レーマ軍の武器

〇銃器


短小銃マスケートゥム【MUSQUETUM】

 複数系は「マスケータ【MUSQUETA】」。

 前装式マズル・ローダーのフリントロック式小銃。銃身はライフリングのない滑腔銃身スムースボアの鋳造製で、基本的に砲金(銅90%、錫10%の合金)で作られるが砲金以外にも青銅や黄銅で作られる例もある。

 口径は7/8インチ(22.5㎜)、銃身長15.5~15.8インチ(398~406㎜)‥‥‥銃身長は鋳造後の銃身を切削加工する際の誤差が大きく、1㎝くらいの個体差がある。同じ理由で銃の全長も29.8~30.2インチ(766~776㎜)の幅がある。

 重量は約14リブラ(約4.6㎏)ほどあり、57スクリブルム(約65g)の鉛玉を黒色火薬または褐色火薬で発射する。 

全長;約80㎝

重量;14リブラ(約4.6㎏)

口径:7/8インチ(22.5㎜)

銃身長:15.5~15.8インチ(398~406㎜)

弾丸径:7/8インチ(約22㎜)[一丸弾]

    3/8インチ(約9.6㎜)[九粒散弾(1粒あたり)]

弾重量:57スクリブルム(約65g)[一丸弾]

    4.5スクリブルム(約5g)[九粒散弾(1粒あたり)]

初速:300m/s以上

有効射程:26ピルム(48m)[一丸弾、ポイントターゲット]

     80ピルム(148m)[一丸弾、エリアターゲット]


長小銃ホーハザマ【OHAZAMA】

 複数形は「オーハザマエ【OHAZAMAE】」。

 前装式マズル・ローダー火縄銃マッチロック・ガン短小銃マスケートゥムと同じくライフリングのない滑腔銃身スムースボアだが鍛鉄製で銃身長は2mほどもある。

 口径は20㎜で弾丸の直径も20㎜ほどだが、全長が長く楕円形をしており、後ろに銅板で出来た尾翼が付いている。このため短小銃マスケートゥムより直径が小さいにもかかわらず弾丸重量は90スクリブルム(約103g)もある。これをサボを使って黒色火薬または褐色火薬で発射する。

 このため滑腔銃身スムースボアであるにも拘らず有効射程は200ピルム(約370m)を超え、名人に扱わせれば300ピルム(約555m)先の敵兵をも狙撃できると言われる。

 ただ重量は120リブラ(約39.5㎏)にも達し、2.3mにも達する全長もあって一人では扱えない。1人が銃身部分を肩に担ぎ、その後ろでもう1人が操作する、2人1組で扱うことになっている。

 南蛮製の武器でレーマ軍の標準装備ではない。南蛮のアリスイ氏族がアルトリウシウス子爵家と婚姻を結ぶ際に贈ったもので、現在レーマ帝国ではアルトリウシア軍団レギオー・アルトリウシアアルビオンニア軍団レギオー・アルビオンニアだけが配備し、砲兵トルメンタが運用している。

全長;約230㎝

重量;120リブラ(約39.5㎏)

口径:約20㎜

銃身長:約1980㎜

弾丸径:約20㎜

弾重量:90スクリブルム(約103g)

初速:330m/s以上

有効射程:210ピルム(389m)[ポイントターゲット]

     500ピルム(926m)[エリアターゲット]


〇重火器


大砲トルメントゥム【TORMENTUM】

 複数形は「トルメンタ【TORMENTA】。

 一般に青銅製の前装式鋳造砲。レーマ帝国では砲金ほうきん(銅90%、錫10%の合金)を使ってロストワックス法で鋳造され、砲身内を巨大な旋盤のような切削機械で削って作られており、砲弾と共に大きさも性能も規格化されている。ちなみに切削の際の刃には砥石が用いられる。

