アルビオンニア属州【Albionnia】

○概要

 レーマ帝国インペリウム・レーマ【Imperium Rema】で最も新しい属州。


○立地

 州都はアルビオンニウム【Albionnium】であったが火山噴火によって放棄されており、現在はアルトリウシア【Artoriusia】が暫定州都となっている。

 レーマ帝国領域最南端に位置するアルビオン島【Albion Island】の北部の属州だが、その領域は少しずつ拡大を続けているものの、未だにレーマ帝国の属州としてはかなり狭い範囲にしか広がっていない。


○歴史

・古代

 大災害によって一度無人地帯と化しており、それ以前の様子はほとんど不明である。

 大災害後、北から移動してきた一部のブッカが入植している。


・入植まで

 大災害後、一度無人地帯となったサウマンディア地方への入植が開始される。

 沿岸地域を中心に領域を広げ続けたサウマンディアはついに南レーマ大陸の南端に到達、アルビオン海峡の対岸に新たな土地「アルビオン島」が発見される。

 広大な面積を有するサウマンディアは食糧生産基地として有望視されていたが、水資源の不足から面積の割に穀物生産高は伸び悩んでおり、クンルナ【Kunluna】山脈を越えればすぐチューア【Chua】ということもあり、アルビオン島への進出を目論む。

 しかし、ただでさえ広大すぎるサウマンディア属州がこれ以上拡大することを嫌った元老院セナートスによりアルビオン島進出にはストップがかけられ、アルビオン島はサウマンディア属州とは別の行政区分として開発する方針が決定される。だが、まだ大戦争の最中であったこともあり、新天地へ乗り出す気概と体力(財力)を持った貴族ノビリタスが存在せず(存在したら大戦争へ投入される)、アルビオン島進出は事実上凍結となった。


・大戦争終結

 大戦争が終結すると論功行賞ろんこうこうしょうが必要となってくる。

 大戦争中、亡命ランツクネヒト族によって編成され、活躍したランツクネヒト支援軍アウクシリア・ランツクネヒトへの恩賞が問題となった。彼らは自分たちの国を創ることを目的に戦っており、恩賞も「自分たちの国」を支援軍アウクシリア創設当初から要求していた。

 大戦争に勝利すれば西側世界のどこでも好きに手に入るからと、当時のレーマ皇帝が安請け合いしてしまっていたのだが、西側世界とは勝敗を決することなく停戦っとなったため、彼らの国を創るためのまとまった土地は手に入らなかった。そして、レーマ帝国領域内にもそうした空き地は存在しない。

 このため、かねてから進出の計画がありながらも開発者が決まっていなかったアルビオン島に注目が集まり、時のランツクネヒト支援軍アウクシリア・ランツクネヒトの軍団長だったヨハン・フォン・ハッセルバッハ【Johann von Hasselbach】を侯爵に叙爵、同島を新帝国領アルビオンニア属州として開発する命が下る。


・入植開始

 ヨハン・フォン・アルビオンニア侯爵【Johann Fürst von Albionnia】と名を改めたヨハンはランツクネヒト支援軍アウクシリア・ランツクネヒトを解隊、アルビオンニア軍団レギオー・アルビオンニアに再編するとともにアルビオン島への入植に向かう。この時、ヨハンはランツクネヒト支援軍アウクシリア・ランツクネヒトが得た褒賞金と自信の財産のすべてを投じたが予算が足らず、ごく限られたランツクネヒト族しか連れて行くことが出来なかった。

 さっそくアルビオン湾に上陸を果たしたが、都市開発など行えるような技術者がいなかったため、入植はアルビオン湾周辺やシュバルツァー川【Schwarzer Riv】周辺に限られ、そこから入植地を広げていくことが難しかった。

 ヨハンは人集めと金集めに奔走し、アヴァロンニア支援軍アウクシリア・アヴァロンニアに目を付ける。アヴァロンニア支援軍はレーマに比肩しうるほどの高度な文明を持ちながらも大戦争時には啓展宗教諸国連合側に立ち、大戦争後にレーマの軍門に下ったアヴァロンニア貴族らで構成されている支援軍アウクシリアである。高度な教育や技術を持った人材を有しながらも、故郷を追われ帝国の猟犬として使い潰されようとしていた。

 ヨハンは本国に掛け合い、アヴァロンニア支援軍アウクシリア・アヴァロンニアのアルビオンニア派遣を要請する。アヴァロンニア貴族が帝国に逆らえないよう故郷アヴァロンニアからなるべく遠くに離したかったレーマは意外なほど呆気なくこれを承認、ほどなくしてアヴァロンニア支援軍アウクシリア・アヴァロンニアのアルビオンニウムへの駐留が実現する。


・アルビオンニウム建設と領域拡大

 アヴァロンニア支援軍アウクシリア・アヴァロンニアが到着すると早速アルビオンニウムの建設が始まる。技術的な分野ではアヴァロンニア支援軍アウクシリア・アヴァロンニアに頼り切ることになったため、アルビオンニウムの町並みはレーマ同様に《レアル》ローマ風の特徴を色濃く反映したものとなった。

