第45話冬馬君は全力を尽くす

 さて……いよいよ中間テストの日を迎えた。


 いつもは、学年で50位前後だからな。


 できれば、最低でも30番以内には入りたい。


 それと……テストの結果発表日にも備えなくてはな。







 いつもの車両で、綾と一緒になる。


「冬馬君!おはよう!」


「おう、綾。おはよう」


「今日からテストだね……わ、私……」


「綾、一応言っておく。わざと、点数を下げるようなことはするなよ?」


「と、冬馬君……」


「その顔は……少し考えたな?」


「は、はい……ごめんなさい……」


「いや、謝るのは俺のほうだ。綾、全力でいい。自分を落とすな。俺が、綾のところまで駆け上がってやる。あまり、俺を舐めるなよ?なにせ、俺は綾の彼氏なんだぜ?」


「冬馬君……うん!わかった!全力でやるね!自分にも、周りにも失礼だもんね!」


「そういうことだ。よし、何か問題出してくれるか?」


「うん!じゃあね……」


 結局、教室に入るまで、二人で問題を出し合うのだった……。






 教壇の前で、真司さんが言う。


「さて、お前ら。今日からテストだ。これが終われば、次は体育祭。そして、文化祭。最後には、修学旅行がある」


「「「ウォォォーーー!!!」」」


 一部の男子が叫ぶ!


「「「キャーーー!!!」」」


 一部の女子が叫ぶ!


「静かに!!だが、それもテストが終わった後だ。俺が担任になったからには、体育祭は優勝を目指す!追試になったら、練習時間も減る。追試になった奴は……わかっているな?」


「「「は、はいーーー!!!」」」


 ……さすが、鬼の真司。

 ひと睨みしただけで、震え上がったぞ。

 そして、相変わらずの負けず嫌いだな。


「冬馬君、先生気合い入ってるね?」


「多分、教師で賭け事でもしてるんだろ?」


「えぇ!?いいの……?」


「まあ、昼飯とかそんなんだろ」


「あっ、そういうことかぁ」


 そして、いよいよテストが始まる……。





 よし……これも解ける。


 俺は得意である、国語のテストをスラスラと解いていく……。


 これなら、いけるはず……!


 そして、1日目が終わる。






 そして、2日目。


 よし!苦手な英語も、綾のお陰でわかる!


 他のも、いつもより感触が良い!







 そして、最終日の金曜日を迎える……。


「と、冬馬君?大丈夫?」


「ああ、大丈夫だ。綾、今日のテスト終わったら頼みがある。聞いてくれるか?」


「え?うん、私に出来ることなら……その、なんでもとはいかないけど……あっ!嫌とかじゃなくてね!……あぅぅ……!」


「おい?綾?教室だからね?みんな見てるからね?いや、俺が頼むのも、ある意味見られるんだけどね?」


 男子からは射殺すような視線が……。

 女子からは、微笑ましい視線が……。


「ほら!冬馬!イチャついてないで、テスト始めるぞ!」


「はいはい、わかりましたよ」


 もう、俺と仲良いの隠す気ないな……この人。

 まあ、バレたところで、もう大した問題はないしな。





 そして、最後のテストが始まる……。


 最後のテストは、暗記問題である世界史だ。


 これは……昨日見た!!よし!!運も良い!!


 これは……今朝、綾と出し合ったぞ!幸運の女神か!!


 見直してみる……よし、全てを出し切った……。


 あとは、平均点がどうなるかだな……。


 結果を待つとしよう……。


「冬馬君!お疲れ!」


「綾こそな、助かったよ」


「ん?私、何かしたっけ?」


「綾と一緒に、勉強したところが出たよ。それに、英語を教えてくれたしな」


「あっ!そうだね!私も、冬馬君のお陰で国語解けたよ!」


「じゃあ、お互い様だな。じゃあ、行こうか」


「うん!」


 俺は綾を連れ、中庭に行く。


「あれ?冬馬君、帰らないの?」


「ああ、そこのベンチに座ってくれ」


「う、うん……」


 綾は大人しくベンチに座る。


「では、失礼します」


 隣に座り、綾の膝の上に頭を乗せる。


「ひゃん!?」


「おっと、悪い。大丈夫か?」


「う、うん……びっくりしたぁ……人前だけど、良いの?」


「綾は嫌か?俺とのこと見られるのは……」


「ううん!私は、そんなことないよ!う、嬉しいくらいです……」


「そうか、良かった……綾、これからは気にしなくていい。俺に気遣う必要はない。俺が嫌になることはありえない。綾の思うとおりにすると良い」


「冬馬君……エヘヘ、髪触っても良い……?」


「ああ、どうぞ」


「うわー、長いねぇー。量も多いし、大変そう」


 ……あっ、これ想像以上に気持ちいいな……眠くなる。


「まあな……綾は、長い髪のが好きか?」


「え?……うーん……冬馬君とか関係ないなら、短いのはあんまりかなぁ。長すぎず、それでいてさっぱりした感じ?かな」


「そうか……すまん、少し寝て良いか?」


「うん、良いよ。私……冬馬君の寝顔好きだもん」


「そ・う・か………」


 意識が遠のいていく……。


「冬馬君……ありがとう、私のためだよね……?大好きだよ……」







 次に目を覚ますと、30分ほど寝てしまっていた。


 今日は疲れたということで、真っ直ぐに家に帰る。




 そして次の日の土曜日は、綾が家の用事なので会わなかった。


 日曜日に『会えるかな?』と誘われたが、断腸の思いで断った。


 ゲームの発売日だと、嘘をついてまで……。


 さらには、徹夜するから、月曜の朝は先に行っててくれと。


 少し寂しそうにされてしまったが、致し方ない。


 あとで、土下座でもなんでもするとしよう。


 だが、俺にだって覚悟がいる……。


 なにせ、久々すぎるからな……。





 そして日曜日に、俺はとあるところに行き、あることを済ませる。


 そして、家に帰ると……。


「えぇーー!?お兄!?どうしたの!?カッコいいんだけど!?」


「麻里奈!?どうした!?冬馬に何か……おお!!見違えたな!」


 妙に照れくさいな……それに、スースーする。


 さて……明日はテストの順位発表だ。


 色々な意味で、気合いを入れて行こう。

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