冬馬君は友達のために……

第65話冬馬君は親友に相談する

 ………昨日は、何を食ったかも覚えていない。


 昨日は、頭の中があのことでいっぱいだった。


 ……凄かったな、アレ……俺のアレが柔らかな手に握られていた……。


 その気持ちよさたるや、想像以上のものだった……。


 そして……ぼんやりしたまま過ごし、気がつけば朝を迎えていた……。


「朝か……俺は、一体どんな顔して会えば良いんだろうか?」


 ……早漏とか思われていたら……軽く三回は死ねるな。

 綾に限ってないとは思うがな……。






 結局どんな顔して良いかもわからず、いつもの車両で綾を待つ。


 すると……。


「と、と、と、と……」


 綾が目をキョロキョロさせながら、ゆっくりと近づいてくる。

 ……おかげで、俺の方が気が楽になった。


「俺はトトロか?」


「と、と、冬馬君……はよぉ……」


「おい、『お』が抜けてるから。それじゃ、急いでって意味だから」


「お、おはよぉ……冬馬君、普通だね……?」


「いや、普通じゃなかったんだがな。綾がアワアワしてるの見たら落ち着いたよ」


「ムー……わ、私びっくりしたんだよ?」


「ご、ごめんな。俺もびっくりしたんだよ。まあ、この話はとりあえず置いておこう」


「そ、そうだね!電車だし、これから学校だし」


「そういうことだ。あー……ただ、ひとつだけいいか?」


「うん?なになに?」


 俺は綾の耳元で囁く。


「……俺のアレ……気持ち悪いとか、嫌とか思わなかったか?」


「……ふ、ふえっ!?あ、え、いや、でも……」


 綾は自分の両手をパタパタして、顔をあおいでいる。


「……すまん、俺が悪かった……」


 ……ただ、ちょっと引かれてたらやだなと思っただけなんだ……。






 結局、勉強など身に入るはずもなく、時間は過ぎていく。


 そして……気がつけば、放課後を迎えていた。


「と、冬馬君!」


「ん?ああ、綾か……どうした?」


「あ、あのね!今日は友達と帰ろうかなって……」


 後ろには森川と黒野がいる。

 ……これは、相談コースだな。

 一連の流れを話されるっぽいな……。

 だが、それを止めることはできない。

 なぜなら、俺も同じことを考えていたからだ。


「ああ、わかった。気をつけてな?綾は可愛いんだから。何かあれば、すぐに連絡してくれ。どこであろうと飛んでいくから」


「ひゃ、ひゃい!」


「おいおい、吉野〜。そんな熱く見つめたら、綾が大変だぞ〜?」


「ん?普通のつもりなのだが……」


「と、冬馬君!じゃあね!愛子!いこ!」


「じゃあね、吉野」


「おう、黒野……色々聞いてやってくれ……」


「あら?……良い男ね。自分の恥部を晒されるのに……それより、綾のことを考えてあげてるのね。わかったわ、任せてちょうだい」


 3人は教室から出て行った。


「さて……俺も行くとするか」


 俺も、待ち合わせ場所に向かうことにする。





「よう、冬馬」


「アキ、悪いな」


「良いさ、親友の頼みだ」


 校門前でアキと合流して、駅へ向かう。


 2人で雑談をしながら、電車に乗ったのだが……。


「うわぁ〜絵になる2人……」


「声かけよっか?」


「で、でも、あのツーショットが良いかも……」


 ……先程から、女子たちがチラチラ見てくるな。

 アキがいるから仕方ないとはいえ……。


「ククク……お前のことだ。俺の所為だと思っているんだろ?お前が男前だから、皆が見ているんだよ。今日は綾ちゃんいないしな」


「はぁ?何言ってんだ?俺はせいぜい中の上か、上の下だろ」


「やれやれ……これだから、自覚のない奴は……綾ちゃんも大変だな」


「いや、俺のが大変だよ。綾に群がる奴らを、排除しなくてはいけないからな」


「……まあ、お似合いかもな」






 その後俺の家に着き、部屋の中に入る。


「で、どうだった?そいうことだろ?」


「話が早くて助かる。そのだな……」


 羞恥心に耐えながら、一連の流れをなんとか伝える。

 もちろん、綾の胸の感触や、反応などはぼかしたが。


「なるほど……まあ、仕方のないことだな」


「そうなのか?」


「ああ、俺でも初めて触られた時は、すぐに果ててしまったな。まあ、高校生の性欲では仕方ないことだと思うぜ?」


「そ、そうなのか……ホッ……俺だけじゃないんだな」


「安心するよな?俺もそうだったよ。で、対策だな?」


「ああ、このままでは本番など無理だ。どうすれば長く耐えられる?」


「1番簡単なのは、一度自分で処理してから臨むことだな。賢者モードってやつだ」


「……なるほど、一理あるな」


「あとは、綾ちゃんに一度ヌイてもらうか」


「……なるほど、でも……かっこ悪くないか?」


「それは相手次第だな。そんな子か?」


「いや、違う。それだけは言える」


「なら、あとはお前のプライド次第だな。あとは単純に慣れることだな。回数を重ねていけばいい」


「あ、あんなのに慣れる日が来るのか?」


「もちろん、そんな日は来ないかもな。ただ、耐性は少しずつ付くはずだ。でも、それが良いとも言えないしな」


「あー、それはなんとなくわかるな。新鮮さは、忘れてはいけない気がする」


「そういうことだ。最後は、正直に言ったらどうだ?初めて同士だから、2人で頑張ろうって。もちろん、同じ男としてリードしたい気持ちはわかるがな」


「……そうだな。俺のちゃちなプライドの所為で、綾が痛い思いしたら嫌だもんな……サンキュー、アキ。なんとなく、整理がついた気がする」


「おうよ、いつでも相談してこい……俺も、そのうち相談するかもしれないけどな」


「ん?何か悩みか?俺で良ければいつでも乗るからな。借りてばかりでは、俺の矜持が許さない」


「ハハ!出たな!それ!懐かしいなぁ、お前の口癖だったよな。おう、その時は遠慮なく言わせてもらうぜ」


 ……アキが、俺に相談か……。


 こいつがいなかったら、俺はずっとぼっちのままだったかもしれない。


 冷たい言葉を吐いていた俺を……こいつは、ずっと親友だと言ってくれた。


 自覚はないが……今考えると、俺は救われていたに違いない。


 よし……その時がきたら、俺は全力を尽くそう。


 それが、親友アキに対する恩返しというものだ。




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