241話 神殿

 その日の夜、俺が外に出て涼んでいると……。


「ねえ、少し良い?」


「結衣か……ああ、もちろんだ」


「大丈夫よ、お嫁さん達には許可取ってるから」


「なるほど」


 風呂上がりの火照った身体は、もう子供とは言えない。

 というか、今では結衣の方が年上だ。


「……不思議ね……ただの平凡な日常だったのに」


「……ああ」


「和馬さんが亡くなって……変な夢を見るようになって……そしたら異世界に呼ばれて……今、こうしてここにいる」


「結衣……」


「でも、来れて良かったと思う。和馬さんの魂を持つ貴方に会うことが出来て」


「そうか……和馬も喜んでるだろうな」


「ほんと?」


「ああ、綺麗になった姿を見れて嬉しいってさ」


 俺の中の和馬は、ほとんど消えているが……きっと、そういうに違いない。


「そ、そっか……えへへ……うん、辛いけど……ずっと想ってると和馬さんが心配するもんね」


「そうだな……」


「あーあ、私はこの先恋とかできるのかなぁ? 和馬さんのこと、全然忘れられないのに……」


「別に忘れる必要はないんじゃないか?」


「えっ?」


「無理して忘れることはない。それに、和馬の魂の一部はお前の中にある」


「うん……まだ一年くらいだもんね」


「明日には元の世界に返すよ。さあ、もう寝るとしよう」


「そうね……」


 そして、俺も部屋戻り眠りにつくのだった。


 ……和馬と結衣か……俺では結衣を幸せに出来ない。


 どうにかならないものだろうか?







 翌朝……人気がないうちに屋敷を出る。


「お見送りはよろしいので?」


「ええ、クロイス殿。きっと泣いてしまいますから。それに、昨日盛大なお祝いを受けましたし、少し照れくさいですし」


「それもそうですな……カグラ、アレス様を頼んだぞ?」


「はい! 父上!」


「あと、孫もね?」


「は、母上!?」


「はは……まあ、その時は一度帰って来るかもしれません」


 そして、馬だけ借りた俺たちは龍神の結界へと出発する。





 数時間後、無事に結界の前へと到着する。


 以前あった光の結界は無くなり、黒いオーラに包まれた城がある。


「あれが龍神の城か……」


「どうやって入るんですかねー?」


「父上が試したところ、まず近づくことが出来ないと」


「まあ、そういうものだろうな。おそらく、俺以外では……闇よ」


 闇のオーラを発動させると……。


「え、えっ!?」


「なんだ!?」


「結衣、中村君も落ち着け」


「う、うん」


「お、おう」


 他の三人も驚いているが、慌ててはいない。


 まあ……俺も驚いてはいるが。


 なにせ、一瞬で景色が変わり、見知らぬ空間にいる。


 そして、目の前には……龍と思わしき石像が鎮座しているからだ。








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