232話 龍神との対話

この暗闇は……いつものか?


「……クロス?」


「いや、我は龍神だ」


「クロスはどうなったんだ?」


「あやつは我の仮初めの器。お主に力を授ける為に生み出した存在」


「そんな……もう会えないのか?」


正直言って、過ごした時間はそんなにはない。

でも、ずっと身体の中で感じていた。

むしろ、これからだってのに。


「クク、安心するがいい。我が消えるのちに新しい身体を授けるつもりだ。龍神としての強さはないが……」


「それでも良い。あいつは、俺の大事な友達だ」


「……ああ、そうだな。我としても息子のようなものだ……感謝する」


「……あっ! そうだっ! 結衣を元の世界に返すにはどうしたらいい!?」


一応、自分で考えていた方法はある。

教会なり、広い世界なりを探し回るつもりだった。

だが、おそらく龍神に会えば解決すると思っていた。


「我が封印の地に来るがいい。そこで我の力をもって送り返そうぞ」


「ほっ……ありがとう」


「いや、元はと言えば我の失態だ」


「ついでに聞きたい……なぜ、俺だったのか。聖女である結衣を説得するためか?」


「それもある。しかし、適性がないと無理だ。お主には、我が使徒の血が流れている」


「……ん?」


「以前言ったが、我は女神を元の世界に返すときにしくじった。しかし、その際に幾人かの使徒を女神のいた世界に送った。その者の血を引く者を使徒として呼び出してきた」


「なるほど……」


「今回はある意味で運が良かった。聖女に近い存在のお主がいたことが。その可能性など、何千年に一度くらいだ」


「それは……?」


「お主が死ぬ際に、魂の一部を聖女に残してきた。故に、聖女やお主はお互いに夢を見るという形で、それぞれの状況を知ることができた。そうすれば、少なくともお主は聖女を救おうとするであろう? 我は、この連鎖を断ち切りたかった……この機会を逃すと、もうなかったであろうな」


「つまり……和馬の魂が、俺と結衣に分かれているということか?」


「ああ、それで合っている」


ずっと疑問に思っていたことが……謎が解けたな。

結衣が俺の夢を見ること、俺が結衣の夢を見ることの意味が。

そして、その理由が。


「えっと……ややこしくなってきたが……ひとまず、その封印の地に行けばいいんだな?」


「うむ。彼の地にて我は待っている……どうやら、時間がきたようだ」


暗闇だった世界に光がさしてくる。


「じゃあ、すぐにても会いに行くよ」


「ああ、楽しみに……待って……いる」


そして、龍神の気配が消える。


それと同時に、俺の意識が覚醒へと向かっていく。


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