宣戦布告する‼︎


勤労感謝の日は、一日中部屋に篭って作戦を考え続け、祝日明けの水曜日、白波瀬と愛莉と共に、6時半に学校に着くように家を出た。


「愛莉、ちゃんと起きれたじゃん」

「今日だけよ」

「なんで今日だけなんだよ!」

「それより作戦は?」

「あぁ、S組に着いて、みんな集まったら話す」

「分かったわ」

「ちなみに愛莉を起こしたのは私よ」

「白波瀬ナイス」

「起こしに行かなかったら、絶対まだ寝ていたわ」

「ちゃ、ちゃんと起きたわよ!」

「どうかしらね。一度起き上がったのに、また布団に入って何を言ったか覚えてないの?」

「なんて言ったんだ?」

「あと五時間だけって」

「だけってレベルじゃないぞ!それに、白波瀬と仲悪い時、どうやって起きてたんだよ」

「あの時は、睡眠薬飲んで、帰ってきてすぐに寝てたから」

「今日からそうしてくれ」

「嫌よ!」

「んじゃ、ちゃんと起きてくれ」

「分かってるわよ」


話しながら学校に向かい、S組に着くと、既に夢野と秋月も学校へ来てくれていた。


「んじゃ、作戦を発表する!まず愛莉!」

「はい」

「前に、停学になった生徒がいたのを知ってるか?」

「えぇ、それで、今は派手な動きをしないほうがいいって話になって、しばらくなにもしなかったのよ」

「やっぱりか!結局は、上の人間が怖いんだ!処分が怖い!」

「なんだか、私の悪口を言われている気分なのだけれど」

「ち、違うからな?」

「そう」

「だから、喧嘩するわけじゃなく、圧倒的な力の差を見せつけるんだよ!」

「圧倒的な力の差って?」

「夢野、いい質問だ!」


夢野は俺に褒められ、素直にニヤけている。


「S組を潰したい生徒は多く数えても80人!そしてこの学校の生徒は2000人近くもいる!」

「へー、そんなにいたんだ」

「秋月はお馬鹿さんだなー。そんなのも知らないのか〜?」 

「馬鹿って言わないでよ!」

「1524人よ」

「そ、そう!1524人だ!」


白波瀬!余計なこと言うなよ!


