230話 戦いの傷

 ……終わった。


 これで……俺も……。


「ゴフッ!? カハッ……」


 鎧は完全に剥がれおち、翼も片方になり静かに空から落下する……。

 だが、心配することはない。

 俺には信頼する仲間たちがいるのだから。

 視界の隅に見える……大事な人たちの姿が。


「主人殿〜!」

「カグラちゃん! 間に合わないよ〜!」

「セレナさん! アスナさんを担いだカグラさんを風で飛ばして!」

「なるほど……アイサー!」

「うむ! 任せるのだ!」


 ……おいおい、何してんだ?


 カグラがアスナを背負って……。


「風よ! 吹き飛ばせ!」


「うわぁぁ〜!?」


「うひゃぁぁ〜!?」


 弾丸のようにこちらに向かってくる!


「うぬぬっ……いくのだっ!」


「あいさっ!」


 カグラが思い切りアスナを投げ……空中で俺を受け止める!


「ま、間に合いましたねー」


「お、おい、お姫様抱っこは勘弁しろって……」


「えー、いいじゃないですか〜」


「主人殿! ムムム……拙者もお姫様抱っこしたい!」


「しなくていいし! ……ゴホッ! ゴホッ!」


 まったく、こっちはクタクタだっていうのに……。

 でも、こういう感じも久々で楽しいかもな。


「もう! カグラちゃん!」


「す、すまないのだ! 結衣殿!」


「ま、待ちなさいよっ! 私はそんなに速く走れないんだから!」


 すると、すぐに結衣がやってくる。


「ち、血まみれじゃない……相変わらず、一人で無茶するのね」


「すまないな、結衣……」



「ほんと、そういうところはそっくりで嫌になっちゃうわよ。ふぅ……光よ、かの者の傷を癒したまえ」


 暖かな光に包まれ、俺の身体が軽くなっていく……。


「……ありがとう、結衣。アスナ、いい加減降ろしてくれないか?」


「仕方ないですねー」


 ひとまず降ろしてもらうが……。


「カグラ? 何を残念そうな顔をしている? 言っておくが……お姫様抱っこはさせないぞ?」


「い、いや! ……拙者、全然役に立ててないのだ」


 ……なるほど、それを気にしてたのか。

 やれやれ、そんなことないと言っても聞かないしな。


「……回復したが、やはり足にきてるな……カグラ、肩を貸してくれるか?」


「は、はいっ!」


 カグラに肩を貸してもらい、前に進んでいく。


「クスクス……カグラちゃんったら」


「仕方ありませんね、僕がやりたかったですが……ここは譲りましょう」


「私はお姫様抱っこできたので満足ですねー」


「ふふ……和馬さ……いえ、アレス君——素敵な仲間たちね?」


「ああ、結衣。この世界で出会った、俺の大切な人達だ。そして……お前もな。俺は前世の大事な人たちのことは生涯忘れることはない」


「そう……ありがとう」


 そうだ……まだ終わってはいない。


 何としても、結衣を元の世界に返さなくては……。

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