06 X435

「そろそろ」


 会うのは、やめたほうがいいかもしれない。


 電子生命体の自分が。


 そもそも、普通の人間には見えてないのに。


 彼女にだけ見えるのが、うれしくて。


 舞い上がってしまったかも。


 彼女の人生に。普通の生き方に。これ以上、干渉するべきではなかった。


 午前四時61分から、午前5時10分までの十分間。その間だけ、彼女には電子空間の中にいる自分のことが見えている。会話もできる。なぜかは、分からない。


 好きだった。


 でも、自分は。電子空間の中の存在だから。彼女に触れたり、側にいることは。できない。

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