「80人引いても、1433人が味方だ!」

「1444人よ」

「白波瀬!ちょっと黙ってくれ!」

「はい♡」

「ポチ〜、お馬鹿さんだね〜」

「うるせぇ」

「は?なに?」


夢野の意地悪な目つきを久しぶりに見た。これでこそ夢野だ。


「とにかくだ!80人をグラウンドに呼び出して、1444人で現れる!どうだ!圧倒的だろ!」

「問題ごとに巻き込まれたくない生徒の方が多いんじゃないかな」 

「秋月の言う通りだ。だから、実際は100人ぐらい集められたらそれでいいよ」

「私と、凛と夢桜と愛莉と塁飛くんと、あとは?」

「猪熊と杏中と琴葉」

「8人?」 

「俺‥‥‥人望とかないから‥‥‥」

「それじゃどうするの?」

「え、どうしよう」

「え」


待って⁉︎俺が二日間練った作戦って無駄⁉︎無謀⁉︎


「と、とにかく、みんなが登校してきたら、夢野は杏中と猪熊を呼んできてくれ」

「分かった!」

「秋月は琴葉を頼む」

「了解!」

「私にも何か手伝わせてちょうだい」

「ダメだ。愛莉はS組から出るな」

「どうして?」

「また酷いことされるぞ」

「構わないわよ」

「強がるな」

「痛い」


強がる愛莉のオデコにデコピンをし、愛莉を冷静にさせ、ひとまず、みんなが登校して来るのを待ち、夢野と秋月が3人を呼びに行った。


「連れてきたよ!」

「塁飛!俺にできることがあればなんでもするぞ!」

「私も!」

「るっくんるっくん!私を頼ってくれるなんて嬉しい♡」


琴葉はグイグイと俺と距離を縮め、最終的に堂々と抱きつかれてしまった。


「抱きつくなよ‼︎」

「るっくんが喜んでる♡」

「離れてくださいよ‼︎」


夢野が強引に琴葉を引き剥がすと、琴葉は目を見開き、夢野を見上げた。


「あぁー、私に嘘ついた夢野さんだー」 

「な、なんのことですか」 

「ふふふ。なんでもないよ」


掃除用具入れに隠れた日のことか‥‥‥

怯えて顔が引きつる夢野はなかなかレアだな。面白い。


それから、三人にも事情を説明して、協力してくれるように頭を下げた。


「頭を上げろ塁飛」

「協力してくれるのか?」

「当たり前だろ!俺の知り合いにも声をかけてやる!」

「助かるよ!」

「私も友達に声かけてみる!」

「杏中もありがとう!琴葉は?」

「協力するに決まってるでしょ?生徒会長の人脈を舐めないでよね!るっくんのためなら、何百人も集めちゃうんだから!」

「琴葉‥‥‥お前最高だな!」

「うへへ〜♡」


なんだろう。なんか夢野が睨んでくる。


「さ、作戦決行は昼休み。なんの騒ぎだって先生達は怒りに来るかもしれないけど、気にせずにやり通す」

「はい!」

「みんないい返事だ!昼休み、グラウンドに集合!」

「はい!」

「一度解散!」

「はい!」


いける気がする‼︎もう、俺達の勝ちは確定だろ‼︎


三人がS組から出て行き、昼休みまで愛莉をどうするか考えた。


「ポチ?なに悩んでるの?」

「授業中、愛莉をどうしようかなって。机無いし」

「私は床に座るわよ」 

「んじゃ、みんなで床に座るか!」

「いいね!」


五人揃って床に座って、天沢先生がやって来ると、床に座る俺達を真顔で見つめた。


「白波瀬、夢野、秋月、愛莉、床オ」

「言わせねぇぞ‼︎」

「なんだよ流川〜、邪魔するなよ」

「どう考えてもするだろ‼︎」

「私が何を言おうとしたか分かったなんて、流川のエッチ♡」

「言おうとしたアンタが一番ヤバイよ‼︎」


愛莉がいることに深く触れないなんて、意外とデリカシーがあったのか。


「んで、愛莉はなんで居るんだ?」


返して‼︎見直した気持ち返して‼︎


「なんとなくです」

「そうか!んじゃ、授業するか〜」


やっぱり深くまでは聞かないのか。


そして、昼休みまで普通に過ごしているが、みんなソワソワして授業に集中できていない。もちろん俺もだ。

確かに琴葉の支持率と人脈は侮れないし、期待はしているけど、そもそも人数で押してなんとかなるものなのか?考えれば考えるだけ不安になる。考えるのをやめよう。


‥‥‥昼休みになり、グラウンドには20人ほどが集まっているのが教室から確認できる。


「よし、みんなもグラウンドに行ってくれ」

「分かったわ」


四人はグラウンドに向かい、俺は一人で放送室にやってきた。


「このスイッチでいいんだよな」


とりあえずマイクのスイッチを入れ、軽くマイクを指先で叩いてみた。


音のメーターらしきものが上がり、音は入ってるっぽい。


「あ、あっあー。聞いてますかー?俺達S組は、お前ら全員に宣戦布告する!S組を潰したい奴!S組の味方になってくれる人は全員グラウンドに集まってくれ!以上!」


よし、放送室に先生が来る前にグラウンドに急ごう。

‥‥‥グラウンドにやって来ると、S組のみんなと、さっき確認した20人しか居ない。


「流川くん、さっきの格好良かったわよ」

「ありがとう」


すると、ぞろぞろと学校から生徒が出てきて、一気に緊張感が増した。


「あれ、敵?」

「みたいね」


やっぱり相手は80人ほど居る。

琴葉達はなにやってんだ⁉︎25人対80人になっちゃうよ⁉︎


グラウンドで、一定の距離を保って睨み合いになり、正直今すぐ逃げ出したい。


「み、みんなは誰に言われて来てくれたんだ?」


20人の仲間に聞くと、一人の男子生徒が教えてくれた。


「杏中に頼まれて」

「で、杏中は?」

「弁当食べてから来るって」 

「そ、そうか」


なにマイペースかましちゃってんの⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎


「宣戦布告とか言ってたな。なにすんの?」


ひぃー‼︎‼︎‼︎ついに敵から話しかけてきたー‼︎‼︎‼︎


「S組を潰そうとしても無駄だ!このいじめっこ!」

「そうだそうだー!」


おー!みんな息ピッタリじゃん!


「たった25人でなにができるんだよ」

「あはははは!」


めっちゃ笑われてるー!完全にナメられてるよ!


