生脚でちゅよー♡

夢野が囲まれてるのを見てから一週間、夢野も学校も、いつもと変わらない。

今日は珍しく、夢野に誘われて、二人で売店でクリームパンを買い、屋上で話しながら食べている。


「そういえばさ」

「ん?」

「一週間前、校舎裏で囲まれてただろ。あれがどうしても気になってさ」

「見てんたんだ」

「すまん」

「あれはね、S組の存在がバレて、色々聞かれたの」

「告白じゃなかったのか?」

「うん。騙されちゃった」

「琴葉に聞いたけど、有名ないじめ集団なんだろ?」

「‥‥‥」

「わ、悪い。話したくないこともあるよな」

「うん。ごめんね?」

「おう」

「てか、なにご主人様に謝らせてるの?」

「は?」

「それと!私もずっと気になってることがあるんだけど!」

「な、なんだよ」

「最近、凛ちゃんと仲いいよね」

「あー、なんか懐かれた」

「なんで?」

「俺が白波瀬の扱い方を学んだだけだ」

「へー。そう」


きっと、嫉妬なんだろうけど、夢野の気持ちには気づいてないフリを貫いている以上、変にリアクションができない。


「白波瀬のことが嫌いなのか?」

「嫌いじゃないよ?」

「前から?」

「うん。別に嫌いじゃない」


やっぱり、いじめてたのは訳ありか‥‥‥


「そっか。話は戻るけど、S組のこと聞かれたって、なにを話したんだ?」

「どんな教室かとか、学園祭なにするんだとか」

「普通だな」

「でも不安はある」

「なんだ?」

「あの人達がいじめっ子ってことは認めた上で話すけど、ただ理由も無しに、そんなことを聞いてくるとは思えないの」

「まぁ、なにかされたら、された時に考えようぜ」

「うん。一応、秋華ちゃんには話してあるから大丈夫だと思うけど」

「そうか」


最後の一口を口に入れた時、屋上のドアが開いた。


「流川塁飛くーん」

「げっ」


やってきたのは、ショッピングセンターで会った先輩だった。


「夢野、まさかハメた?」

「わ、私は知らないよ!ただ一緒にお昼食べたかっただけ!」

「なーに言ってんの?夢桜は俺達の仲間だろ?」

「それは‥‥‥先輩達が無理矢理」

「ここなら誰もいないし、前の仕返しがたっぷりできるな!」

「お断りします‼︎さようなら‼︎」

「なめてんのか‼︎」

「なめてません‼︎さようなら‼︎」

「ポ、ポチ?煽っちゃダメ」


俺は小さな声で夢野に伝えた。


「良いんだよ。まともにやりあったらヤバイんだから、ここはノリと勢いだ」

「なにコソコソしてんだよ!」

「いいですか?今すぐ教室に戻らないと、俺の新兵器を呼びますよ?」

「なんだよそれ。呼んでみろよ」

「それじゃ遠慮なく」


息を深く吸い、これでもかと大きな声を出した。


「琴葉〜‼︎ヘルプミー‼︎‼︎‼︎」

「邪魔‼︎」

「うおっ‼︎」


琴葉は一瞬で屋上にやってきて、先輩を背後から突き飛ばした。


「るっくん⁉︎大丈夫⁉︎」

「助かった。そこで倒れて気絶してる先輩の看病を頼む」

「それは、るっくんのため?るっくん喜ぶ?」

「喜ぶ喜ぶ」

「分かった!」


何故か俺の周りの女は、みんな性格が歪んでる。その分、扱い方が分かれば都合がいい。


「夢野、教室戻るぞ」

「う、うん」


そして校内に戻ろうとした時、琴葉は低い声で俺を呼び止めた。


「るっくん?」

「な、なんだ?」

「美少女JKと屋上にいたら、ヤンデレ女に見つかった件について。後で話そうね」

「ラノベタイトルみたいな言い回しすんな。てか、ついにヤンデレを認めたか」

「ヤンデレでもなんでもいいの。るっくんが振り向いてくれるなら」

「はいはーい。先輩を頼んだぞー。俺、喜ぶから」

「分かった!」


S組に戻り、深くは聞かないで学園祭の準備をしていると、夢野は不安そうに俺を見つめた。


