第5話気になるあの人は~清水綾視点~

私の名前は清水綾。


名前自体は、なんてことないありふれたものだと思う。


ただ、私の容姿は特別だった。


これは自慢でもなんでもなく、ただ客観的に見ての話です。


幼い頃から、可愛い可愛いと言われて育ってきた。


なので、自分は可愛いんだと認識していた。


頭も良く、運動神経も良かった私は、みんなの人気者だった。


男女問わず仲が良く、こんな時間が続くと思っていた。


でも、中学に入ってから色々と変化が起きた。


男と女に分かれていったんです。


その結果、私は変化を余儀なくされました。


私は、今まで通りに男子と接していました。


すると、男子からは毎日のように告白され、毎回断る日々。


私は見た目に反して、内面が子供だったんだと思う。


まだ、恋愛とかわからなかったから……。


でも、女子はそうは思わなかったみたい……。


調子に乗ってる、性格悪そう、遊んでそう、そういう風に言われることも増えていった。


私は困惑しました。


だって私の容姿は変わったかもしれないけど、中身は変わってなかったから……。


それなのに、身体だけはどんどん成長してしまう。


胸も膨らんできて、お尻も肉づきが良くなり、手足が伸び、身長も伸びた。


それに比例して、男子からの告白も増える。


酷い時は、ストーカーまでされる。


それでも、悪く言われるのは私。


どんだけ理想高いの?とか、八方美人だから勘違いさせるんだよとか。


酷い時は、誘ったんじゃないの?とまで言われた。


そんな中で友達なんかできるわけもなく、私は孤立していった。


私は必死に考えた。


どうすれば、この状況から抜け出せるかを。


結論は、私が自分を偽り、変わるしかなかった。


それから私は、全てを完璧にこなせるように、必死に努力をした。


勉強、お洒落、会話術、その他もろもろを、必死に覚えた。


嬉しい誤算だったのは、お洒落は本当に好きになれたことかな。


そして、隙のない女子を目指した。


所謂、あの子ならしょうがないよねと言われるような女子に。


それこそ、嫉妬すら起こらないくらいに……。


結果的に成功はしました。


男女問わず人気になり、友達も増えていきました。


でも、私の心は虚しいまま……。


そんな生活を変えるために、知っている人が少ない高校に入ったけど駄目でした……。


もう既に、県内で知られてしまっていたのです。


友達が勝手に写真を送ったり、プリクラなどを見せてまわっていたみたい……。


すぐに学年問わずに、告白される日々。


上級生には生意気だとか、調子こくんじゃねえ!と、恫喝されることもありました。


それらをなんとか穏便に済ませて、上手く立ち回りました。


勉強も学年トップをとり、生活態度を良くして先生を味方につけたり、友達の悩みなどを聞いてあげていました。


すると、徐々に嫌がらせや、嫉妬の目がなくなってきました。


それでも、毎日のように告白され、街ではスカウトされ、私はうんざりしていました。


私だって中学生の頃とは違い、恋をしてみたいと思う。


でも、告白してくる男子は私のことなんか見ていない。


私の身体や顔、私と付き合うというステータスのために、告白してくる。


もちろん、中には真剣な人もいた。


でも、申し訳ないけど、私の方がピンとこなかった。


そんな生活に嫌気がさした私は、漫画やアニメ、ゲームなどにハマりました。


最初は、この中では現実逃避できるからという理由だった。


でも次第に、単純に好きになっていきました。


特にゲームのオンラインなどは容姿など関係ないので、とても楽しかったな……。


でも、それはみんなが思う私には、似合わないこと。


だから、黙っていたんだけど……あれは、高校1年の秋頃だったかな。


クラスの男子がこっそりとしていたゲームが、私が大好きなゲームだったので、思わず声をかけてしまった。


その男子はびっくりしてたけど、普通に話してくれた。


けど、その後に言われた。


女子からは、オタクまで惚れさせてどうすんの?とか、あーあ!かわいそう!とか。


男子からは、綾ちゃんには似合わないよとか、そんな地味な奴と話すと地味が移るとか。


幸い、その男子は虐められたりはせず、何事もなく終わった。


でも、悪い事をしたなと思う……。


そして私は、自分を偽りながら、学校生活を続けた。


そんな時だった……ある男子の噂を聞いたのは。


その男子の名前は、吉野冬馬君というらしい。


その男子はハブられているわけでもなく、虐められているわけでもないのに、ずっと1人でいるようだ。


話しかければ普通に返事はするし、それなりに会話もするが、基本的には小説を読んだり、スマホをいじったりしているらしい。


一度、誰かか聞いてみたらしい。


なんで、学校に来て小説やスマホゲームばかりしてるの?と。


そしたら、こう言ったらしい……だって、好きだから。これが楽しくてこうしているんだ。


人見知りなわけでもなく、勉強や運動もでき、見た目も野暮ったいが悪くはない。


でも、どのカーストにも属さず、自分を貫いている。


そんな彼は、みんなの中では孤高の存在扱いされ、実は一目置かれていた。


私は凄い!と思った。


私は周りの反応が怖かったり、バブられたりしたくないから、自分を偽っている。


それなのに、彼はそんなことなど気にせずに、自分を貫いている。


私は、彼のことが気になり始めた……といっても、好きとかではなかった。


話した事もないし、実際に側で見てたわけでもないしね。


でも、その機会が訪れた。


二年生になり、同じクラスになったから。


そして、実際に目の当たりにして驚いた……ホントに1人でいると。


隣の席の人や、後ろの席の人が話しかければ、普通に会話はしている。


でも、失礼にならないギリギリのラインで、自分の世界に戻る。


私は感心していた。


凄い!絶妙なさじ加減!と。


彼は私とは違う意味で、上手く立ち回っていた。


そして気がつけば、彼はあっという間に、このクラスでも孤高の存在と化した。


私は、彼のことが気になり始めていた……まだ、好きとかではないと思う……。


でも、話してみたかった……でも、そのタイミングと勇気がなかった。


彼は、学校が終われば急いで帰るし、休み時間は邪魔しちゃ悪いし……。


後、私が話しかけることで、彼の生活を壊してしまうと思った。


だから、頑張って我慢した。


でも、何かキッカケがあれば話してみたいと思う。


まあ、そんな都合の良いこと起きるわけないよね……。


私は、そう思っていた……あの日までは……。















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