「待たせたな」

「熊!」


猪熊の声がして振り向くと、猪熊は制服のベルトに、アニメキャラクターがプリントされた団扇を大量に挟み、両手にも3枚ずつ持っていた。


「なんだその格好」

「二次の世界から知り合いを連れてきたぞ‼︎」

「わーい。ありがとう」


クソ‼︎猪熊に俺達以外の友達は杏中しかいないの分かってたのに‼︎


「あはは!なにあれダッサー!」

「なん‥‥‥だと?」


一人の女子生徒の発言で、猪熊の目つきが鋭く変わった。


「もう一回言ってあげようか?ダサいって言ったの!」

「これは俺の愛だ‼︎人の愛を馬鹿にするな‼︎」


すると白波瀬は一歩前に出た。


「人の趣味や外見やアフロを馬鹿にする人間にどれほどのことができるかしらね」

「し、白波瀬?アフロは馬鹿にしてなかったぞ?」

「あら、ごめんなさい」

「アフロの何が悪い!」

「落ち着け熊、杏中呼んできてくれ」

「いや、来たぞ」


杏中は、片手におにぎりを持って、こっちに走って来る。


「お待たせ!って、少なっ!ヤバイじゃん!」

「あぁ、かなりヤバイ」


喧嘩になるのは避けたいけど、相手はかなりやる気満々みたいなんだよなー‥‥‥指ポキポキしちゃってるし。


「そっちから来ないなら、こっちから行くぞ」

「お、女も巻き込むのかよ!」

「宣戦布告とか言い出したのはそっちだろ?」

「私、格闘なら負ける気がしないわ」

「愛莉、いじめられて怯えてたのに、よくそんなことが言えるな」


そうだ!愛莉は空手と柔道の経験者だ!でも、喧嘩にルールなんてない‥‥‥集団で来られたら無理だ。


「落ち着け愛莉。喧嘩はダメだ」

「やられたらやるわ」

「分かった。こっちからは手を出すな」

「分かってるわよ」

「あ!」


夢野がなにかに反応し、昇降口の方を見ると、いじめをしていた先輩を先頭に30人ほど引き連れてこっちに歩いて来ていた。


「先輩‥‥‥」

「流川!」

「はい!」

「学園祭でチャンスをくれた恩は今返すぞ」

「はい!先輩かっけーっす!」


これで58対80‼︎先輩の登場に、相手も顔が引きつっている‼︎


「なぁ片桐かたぎり

「あ?」

「あいつらやっちゃっていいのか?」

「どうなんだよ流川」

「やられたらやるスタイルで、今は我慢してほしいです」

「だってよ」

「マジかよ、つまんねー」


先輩って片桐って苗字だったんだ。てか、先輩もなかなかの人脈だな‼︎みんな喧嘩慣れしてそうで怖すぎるけど‼︎この人達が相手側だったら今すぐ土下座した後逃げ出してるレベル‼︎


「で、でも!こっちの方が人数は多い‼︎片桐先輩が味方についたからなんだ‼︎」

「あ?お前後で、個人的に相手してやろうか?」

「‥‥‥」


先輩怖いよ。この件が済んだら、すぐにでも御卒業願いたい。

とにかく、相手が怯んでる今がチャンス‼︎


「怪我したくなかったら、S組を潰そうだなんて考えるな」

「‥‥‥ムカつくんだよ‼︎楽して学校生活送って‼︎それで俺達と同じように卒業できるだ?ふざけるな‼︎」

「言っとくけどな、全然楽なんかじゃないぞ!俺だって、S組に入らないで、平凡に静かに学校生活送ってれば、どれだけ良かったかって何回も思った!」


白波瀬達が俺を見てるけど関係ない。このまま本音で話してやる!


「でもな!こいつらは頑張ってるんだよ!いろんなことや気持ちと戦って!頑張ってる凄い奴らなんだよ!人が頑張れる場所を奪うとか許せるわけないだろ!」

「んじゃお前は何を頑張ってんだよ‼︎」

「こいつらの頑張りを頑張って応援してんだよ‼︎」

「そんなの知るかよー‼︎」


ヤバイ!完全に殴る気満々で走って来る!殴られる!


