228話 決着前

 ……くっ、身体が。


 鉛のように重くなってきている……。


「ククク、そろそろ限界が近いか? 無理もない、私とお主では体の作りが違う。私は女神の使徒である聖女の血を引き、さらに摂取してきた。お主は異世界からきた、ただの器にすぎん。私の唯一の疑問だったが……何故、お主が選ばれたか謎だ。私の予想では、フラムベルク家から生まれると予想したのだが。そのために女の子供や孫を用意したと言うのに」


 なるほど……奴の体の作りは元々女神仕様ってことか。

 しかし、俺の身体は龍神の使徒でもない。

 おそらくフラムベルク家が、龍神の使徒の血を引いているのだろう。

 ……奴の言う通り、何故俺なのだろう?

 結局、龍神には聞けずじまいだったが……理由があるとすればあれくらいだ。


「聖女である結衣を惑わすためだろ?」


「そんな理由で選ぶか? 最悪、聖女など洗脳すればいい」


 ……確かにそうだ。

 何か理由があるのか?

 ……まあ、いい。


「どうでもいい。俺は理不尽を跳ね返す力をくれた龍神に感謝しているからな」


「そうか、私は感謝などしていない。神など滅びればいい」


「そうか。安心していい。俺が勝てば神はいなくなる」


 俺は再び刀を構える。


 少し休んでみたものの、相変わらず体は重たい。


 おそらく、あと一撃が限界か。


「なに? ……どうやら、龍神と話をしたようだな。なるほど……まあ良い。私の剣にて、貴様の中にある龍神を滅ぼす……いや、私がもらう。では、そろそろ終わりにしよう」


 そう言い、奴も剣を構える。


 そして……辺りを静寂が包み込む。


 俺が奴に勝つためには、今のままではダメだ。


 悔しいが、少なくとも今のカイゼルより剣の腕が上なのは確か。


 力は奴が上、スピードは俺が上。


 俺が一撃で奴を仕留めるには——命を懸ける必要がある。


 そして、俺が奴に勝てる理由が一つだけある!


「黒炎よ! 我をまとえ! 一撃でいい! 全てを持っていけ!」


 俺の中の同化したクロスが『任せて!』応えたような気がした。

 そして、俺の翼から生えるように黒炎が舞い上がる!


「良いだろう! この地での最後の余興だ! お主の一撃を打ち砕き、私はまだ見ぬ世界へとゆく!」


 奴の翼が光り輝き、後ろに十字の形で光が放たれる!


「貴様などを解き放てば不幸な人が増える! 故に——ここで貴様を殺す!」


「はははっ! 良い気迫だっ! それでこそ私が遊び相手に選んだ者だっ! 退屈な私の人生を潤してくれた男が龍神の使徒とは——そこだけは神に感謝しよう!」


「ふざけるな! この世界は貴様の遊び場ではない——因縁にケリをつけよう」


 ……この一撃に全てをかける!





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