「私、本当にポチを裏切ってないから‥‥‥」

「分かってるよ」

「流川くん、生徒会室に駄菓子を入れる箱を配置してみたのだけれど、アドバイスくれないかしら」

「分かった」  


白波瀬に頼まれて、白波瀬と生徒会室に行くと、小さな箱が散乱していて、白波瀬は股を押さえながら、物欲しそうに言った。


「ど、どうかしら♡」

「ちゃんとやれ」

「私、いけない子だからできないわ♡」

「お仕置き欲しさに適当にやるなよ!」

「申し訳ありません♡」


ダメだ。こういう場合は普通に言ったほうがいいな。


「ちゃんとしてください。お願いします」

「ど、どうしてそんな‥‥‥」

「悲しい顔するなよ」

「だって‥‥‥」

「分かった分かった。ちゃんと仕事したら、尻叩いてやるよ」

「が、頑張ります♡!」


これは白波瀬のやる気を出させつつ、美少女の尻に合法的に触れられる。最強最高の作戦なのだ‼︎


「ほら、さっさとやれ」

「はい♡」


夢野と白波瀬と一緒にいると、俺が変な性癖に目覚めそうだわ。


「そういえば、秋月はなんの仕事してるんだ?」

「好きなお菓子を書いて入れもらう、アンケートボックスをいろんな場所に配置してるみたいよ?」

「そうか。んじゃ、後でまた見に来るから、ちゃんとやれよ」

「はい♡ご主人様♡」

「それやめろ」

「申し訳ありません♡ご主人様♡」


もういいや‥‥‥戻ろう‥‥‥


S組に戻っている時、アンケートボックスを持った秋月を見つけた。


「秋月」

「なにー?」

「アンケートの調子は?」

「見てよ。ゴミ入れられた」

「なるほど。そいつはゴミが好きなんだな。店にゴミも並べるか」

「あはは!なに言ってんの」

「笑った後に、急に真顔になるなよ!怖いよ!」

「てか、塁飛くん仕事は?」

「やってるよ。夢野と看板の手直しして、白波瀬を躾けてきた」

「躾け?」

「とにかく秋月も頑張れよー」

「う、うん」


教室に戻ると、夢野は看板の手直しを終えて、退屈そうに携帯をいじっていた。


「お、いい感じじゃん」

「ふんっ」

「え、どうした?」

「私との作業を放置して、凛ちゃんと楽しめた?」


めんどくせ〜‼︎なんでこんな奴しかいないの⁉︎


「夢野と作業したいから戻って来たんだよ」

「そ、そうなの?」

「そうそう」

「な、ならいいけど。次なにする?」


嘘ばっかついて、俺、いつか刺されたりさないよな。大丈夫だよな。


「看板さえあれば、他に必要な物とかあまりないからなー」

「だよね」

「お喋りでもしましょか」

「そうだね!」


きっと夢野は嫌がるだろうが、俺的にも気分良く学園祭を楽しみたいし、無理矢理にでも、いじめのこと聞き出すか......


「さっきの先輩って、夢野に振られて手出した人だよな」

「そ、そうだよ?」

「夢野がS組に来る前、あの先輩含めた何人かにいじめられてたんじゃないのか?」

「誰に聞いたの?」

「勘だ。なにか力になれるはずだから、全部教えてくれ」

「‥‥‥凛ちゃんに言わないなら」

「約束する」


それから夢野は盗み聞きされないようにか、静かに全てを話してくれた。


「‥‥‥信じてもらえないと思うけど、本当は、凛ちゃんをいじめたくなんてなかったの‥‥‥」

「いじめはしたんだな」

「うん‥‥‥入学した頃、ある男に告白されて断ったんだけど、その男には彼女がいたみたいでね‥‥‥その男は浮気がバレないように、私に騙されて弄ばれたって言いふらしたの。それから私は散々いじめられた」

「‥‥‥」

「それである日突然、仲間にしてやるって言われて、美人で頭良いとか調子に乗ってるからって、くだらない理由で凛ちゃんをいじめろって‥‥‥問題になっても私が全部責任取れって言われて、その代わり、私へのいじめはやめてあげるって‥‥‥」


待てよ?俺って天才なんじゃない?