「手は出さないで!全員でるっくんを守って!」

「おー‼︎」


琴葉の声に続き、王勢の声が聞こえた。


「‥‥‥マジ?」

「会長すげーな」

「先輩でも琴葉のこと凄いとか思うんですね」

「あれ、100人以上いるだろ」

「はい」


100人以上の男子生徒が俺達の前に立ち、両手を広げて俺達を守り始めた。

気づけば、学校の窓からは沢山の野次馬がグラウンドを見ていて、大騒ぎになっている。先生達が来ないのが不思議なぐらい‥‥‥


「さてさて、これでも殴り合う?」

「会長まで‥‥‥どうしてですか!」

「だって、るっくんは生徒の少ないS組に閉じ込めておく方が、いろいろ都合がいいもん」


なにその理由‼︎いろいろ意味深すぎて怖い‼︎もう、俺の周りは怖い人しかいない‼︎


「諦めてくれるかな?」

「‥‥‥無理です」

「どうして?」

「こんなの不公平ですよ!」

「いじめをする人が求める公平は、本当に平和かな?貴方達の思う公平って、自分達が周りよりも優遇されたり、得する世界のことでしょ?」

「そうだよ。琴葉先輩の言う通りだよ‼︎ふざけないで‼︎」

「ゆ、夢野?」


他の生徒の前ではブリッ子をする夢野が、怒りをあらわにして男子生徒に近づき、勢いよく胸ぐらを掴んだ。


「確かにS組の生徒は授業とか楽かもしれないけど、あんたらよりキツい経験してきてんだよ‼︎」

「俺の何が分かるんだよ」

「別に分からなくていい。いじめをする人の人生が辛かろうが、ざまぁ見ろとしか思わないし、同情もできない!私達は私達でやることはやってるの。もう邪魔しないで。アンタにも大切な物とか居場所とか人とか、そういうのあるでしょ?みんなにもあるでしょ‼︎」


みんなは夢野の意外な一面に動揺しているようだが、その分、しっかり夢野の話を聞いているみたいだ。


「それを奪われたら嫌でしょ?S組っていう私の居場所を奪われたら、私はアンタら全員の大切な物を奪う。絶対に‼︎」


夢野は手を離し、俺の横に戻ってくると「ふぅー」と息を吐いた。


「お疲れさん」

「うん」


すると、猪熊が団扇を見せつけながら前に出て、堂々と両手を高く上げた。


「貴様らも、奪われる覚悟ができてるんだろうな‼︎」

「‥‥‥」


相手の戦意が、どんどん失われているのが伝わってくる。やっぱり、数で押す作戦は間違ってなかった!