 アルビオンニウムの街が整備されてくると、近隣の先住民であるブッカたちとの交易も始まり、レーマ本国からランツクネヒト族も集まって来て順調に人口が増え始めた。

 領域はシュバルツァー川に沿う形で南へ拡大し、現在のシュバルツゼーブルグに入植地が広がり始めたところで、初めて南蛮人との接触を果たした。当初は平和的に細々とした使節の交換や小規模な交易を行うだけの交流であったが、入植地がシュバルツゼーブルグから南へ広がっていくと南蛮との武力衝突が起こり始める。シュバルツゼーブルグ南方地域では帝国と南蛮で一進一退が繰り返されるようになったが、一口に南蛮と言っても一枚岩ではないらしく、豪族によって友好的なものと敵対的なものがあり、アルビオンニアは南で戦いつつ西への領域拡大を画策する。


・セーヘイム併合

 アヴァロンニア支援軍アウクシリア・アヴァロンニアはアルビオンニア侯の命を受け、アルビオン島北岸に沿って西へ伸びるティトス街道の建設を開始する。これはアルビオンニア属州の領域を西へ拡大するとともに、西山地ヴェストリヒバーグの外側から南で対立する南蛮勢力を迂回することを目論んでのことだった。

 やがてアヴァロンニア支援軍アウクシリア・アヴァロンニアは現在アルトリウシアと呼ばれる地域に到達、そこでブッカたちの村落セーヘイムを発見する。

 セーヘイムおよびその周辺のブッカたちは元々北レーマ大陸から戦乱から逃れてたどり着いた民族だった。何者かの支配に入るのを嫌って新天地を求めて移動し続けて来た彼らだったが、これ以上南に行けば南蛮の領域であり、北へ戻ればレーマかチューアの領域しかなく、未踏の地は最早ないと考えていた。それでいてサウマンディアやアルビオンニアとは既に交易を行っており、また海賊被害に悩まされていた彼らはレーマ帝国の進出をむしろ歓迎し、受け入れた。

 セーヘイムとその周辺に住むブッカたちはレーマ帝国への帰属が決まり、アルビオンニア侯爵家に対して艦隊を提供することとなった。


・アルトリウシア建設

 西山地ヴェストリヒバーグ西方から南進し、現在ズィルパーミナブルグと呼ばれる地域で頑強に抵抗を続ける南蛮勢力の側背へ回り込むという戦略機動作戦の拠点としてセーヘイム近郊にティトゥス要塞カストルム・ティティが建設された。当初はそこを拠点に南へ進出していく予定であった。しかし、アルトリウシア湾(当時はシサーメリと呼ばれていた)より南に広がる平野が実は広大な湿地であり、踏破も開拓も困難であること、また平野の向こう側には別の南蛮豪族の領域が広がっており、セーヘイムのブッカたちにとって大事な交易相手となっていた事などから南進は一旦保留となり、セーヘイムをはじめとするアルトリウシア湾周辺のブッカたちの村落の統治を盤石にすることが優先されることとなった。

 ティトゥス要塞カストルム・ティティから南へ伸びるマニウス街道を建設、その先にアルトリウシア平野を睨む形でマニウス要塞カストルム・マニを建設、さらにそこからライムント地方との連絡線を拡充するためにグナエウス街道が建設されるとともに、セーヘイムのブッカたちが供出する艦隊クラッススの拠点とすべく海軍基地カストルム・ナヴァリエの建設整備もこの頃に並行して行われた。


・ズィルパーミナブルグ攻略

 西方からの背後へ回り込む戦略機動作戦が事実上不可能であることが明らかになると、ズィルパーミナブルグの攻略は正面からの力押ししかなくなってしまった。

 時の侯爵マクシミリアン・フォン・アルビオンニアはレーマ本国に増援を要請し、その結果南部方面軍コミターテンセス・メリディオナリスの一部とサウマンディア軍団レギオー・サウマンディアを援軍として派遣してもらうことに成功する。この時の増援の中にハン支援軍アウクシリア・ハンも含まれていた。

 アルビオンニア軍団レギオー・アルビオンニアアヴァロンニア支援軍アウクシリア・アヴァロンニアの全軍とハン支援軍アウクシリア・ハン、さらにサウマンディア軍団レギオー・サウマンディア野戦軍コミターテンセス2個軍団という従来の三倍の戦力を投入しての力技でズィルパーミナブルグ攻略に成功する。

 ズィルパーミナブルグにはその「銀山砦ズィルパーミナブルグ」という地名が示す通り、豊富な産出量を誇る銀山があり、その後のアルビオンニア属州経済の大きな支えとなった。逆に銀山を失った南蛮豪族はその勢力を大きく減ぜられることとなったと伝えられている。


・クプファーハーフェン攻略

 ズィルパーミナブルグを攻略した当時、現在クプファーハーフェンと呼ばれる地域は未だ南蛮の支配下にあった。しかしクプファーハーフェンの南側に隣接する地域はアルトリウシア子爵家と婚姻関係を結んだコボルト豪族アサヒナ氏族の領域であり、ズィルパーミナブルグがレーマ帝国に併合されたことで他の南蛮地域から孤立した形になってしまう。

