第49話

 「おい、真治起きろ。宮本が凄い形相でお前の事、睨んでるよ」


 その言葉の主は…何と志帆だった。

 俺は、頭が混乱した状態で起き上がり、後ろの志帆に顔を向けた。


 「よーし、真治やっと起き上がったか。では、この数式、解いてみろ」俺は、志帆の顔を確認しながら

 「…ん、ここは!?…ケ、圭吾は、どうした?」俺の言葉に、志帆は不思議そうな顔をしながら

 「…圭吾!?…誰、それ?」と、返してきた。

 俺は、訳が分からず「ほら、あの天才の圭吾だよ!俺と志帆と圭吾で、保育園から一緒で仲良かっただろ?」

 志帆は、又も不思議そうな顔をしながら  「…何、言ってるの、真治!私と真治は、保育園から一緒だけど圭吾なんて私知らないし、居なかったじゃん」

 「そ…そんな!?」

 俺は、現実が良く理解出来きず、取り敢えず辺りを見回してみる事にした。

 そこに居たのは、俺が全く知らない奴等だった。志帆こそは本物だったが、担任の宮本も知らないヤツだった。

 知らない奴等というよりも、俺だけ知らない空間の中に居る様な感じだった。

 その時、俺はあの時の俺の祖父に似た初老男性が、圭吾の名前をこう呼んで居た事を思い出した。

「ケイゴ・ア・ファントム」

〈圭吾・ア・ファントム〉

〈圭吾・は・まぼろし〉

 圭吾は幻…!?ファントムは直訳すると幻だ。

 俺は、初めてこの時圭吾なんて人間は初めから存在して居なかった事を知った。

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