 小さいものだと口径2インチ(約5センチ)ほどの旋回砲から、大きいものだと口径半ピルム(約92.5㎝)の石弾を打ち出す攻城砲まで様々にある。

 砲兵トルメンタが使う。


臼砲モーラ【MOLA】

 複数形は「モーラエ【MOLAE】」。

 45度以上の大角度で砲弾を打ち上げ、目標に対し頭上から砲弾を降らせる大砲。砲身が肉厚で全長が短く、上を向いている外観が「石臼モーラ」に似ていることから「臼砲モーラ」と呼ばれる。

 大角度で砲弾を打ち上げる都合上、反動が下へ行くため砲車のような可搬式の砲架に乗せることができない。運搬する際は何らかの台車に乗せるにしても、発砲する際は固い地面に置いて発砲せねばならず、下手に建物や船の甲板で撃つと反動によって床が壊れてしまう。

 砲兵トルメンタが使う。


〇投射機


重弩砲バリスタ【BALISTA】

 複数形は「バリスタエ【BALISTAE】」。

 大型のいしゆみで据え付けて使用する。比較的小型で少人数で組みあがった状態のまま運搬可能な物は「軽弩砲スコルピウス」と呼んで区別する。

 昔は投槍ピルムを飛ばしていたが、現在では投擲爆弾グラナートゥムを飛ばすのに使用される。

 重投石器カタプルタ軽投石器オナゲルが放物線を描くように高い弾道で飛ばすのに対し、より直線に近い低い弾道で飛ばすため狙いやすく命中精度が高い。ただし、投射する投擲爆弾グラナートゥムは時限信管で爆発するため射程距離は300~350mくらいしかない。

 砲兵トルメンタが使う。


軽弩砲スコルピウス【SCORPIUS】

 複数形は「スコルピイ【SCORPII】」。

 重弩砲バリスタが据え付け式で移動のためには分解・組み立て作業を必要とするのに対し、比較的小型で組みあがった状態のまま数人で担いで移動することができる物を言う。

 重弩砲バリスタに比べ威力は小さいが機動力の高いのが特徴。

 大砲トルメンタが普及すると重弩砲バリスタ投槍ピルムではなく投擲爆弾グラナートゥムを飛ばすようになって生き延びたが、小型の軽弩砲スコルピウスでは投擲爆弾グラナートゥムを飛ばすのは難しく、投擲爆弾グラナートゥムを飛ばせるように大型化すると機動力が低下して実用性が失われてしまうため使われなくなった。

 現在では実戦では使われていない。

 

重投石器カタプルタ【CATAPULTA】

 複数形は「カタプルタエ【CATAPULTAE】」。

 投石器の中でも比較的大型のもので据え付けて使用するタイプのもの。車輪付きで移動可能にした物は「軽投石器オナゲル」と呼んで区別する。

 砲兵トルメンタが使用する。


軽投石器オナゲル【ONAGER】

 複数形は「オナグリ【ONAGRI】」。

 投石器の中でも比較的小型で、車輪を付けて移動可能にした物を指す。据え付けて使用する大型の物は「重投石器カタプルタ」と呼んで区別する。

 砲兵トルメンタが使用する。


〇投擲武器


投擲爆弾グラナートゥム【GRANATUM】

 複数形は「グラナータ【GRANATA 】」。

 青銅製の容器に2㎏ほどの黒色火薬を詰め、赤燐を利用した摩擦発火式の信管を付けた投擲用の爆弾。発火ピンを抜いて内部の導火線に点火してから約10秒ほどで爆発する。総重量で4㎏ほどにも達する爆弾の爆発威力は強力で、殺傷半径は25mほどにも達する。ただ普通に投げるには重すぎるため、肩掛けカバンのような麻袋に入れてハンマー投げの要領で投擲するか、あるいは後述する重弩砲バリスタのような大型の投擲機を使って投射する。