「流川、どうするんだ?」

「脅し程度に前に出て、二度とS組に手出すなって言ってもらえますか?」

「了解」


先輩と先輩の仲間達が前に出て行き、相手は後退りを始めた。


「二度とS組に手を出すな!」

「‥‥‥わ、私、このグループ抜けるね」

「私も」

「お、俺も!」


どんどん相手側の生徒が校内に戻ろうとする中、秋月は体育館倉庫で威圧的だった女子生徒の元へ走り、制服を引っ張った。


「謝って!」

「ごめん‥‥‥」

「愛莉にだよ!」

「‥‥‥ごめんなさい」

「よし!戻ってよし!愛莉もそれでいいよね?」

「もちろん」


あっさり許すのは秋月と愛莉のいいところだろう。


どんどん生徒が校内に戻って行き、残りは前に、ヒーターの前にいたところを話しかけた男子生徒と、男女二人ずつの計5人になった。壊滅だな。


「まだなにか言いたいことあるのか?」


そう俺が聞くと、残りの5人も黙って俯きながらその場を去っていった。


「‥‥‥やった‥‥‥よっしゃー‼︎‼︎‼︎」

「おー‼︎」

「わーい‼︎」


俺達は全員で作戦の成功を喜び、S組全員で、協力してくれたみんなに頭を下げた。


「ありがとうございました!」

「るっくんのためだもん♡」

「琴葉もありがとう!」

「流川、これで学園祭のはチャラな」

「はい!」

「ぬあぁ〜‼︎俺の嫁の顔に折り目をつけたのは誰だ〜‼︎‼︎‼︎」

「おにぎり冷えちゃった」


クッキング部の二人はマイペースだけど、この二人が居なかったら作戦成功は無理だった。


「それじゃ、今日はお疲れ様でした!」


その時、S組の教室の方からガラスの割れる音がして、教室から机が降ってきた。


「え‥‥‥」

「下に誰もいないか確認して!」

「はい!」


琴葉が慌てて指示を出し、男子生徒が机から距離を取りながら確認した。


「居ません!」

「よかった。とりあえず、みんな教室に戻って」


S組の五人以外が校内に戻り、白波瀬は割れた窓を見上げた。


「一回で全て解決なんて無理ね。これからはますます陰湿に変わっていくと思うわ」

「でも、もう愛莉はいじめられないと思う。いじめたら、誰がしたかすぐに分かるからな。まずはそれだけでいいよ」


そして、机を教室に戻すために取りに行くと‥‥‥


「俺の机じゃん‼︎なんでだよ‼︎」

「ガラス気をつけてよ?」

「分かってる」

「ポチ〜、寒いから早く〜」


心配してくれてるの秋月だけかよ‼︎‼︎‼︎


そして机を持ってS組に戻ってくると、天沢先生は自分の席で脚と腕を組んで俺達を待っていた。


「横一列に並べ」


うわっ。完全に怒ってるよ‥‥‥


天沢先生は白波瀬、愛莉、夢野、秋月の順番に優しく頭を撫でて、最後に俺の前に立った。


「歯食いしばれ‼︎流川‼︎」

「俺だけ⁉︎」

「おらぁ‼︎」

「いっ‼︎」


何故か俺だけビンタされた‥‥‥


「誰のおかげで先生達が止めに入らなかったと思ってる。もしも喧嘩になってたら大問題だったぞ」

「すみません‥‥‥」

「る、流川くんは私のために」

「愛莉も反省しろ。てか、全員反省しろ!」

「はい‥‥‥」

「でも‥‥‥ S組を守ってくれてありがとう」


天沢先生は優しく笑みを浮かべ、みんなにも笑顔が戻った。左頬がジンジンするけど‥‥‥


「とにかく、私が全責任を負うと言ってしまったからな、このガラスも私が弁償しなくちゃいけない。その重みを墓まで持っていけ」

「重いよ‥‥‥」

「当たり前だろ!とにかく5人に怪我がなくてよかったよ。私はガラスの掃除に行ってくる」

「はい」


天沢先生が掃除に向かうと、愛莉は可愛らしい笑顔で俺の手を握った。


「助けてくれてありがとう!」

「ま、まぁ。どういたしまして」

「やっぱりポチはヒーローだね!ご褒美あげなくちゃ!」

「ちょ!」


夢野は俺を無理やり押し倒し、スカートの中に頭を入れて脚で頭を固定してきた。


「おいおいおい‼︎」


オレンジのパンツが目の前にー‼︎‼︎‼︎‼︎


「ひぃ!」

「私もお礼の気持ちを込めて♡」

「秋月‼︎」


秋月は俺の制服をめくり、お腹をなぞるように舐め始めた。


「ご主人様!私以外とダメですよ!」

「白波瀬!助けて!」

「前にできなかったお仕置きを今します!」

「白波瀬〜‼︎‼︎‼︎」

「ほらポチ〜、どんな気持ちか言ってみなよ」

「いい匂い‼︎」

「はっ!な、なに言ってんの⁉︎嗅ぐな!」

「息するなと⁉︎」


誰かに靴と靴下を脱がされ、足にムニっとした感触を感じた。


「あっ♡足で踏まれてる気分です♡」

「それお仕置きじゃないから‼︎‼︎‼︎一人で満足してるだけだから‼︎愛莉!ヘルプ!」

「脱げと言うなら脱ぐわよ?」

「言ってないからね⁉︎こんなとこ見られたら、それこそS組潰れるぞ‼︎」

「てか、秋華ちゃんと凛ちゃんはポチに触らないでくれる?」

「俺の話を聞け‼︎夢野!オナラするな!」

「は⁉︎してないんだけど‼︎」


夢野は慌てて俺から離れて立ち上がった。


「バーカ‼︎引っ掛かったな‼︎」

「‥‥‥」

「ぐっ‼︎」


夢野に顔を踏まれ、俺は力尽きた。


「ご主人様〜‼︎」

「やっぱり‥‥‥このクラス無くなった方がいいよ‥‥‥」


それから月日は経ち、12月に入ったが、あれからなんの問題も起きず、平和な学校生活を送っている。でも、のちに片桐先輩も琴葉も卒業するし、新しい後輩がS組の存在を不満に思うこともあるだろう。きっと、またなにか起こる。

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