「私は弱いから、凛ちゃんをいじめちゃった‥‥‥」

「そして秋月が白波瀬を助けたのか?」

「そう。その後に秋華ちゃんは『どうしてこんなことするの?』って聞いてきて、思わず涙が出て‥‥‥私は秋華ちゃんに助けを求めたの」


はい!俺天才かーくてーい‼︎にしても、可哀想な話だな‥‥‥


「秋華ちゃんは、いじめられる役を自分から選んで、私と凛ちゃんの代わりにいじめられちゃった‥‥‥それから私は、たまたま告白を断って手を出されて、それを見た冬華ちゃんがS組に連れてきてくれたの」

「なるほど。白波瀬に本当のこと言わない理由は?」

「凛ちゃんと仲良くなったら、またいじめられそうで怖い‥‥‥」

「そっか。良く話してくれたな」


辛そうな顔をする夢野を見て、思わず頭を撫でてしまった。


「あっ、ごめん。つい」

「‥‥‥」


夢野はスカートをグッと握り、大粒の涙を流した。


「え、えっと」

「聞いてくれてありがとう」

「大丈夫だ。天沢先生と秋月もいる。必ず解決してやるから安心しろ。白波瀬の誤解を解くのは、その後でいい」

「うん‥‥‥私がSになったのもね、本当は、強くなりたかったからなの」

「そうだったのか‥‥‥誤解してたよ」

「でも気づいたら、本当にSに目覚めてた」

「うん。誤解じゃなかったわ」

「なにそれ」

「SはSだろ!過去とか関係ない!変態だ!」

「はー⁉︎」


聞きいことは聞けたし、夢野のテンションを戻すために少し怒らせようとしたが、結果は少しじゃなかった。


「ポチ。正座しろ」

「は、はい」


大人しく正座をすると、夢野は目の前で靴とストッキングを脱ぎ始めた。


「なーにしてんの⁉︎」

「うるさい」


こんな光景、さすがの俺でも正気を保てないぞ⁉︎


夢野は椅子に座り、足を組んで、俺に右足を近づけた。


「舐めな」

「できるか‼︎」

「舐めろ」

「さすがに無理‼︎」

「はぁ」


夢野は舐めるのを拒む俺の頭を掴み、太ももと太ももの間に俺の顔を挟み込んだ。


「バ、バカ!やめろ!」

「どう?♡ご主人様の生脚でちゅよー♡」

「最高です‼︎間違えた。やめろ‼︎」

「最高なんでちゅか〜?♡可愛いでちゅねー♡」


なんなんだよ‼︎さっきまで泣いてた人間とは思えないよ‼︎


「お前ら‥‥‥」


天沢先生の声がして、夢野は急に正気に戻った。


「妊娠するぞ‼︎」

「しねーよ‼︎‼︎‼︎」


なんか一気に疲れたな‥‥‥白波瀬の様子見てくるか。


「ポチ?どこ行くの?」

「トイレ」

「2秒で戻ってきてね」 

「うん。了解」


夢野の無茶を適当に流し、生徒会室に向かった。


「白波瀬。調子はっ‥‥‥」


生徒会室の扉を開けると、箱は綺麗に並べられていたが、白波瀬はテーブルに両手をつき、尻を突き出していた。


「お待ちしておりました♡ご主人様♡」


俺はなにも言わずに扉を閉めた。


「ご主人様!どうして閉めるんですか!開けてください!私にお仕置きを!」


白波瀬の尻を触れる!って少しテンション上がっていたが、ここまで堂々とされると触る気失せるわ‼︎


「ご主人さま〜ん♡」


もう嫌だ‥‥‥この学校。


とにかく、学園祭まで後17日。それまでに問題解決はできそうだな。

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