第67話冬馬君は彼女の力になりたい

 翌朝、綾と会ったが……もう、平気だった。


 1日経ったことが良かったのか、お互いに相談したからかはわからないが。


「でね、愛子の彼氏が……」


「ふむふむ、なるほど……きな臭いな。で、綾はどうしたいんだ?」


「わ、私は……愛子には悪いけど、調べてみたいの。なにも無かったらそれで良いし、愛子と彼氏にもきちんと謝るつもり。でも……何か嫌な感じがして……」


「わかった。俺に任せろ」


「だから冬馬君に……あれ?私、何も言ってないよ?」


「気になるんだろ?そういう場所なら綾1人では心配だ。カモがネギを背負ってくるようなものだ」


「うっ!うぅ〜……愛子にも同じこと言われた……で、冬馬君に言いなさいって……」


「ほう?相変わらず、できた奴だな。では、俺も感謝しなくてはな」


「で、でも……良いの?私のただのワガママだよ?無駄足かもしれないし……」


「何を言う。綾の大事な友達なら、俺にとっても大事な人だ」


「と、冬馬君……そ、そう言ってくれるんだ……エヘヘ……嬉しいなぁ……」


 そう言うと、ぎゅっと腕を組んできた。


「お、おい?電車内だぞ?」


「良いの……と、冬馬君、大好き……ありがとう……」


「お、おう……」


 結局、教室に着くまでその状態であった。


 ……男共からの射殺すような視線を感じたことは……言うまでもない。






 そして、放課後を迎える。


 今は体育祭も終わり、文化祭の準備にはまだ早い時期だ。


 テストもないし、そこそこの時間はある。


 なので、早速調べることにした。


 もちろん、調べるなら早い方がいいという理由もある。


「さて……どこで知り合ったかわかるか?」


「えっと……所沢の駅周辺で知り合ったって言ってたよ」


「なら、俺の庭だな。少しは力になれそうだ。よし、まずは着替えに帰る。で、俺が迎えに行くから、なるべく大人っぽい格好で頼む。場合によっては遅くなるからな」


「え?あっ、そうだよね。補導されないようにだね!」


「そういうことだ。幸い、俺も綾も童顔ではないからな。そうそうバレることはない。今日は金曜日だし、多少は遅くても平気だろう。もちろん、俺が綾のお母さんには連絡しておく」


「え?お、お母さんに?」


「遅かったら心配するだろう?俺が責任を持って帰すと言うさ。安心しろ、事情は言わない。俺が綾といたいだけと言えばいい……嘘じゃないしな」


「あ、ありがとう……た、頼りになる彼氏で幸せです……あ、あとね……いつも大事にしてくれてありがとう……」


「なんだ?急に……大事なのは当たり前だろう」


「当たり前……えへへ……に、にやけちゃうなぁ〜」


「ほ、ほら、帰るぞ」


 でないと、そろそろ暴動が起きる……!

 いくら俺でも、何十人の男子の相手はキツイ!

 イチャイチャしやがって!!という視線を感じつつ、教室を後にした。





 その後家に帰り、準備を済ませる。


 そして綾を迎えに行き、所沢駅に到着する。


「まずはどうしたら良いかな?」


「まずは……挨拶に行くか」


 綾の手を引き、とあるところに行く。


「え?ここ?こ、交番だよ?」


「多分、まだいるはず……」


 交番に入ると……いた。

 ガラの悪そうな男が。


「あん?なんだ?カップルがどうした?イチャイチャ罪で捕まえるぞ?」


「えぇ!?え?ど、どうしよう!?冬馬君、私達捕まるの!?」


「おい、落ち着け。たまに出るポンコツをここで出すなよ。可愛いが止まらなくなるだろうが……お久しぶりです、蓮二さん」


「あん?誰だ……冬馬君?……冬馬か!」


「ええ、その節はお世話になりました」


「なんだよー!懐かしいな!真司の弟分か!」


「と、冬馬君?警察の知り合いいたの?」


「正確に言うと、警察になる前に知り合った人かな。以前は……よく、なれましたね?」


「まあな、でも俺も補導歴はないしな。ただ、この辺で遊んでただけだ」


「真司さんと同じですもんね。あと、秩序の維持のために見逃されてた感はありますよね」


「あー……それはあるな。俺がここに配属されたのも、それを期待してのことだし。で、どうした?可愛い彼女の自慢にきたのか?」


「可愛い彼女でしょ?俺の大事な女の子です」


「はぅ……」


「……そうか、見つかったんだな。ふっ、良かったな」


「ありがとうございます」


「で、どうした?」


「………」


「よし、裏に行くか。ついてこい」


 蓮二さんについていき、人気の無いところに行く。


「で、何か問題か?で、揉み消せば良いのか?」


「いえ。そんなことは言いませんし、してはいけないです」


「ハッ、変わらずだな。安心したぜ」


「今って、この辺はどんな感じですか?」


「……ちょい、悪くなったかもな。お前達のいた頃より……。正面からぶつかるんではなく、あの手この手で相手を潰してる感じだな。だから、こっちも把握しきれない」


「レッドキングは?ブルーエンペラーは?」


「もうボスが変わってな……ブルーの方がヤバイ奴かもな。一応マークはしてる。そして、お前の探し人はラーメン屋の駅ビルにいる。俺に言えるのはここまでだ」


「ありがとうございます。では、行ってみますね」


「おう、気をつけてな。綾ちゃんって言ったか?」


「は、はい!」


「冬馬をよろしくな、俺にとっても可愛い弟分なんだ」


「はい!」


「うん、素直で良い子そうだ。冬馬……揉み消しはできないが、時間稼ぎくらいはする。何かあれば連絡しろ」


「蓮二さん!?」


「なに、それくらいはさせてくれ」


 そう言い、去っていった。

 ……全く、あの人もカッコいい大人だよ。


「な、なんか凄いね?警察官と知り合いとか、漫画の世界みたい……」


「いや、結構多いぞ?ヤンチャしてた人がなるパターン。1本筋の通った男に限るけどな」


「そ、そうなんだ……」


 ……むしろ、漫画みたいのはここからだからな。


 ……どうしよう……綾を連れてくのやめる?


 ……いや、本人が確認したいならさせてあげたい。


 いざとなれば、俺が全力で頑張ればいい話だな。


 俺は覚悟を決めて、久々の場所におとずれるのだった……。















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