからだー!」


白波瀬は玲奈の発言に驚き、慌ててベッドを出て目の前で転んでしまったが、俺は咄嗟に掛け布団を頭までかぶり、見てはいけない物を見ずに済んだ。見たかったけど。


あっぶねー‼︎‼︎‼︎モロに丸見えになるところだったー‼︎‼︎‼︎


「し、白波瀬!心配しなくていい!とりあえず服!」

「大丈夫なの?」

「誰からか分からないけど、去年も玄関前にあったんだよ」

「そう‥‥‥」

「お兄ちゃん!お兄ちゃんのもあるよ!」


玲奈が二階に上がって来る足音が聞こえ、そのタイミングで愛莉は目を覚まして起き上がった。


「ひゃ〜‼︎‼︎‼︎丸見えだっての‼︎‼︎」

「お兄ちゃ‥‥‥」


玲奈は部屋のドアを開け、裸の俺達を見るて、ゴミを見る目で俺を見つめながら拍手をしている。


「性なる夜おめでとう」 

「ち、違うんだ‼︎」

「知らない‼︎」


玲奈は勢いよくドアを閉めて、自分の部屋に行ってしまった。


「流川くん、服暖めておいたわよ」


愛莉は俺の服の上に寝ていて、俺は速やかに服を取ってベッドの中でジャージを着た。


「二人とも、今すぐ服を着ろー‼︎‼︎‼︎」


怒り気味に言うと、二人はすぐに服を着てくれ、また俺の部屋に戻ってきた。


「正座しろ」

「はい」

「なんで俺は裸だったんだ‼︎愛莉‼︎」

「見てみたかったのよ。だから脱がせたわ」

「見たのかよ‼︎つか、志向が犯罪者なんだよ‼︎」

「ごめんなさい‥‥‥」

「まぁ、もういいよ。玲奈の誤解は解いてくれよ?」

「分かったわ」

「流川くん」

「なんだ白波瀬」

「枕元」

「ん?」


枕元を見ると、クリスマス仕様にラッピングされた二つの袋が置かれている。


「一つは私から」

「もう一つは私からよ」

「え、いつの間に⁉︎開けていい⁉︎」

「もちろん!」


一つめの袋を開けると、アワビのクッションが入っていた‥‥‥


「あ、ありがとう愛莉」

「なぜ私のって分かったの?」

「おもちゃ屋にあったから。これを選んだ深い意味は聞かないでおく」


そして二つめの袋を開けると、新作のゲームソフトが入っていた。


「え⁉︎」

「好みが分からなかったから、店員さんに教えてもらった最新作にしてみたわ!」

「これ8000円ぐらいするだろ!」

「大丈夫よ!これからもアルバイト頑張るかわ!」

「ありがとう‼︎二人にもプレゼントがあるんだ!」


なにこのクリスマス!今までで一番幸せだわ!正直、裸の美少女二人に抱きつかれて目を覚ましたのも込みで。


二人はプレゼントという言葉にワクワクした気持ちを抑えられないのか、すぐに立ち上がってプレゼントを待っている。


「はい!まずは白波瀬!いつも家事してくれてありがとうな!」

「はい!」


白波瀬は袋を開けて手錠を手に取ると、頬を赤くして座り込んだ。


「し、白波瀬?」

「ご主人様♡」

「あ、うん。次は愛莉!いつも玲奈と遊んでくれてありがとう!」

「はい!」


愛莉は丁寧にラッピングを外し、目覚まし時計が入った箱を開けると、嬉しそうに目覚まし時計を抱きしめるように持った。


「ありがとう!嬉しいわ!」

「よし!玲奈の誤解を解いてこい!」

「はい!」


二人が玲奈の部屋に行ったのを確認して、俺は玄関に向かった。玄関前には赤い紙袋が置かれあり『玲奈とお揃いです。お父さん、お母さんより』と書かれている。


「いったい誰が‥‥‥」


紙袋を開けると白い手袋が入っていて、嬉しいけど、何故かため息が溢れる‥‥‥


そして、玲奈の誤解が解けたのか、玲奈は沢山のプレゼントを抱えて玄関にやってきた。


「見て見て!パパとママからは手袋!サンタさんからは、人生ゲームとクマのぬいぐるみと、漫画の最新刊!」

「おー!よかったな!」


愛莉、結局ぬいぐるみにしたのか。それに白波瀬まで、ありがたいな。


「うん!でも、サンタさんって二人いるのかな?」

「なんでだ?」

「部屋に置いてくれるサンタさんと、外に置いてくれるサンタさんがいるじゃん」

「外のは、お母さんお父さんからだろ?」

「それもサンタさんが届けてくれるんだよ!夜中に目が覚めてカーテンを開けるとね、必ず手を振ってくれるの!」

「それ、どんなサンタさんだった?」

「女の子っぽいけど、ちゃんと白い髭が生えてる!」

「なんだそりゃ」


誰か分かったら、ちゃんとお礼しなきゃな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る