投槍ピルム【PILUM】

 複数形は「ピラ【PILA】」。

 投擲することを前提とした槍だが、通常の槍としても使えないことは無い。

 全体の穂先側四割が青銅で作られており、残り六割が木製の柄になっている。両者の接合部はソケット状になっており、穂先を簡単に交換できるように作られている。

 穂先はソケットの付け根部分がわざと細く作られており、投擲して命中すると衝撃で曲がる。投槍ピルムが盾を貫くと曲がった穂先は簡単に抜くことが出来ず、相手から盾を奪う事になるし、曲がることで槍をそのまま敵に投げ返される危険性も排除できる。

 貫通力を上げるために刃の部分だけ銑鉄せんてつを鋳込んでいる物も作られている。

 基本的に一度投げれば使えなくなる(柄は後で回収して再利用するが)ため、レーマ軍のあらゆる武器の中で最も充実した大量生産体制が整っており、かなり古い時代から全レーマ軍に全く同じものが行き渡った兵器でもある。

 長さは伝統的に1.85mで統一されている。

 このため、種族や民族ごとに微妙に異なる長さの単位を全レーマ帝国で統一する際の基準とされ、「ピルム【PILUM】」はレーマ帝国における長さの最も基本的な単位となっている。

全長:1ピルム(約185㎝)

重量:10リブラ(約3.3㎏)

有効射程:10ピルム(約18.5m)

 

太矢ダート【DART】

 複数形は「ダーティ【DARTI】」。

 手で投擲する、矢の形をした武器。刃先から柄、そして矢羽根にいたるまですべてが青銅で鋳造して作られている。投げやすいように柄尻に紐が結び付けられており、この紐を持って振り回して投擲する。

 通常は円盾パルマ大楯スクトゥムの裏側に4~6本が装着できるようになっており、これを取り出して投擲する。

全長:16インチ(約41㎝)

重量:24ウンキア(約660g)


〇槍鉾類


長槍ハスタ【HASTA】

 複数形は「ハスタエ【HASTAE】」。

 槍衾やりぶすまを敷いて騎兵突撃に対処することを主目的とする槍。騎兵突撃に対して突き出しても折れないようにするため、柄の太さは3インチ(約7.7㎝)にも達し、重量も22リブラ(約7.2㎏)に達する。

 長すぎる上に重すぎるので、投槍ピルムのように投擲することは現実的ではない。行軍する時は抱えず、穂先を持って柄をズルズルと引きずって歩く。

 なお、アルビオンニア軍団レギオー・アルビオンニア(ランツクネヒト族)は「ヘヒト【Hecht】」と呼んでいる。

全長:3ピルム(約5.56m)

重量:22リブラ(約7.2㎏)


〇刀剣類


短剣グラディウス【GLADIUS】

 複数形は「グラディイ【GRADII】」。

 「グラディウス」という語自体が「剣」という意味であり、広義においては刀剣類すべてが「グラディウス」に該当するが、ここではレーマ軍で軍団兵レギオナリウス用の標準装備となっている物。ショートソードに相当。ただし、レーマ軍でもゴブリンやドワーフ等小柄な種族の歩兵用としては大きすぎるため、使っていない軍団レギオーも存在する。

 レーマ軍で標準装備となっているのは片手用両刃直剣で全長が2/5ピルム(約74㎝)ほどの青銅製。幅広で短めの剣身と、片手で持った時にバランスを取りやすいようにカウンターウエイトとして付けられた握り拳大の柄頭ポンメルが特徴。この柄頭ポンメルがあるせいで間違っても両手では握れない。

 素材が鉄剣に比べて柔らかいため、剣身を幅広肉厚にして剛性を稼いでいるが、刃はもろく一度何かに叩きつければそれだけで鋭さを失ってしまい、剣の形をした棍棒と化してしまう。一度の戦闘で駄目になってしまうため事実上の使い捨て武器(ダメになった剣は回収して鋳なおして再利用する)。

 基本的にレーマ軍の剣術は刺突しとつが中心であるため、切っ先の部分だけ鋭く研いだ鉄や石を鋳込んで威力を増す工夫をしている兵士もいる。鞘は刃が変形してもある程度までなら納められるように革で作られている。