 ズィルパーミナブルグ攻略に成功したマクシミリアンはそのまま返す刀でクプファーハーフェンも攻略することを望んだが、チューア情勢の不安定化の兆候が見られたため援軍として送られていた南部方面軍コミターテンセス・メリディオナリス2個軍団はサウマンディアへ引き上げてしまい、クプファーハーフェン攻略は延期を余儀なくされる。

 そのまま放置して戦力の低下を待つという選択肢も無いではないが、陸路では孤立しているとはいえ海路では他の南蛮地域とのつながりを維持しているクプファーハーフェンを放置していれば、いつしか戦力を整えてズィルパーミナブルグの後背を衝いてくる危険性も無視できない。このためマクシミリアンはアルトリウシア子爵家を通じてアサヒナ氏族と協力関係を結び、クプファーハーフェンを支配する南蛮豪族に対して包囲網を構築、調略も駆使して攻略に臨む。

 アルビオンニア軍団レギオー・アルビオンニアサウマンディア軍団レギオー・サウマンディアアルトリウシア軍団レギオー・アルトリウシア、そしてアサヒナ氏族の援軍を得てクプファーハーフェン攻略に成功する。

 クプファーハーフェンは陸路で一応ライムント地方と繋がりがあるとはいえ海以外は峻嶮しゅんけんな岩山に囲まれた地域であり、銅山という独自の収入源もあったことから男爵領として独立させることが現実的と思われていた。新男爵の候補選定にはレーマ本国をはじめあちこちから干渉があったが、マクシミリアンは新男爵に名乗りを上げていたレーマ本国のバーデン子爵家から実弟レオナードの妻を迎えることを条件にバーデン子爵からの支持を取り付け、レオナードをクプファーハーフェン男爵に叙爵させる。


・火山災害

 統一歴97年8月12日、フライターク山【Mt.Freitag】が突如噴火する。この際に発生した火砕流は当時合同演習中だったアルビオンニア軍団レギオー・アルビオンニアアルトリウシア軍団レギオー・アルトリウシアの本営を直撃、両軍団レギオーに大損害を与える。この時の火砕流に巻き込まれ、多数の将兵と共にマクシミリアン・フォン・アルビオンニア侯爵とアルトリウシア初代領主グナエウス・アヴァロイニウス・アルトリウシウス子爵が相次いで死亡している。


〇政治

 属州女領主ドミナ・プロウィンキアエエルネスティーネ・フォン・アルビオンニア侯爵夫人【Ernestine Fürstin von Albionnia】を頂点とする君主制を敷いている。

 直轄地には各地域ごとに郷士ドゥーチェを置いて統治させている。

 地域ごとに参事会デクリオネスが設置されているが、属州全体としての地方議会の様なものはない。代わりに定期的に地方領主と郷士ドゥーチェを招集して議会のようなものを開いている。


〇経済

 属州の総人口は60万人ほどと見積もられているがハッキリしない。

 統一歴97年8月12日にフライターク山が噴火、州都アルビオンニウムは甚大な被害を被って以来、属州経済は低迷している。


〇軍事

 アロイス・キュッテル【Aloys Küttel】率いるアルビオンニア軍団レギオー・アルビオンニア、ヘルマンニ・テイヨソン【Hermanni Teijoson】率いるアルトリウシア艦隊アルトリウシア・クラッススが侯爵家直轄の辺境軍リミタネイとして存在している。

 ほかにアルトリウシア子爵領のアルトリウシア軍団レギオー・アルトリウシア、クプファーハーフェン男爵領にクプファーハーフェン兵団コホルス・クプファーハーフェンが存在し、それぞれの領国防衛の任を担っている。

 それらを補佐する形で帝国野戦軍の南部方面軍コミターテンセス・メリディオナリスからハン支援軍アウクシリア・ハンが派遣されアルトリウシアに駐留しているが、相次ぐ戦禍と事故によりその戦力を大幅に減らしており、既に独立した作戦能力は喪失している。


〇文化

 属州内でも地域ごとの差が大きいが、レーマ帝国の中でランツクネヒト族の文化的影響が最も大きい地域である。


〇宗教

 ランツクネヒト族の殆どはキリスト教・レーマ正教キーヒ・フォン・レーマ【Kirche von Rema】を信仰しているが、その他はだいたいユピテル【Jupiter】を最高神とする多神教十二主神教ディー・コンセンテス【Dii Consentes】を信仰している。


〇言語

 帝国共通の公用語であるラテン語とランツクネヒト族のドイツ語がつかわれている。属州領民はだいたいどちらも話すことができ、都市部に限っては識字率も6割近いが、ラテン語の識字率に比べドイツ語の識字率は低い傾向にある。


〇種族

 ホブゴブリン約35%

 ヒト(ランツクネヒト族)約30%

 ヒト(レーマ人)約15%

 ブッカ約10%

 他、ヒト(チューア人)、ヒト(南蛮人)、コボルト、ドワーフ、獣人という構成。ただし、地域ごとにかなり偏りがある。

 

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