231話 戦いの後

 クロス……! 返事をしろ!


 ダメか……クロスの反応がない。


 俺が無事でいられるのは……おそらくクロスのおかげだ。


 本来なら身体が崩壊していてもおかしくはない。


 なのに、こうして意識がある状態で生きている。


 それは……クロスが俺の分の負担を請け負ったからだろう。







 皇都へと戻っていくと……。


「アレス〜!」


「アレス!」


「これは兄上に姉上。無事で何よりです」


「ええ! そっちこそ!」


「ふん、そっちこそな」


「「それでお爺様は……」」


 二人が同じことを言い、顔を見合わせる。

 その顔はよく似ていて、やはり姉弟なのだなと思う。

 そして……あんなのでも祖父だ。

 気にならない方がおかしい。


「すみません……俺が消滅させました」


「……そうか。いや、良いんだ。むしろ、すまん……お前に嫌な役目を押し付けてしまった」


「私もごめんなさい……本当なら私が殺したかったんだけど」


「俺以外では無理でしたからね……さあ、行きましょう」


「……ああ、そうだな。では、裏から入るとしよう。今は街中は大騒ぎだからな」


 あれだけ城で暴れていたらそうだろうな。


「説明はどうするのですか?」


「お前はそんなことは気にしなくて良い」


「こら! アレスは疲れてるからゆっくり休めって何でいえないの!?」


「うっ……」


「ははっ! ヒルダ姉さんには敵いませんね!」


「……全くだ」


「なによ、二人して……本当ならヘイゼルもいたら良かったんだけどね」


 ヘイゼル兄上は女神に乗っ取られた。

 そして、その存在ごとターレスに消された。


「そうですね……何処かで道が違っていたら……」


「いや、お前が気に病むことではない。父上はきちんと奴にも話しはしてきた。無論、俺もな。しかし、それを聞かなかったのはあいつの責任だ」


「そうね……さあ! 帰りましょう!」





 俺たちは後ろに控えていたゼトさんに案内され……。


 人々に見つかることなく、皇城の中へと入っていく。


 すると……入り口にてカイゼルが騎士然とした姿勢で待っていた。


「アレス様……よくぞここまで……ご立派になられて」


「カイゼル! 無茶をするな! 寝ていなくては!」


「い、いえ……主人がことを成し遂げたのに、おいおいと寝ていられるものですか……」


「ほんと、大変よ。全然言うこと聞かないんだから」


「コルン先生……全く、仕方ないな。わかった、俺も休むから休もう……良いな?」


「御意」


 俺たちは広い一室に案内されたが……。


 皆疲れ果てて……すぐにベットに倒れこむ。


「カグラ、オルガ、セレナ、アスナ、結衣……ありがとう。みんなのお陰でどうにかなったよ。ああ、返事は良い……俺も限界だ」


 そして、俺も意識を手放す……。

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