226話 激戦

……らちがあかない。


先程から攻撃を繰り返してるが……。


互いに破壊し合い、互いに再生する。


「このままではジリ貧でつまらん……どれ、試してみるか」


そう言い、何かとてつもない力が奴の両手に集まっている。


「おい!? そんなものを放てば……」


「ああ——皇都ごと破壊するだろう。だが、私には関係ない。私の目的は、この狭い世界にはない」


「チッ! セレナ! 余波に備えろ!」


返事を待つことなく、俺は龍の口を開く!


「食らえ——ヘブンズレイ光の光線


「させるか——ヘルキャノン地獄の砲弾


次の瞬間、光の光線と黒炎の玉がぶつかり合う!


「グヌゥゥゥ!?」


「くっ!?」


バリバリと激しい音が鳴り、城の中が破壊されていく!


そして——光が弾ける!


「……防ぎおったか」


「貴様、どういうつもりだ? 皇都にいる人を皆殺しにでもするつもりだったのか? それとも、俺が防ぐと? ……いや、最後のセリフか」


さっき、こいつは『自分の目的はこの世界にはない』と言った。

つまり、こいつも知っているということか。

この世界は広く、まだまだ未知の世界だと。


「ほう? 流石は転生者、知っているのか?」


「ついさっきな」


「ん? ……まあ、良い。これで信憑性がある。私とて確証はなかった故にな」


「貴様はなにがしたい?」


「この大陸は女神の結界で覆われている。故に、海に出てもある程度までしか進めない。それを破壊するために、女神と龍神は邪魔だ」


「結界……」


推測だが、ここは聖域だったのかもしれない。

龍神と、その使徒が住む場所として……故に結界があった。

それを女神が応用したということかも。


「私は結界を破壊し、この狭い世界から出る。そして、未知なる世界に行く。決まり切った役割、決まり切った結末がない世界へ。この退屈な生を潤してくれるモノを見つけに。その最後の仕上げとして、アレス……お主は最高の役者だ」


「それが、真の目的か」


「ああ、そうだ。私の生は無意味で無価値だ。教皇に従い、国を裏から操るといえば聞こえはいいかもしれないが……その実態は、先祖から受け継いだ役割を果たしているだけに過ぎない。そこに私自身の考えや実力はないに等しい。全てが用意されているのだから。この世界もそうだ。女神と龍神による狭い箱庭だ。故に私は、この大陸を出て——広い世界を支配しにいく」


「解放自体は賛成だが……お前を解き放つのは危険過ぎるな」


「ならばどうする?」


「予定は変わらない。俺がお前を殺す——女神ごとな。そして、龍神の封印を解き放つ。後は言葉でもって対話していくさ」


「ククク、シンプルでいい」


ずっと、ターレスがなにを考えているのかわからなかったが……。


俺はようやく、この男の一端に触れた気がした。





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