 密集隊形を組んだ状態で使用するため、狭い空間でも抜きやすいように基本的に肩から剣帯で右腰あたりに吊り下げて装備する。抜くときは右手を返して順手に握ってそのまま引き抜く。

 使い捨てのため大量生産(大量再生)する必要があり、各地の要塞カストラ内で鋳造するための設備が整えられている。鋳型そのものが大量生産されているため、同じ形、同じ大きさの剣がいくらでも出来る。このため「グラディウス」は長さの単位にもされているが、グラディウス自体が全軍で使われているわけでもないので、グラディウスという単位もピルムほど使われていない。

全長:1グラディウス=2/5ピルム(約74㎝)

刃渡り:20インチ(約51㎝)

重量:5リブラ(約1.6㎏)


長剣スパタ【SPATHA】

 複数形は「スパタエ【SPATHAE】」。

 「スパタ」も剣全般を意味する単語ではあるが、一般にはグラディウスよりも長い騎兵エクィテス用の長剣を指す。ロングソードに相当。

 馬に乗るのは基本的に騎士エクィテス階級の貴族ノビリタスだけなので、ほとんどが私物である。貴族が私弁しべんするとなると当然のように自己主張の道具となるのは自明の理であり、実際自分の使いやすいようにカスタマイズするとともに様々な意匠を施して豪華に飾るのが一般化している。同じものが二つとないのが普通であり、特に戦闘の機会のない平和な地域の貴族の長剣スパタほど派手な飾り付けが行われる。ただし、実戦の機会の多い貴族の場合は見た目を地味にし、剣身を上質な鉄や鋼で作るなど、実用性を重視したものとなる傾向がある。

 剣身の素材は鉄や鋼が一般的。

全長:2/5~3/5ピルム(約76~111㎝)

刃渡り:20~34インチ(約51~87㎝)

重量:5~11リブラ(約1.6~3.6㎏)


中剣セミスパタ【SEMISPATHA】

 複数形は「セミスパタエ【SEMISPATHAE】」。

 文字通り長剣スパタを短くしたものであり、長剣スパタ短剣グラディウスの中間のようなサイズ。主に軽装歩兵ウェリテスや、軍団レギオーに所属していない警察消防隊ウィギレスなどが装備する。

 密集隊形を組んで戦う重装歩兵ホプロマクスは密集した状態で武器を使う必要から剣身の短い短剣グラディウスを使わざるを得ないが、密集隊形を組んで戦うわけではない軽装歩兵ウェリテス警察消防隊ウィギレスにはそのような制約は無い。むしろ、ある程度長さがある方が有利であるため、短剣グラディウスより長い刀剣が望まれるようになった。この需要に応えるために開発、生産、配備されたのが中剣セミスパタである。

 一般の軍団兵レギオナリウスに支給するのが目的であるため、大きさ以外は短剣グラディウスと全く同じであり、刺突を主とする青銅製で使い捨ての剣。剣身は長くした分、重量を軽くするために細く薄く作られている。

全長:2/5~1/2ピルム(約76~93㎝)

刃渡り:20~28インチ(約51~69㎝)

重量:5~9リブラ(約1.6~2.9㎏)


小剣プギオー【PUGIO】

 複数形は「プギオーネース【PUGIONES】」。

 「プギオー」という単語自体はラテン語で「小剣」を意味する語であり、特定の武器を指すわけではないが、ここではレーマ軍が標準装備としていた物。ナイフに相当。

 青銅製で両刃の直剣。

 軍団兵レギオナリウス全員が腰のベルトに下げているが、武器として使われることはほとんどない。野外料理とか日常生活の色々な事に便利に使う。

 普段は革の鞘に納め、グラディウスを下げていない側の腰ベルトにぶら下げて持ち歩く。

全長:1プギオ=1/8ピルム=9インチ≒23.125㎝

刃渡り:4½インチ(約11.6㎝)

重量:2リブラ(約658g)

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