223話 変身

……耐えたか。


(クロス、平気か?)


(うん! でも、僕が成長しすぎちゃったから……)


(気にするな、お陰で助かったよ)


そう、クロスが成長

成体になった頃は魔力も吸われずに、安心していたが……。

今度は存在そのものが、俺に負荷がかかるようになってしまった。

おそらく、器である俺が神の力によってそうなっているのだろう。

影にいる間はまだ負荷が少ない……故に、出す時は覚悟がいる。


「ククク……ようやくお出ましか」


「ターレス……その姿は……」


瓦礫の山から姿を現したターレスは……もはや人ではなかった。

手が四本、背中には天使の羽が四枚生えている。

白髪だった姿は若返り金髪になり、二十代くらいに見える。


「クク、危ないところだったぞ。この力を使う前に死んでしまうところだった。私の悪い癖だ……つい楽しみたいと思ってしまう」


「別にそのまま死んでくれて良かったんだがな」


……冷や汗が止まらない。

これが女神の力? いや、女神よりも圧を感じる。


「ア、アレス様」


「うぅ……」


「くっ……」


振り返ると、カグラとオルガが倒れている。

この二人はすでに戦った後だ、これ以上無理はさせられない。

……やるしかないか——俺も命をかけて。


「アスナ!」


「アイサー!」


俺の意図に気づいたアスナが二人を連れて下がる。


「ほほう、一人で戦うか」


「ああ、もう充分だ。あとは、その姿のお前を——俺が殺すだけだ」


「確かに。流石の私も、この姿を保つのは難しい。女神の力をコントロールするため、聖女の血肉を喰らい続けたが……使い過ぎれば、いずれ朽ちゆくだろう。まあ良い、その前にお主を倒せば良いだけだ。そして聖女本人と、そこの龍神の血肉を頂く。アレスよ、楽しかったぞ——」


その瞬間、奴からの圧が増す。

もはや、立っていられないほどに……!

結衣を食らうだと?

そんなこと——俺の中の和馬が許すわけなかろうが!!


(パパ!)


(……ああ、わかってる。どうやら、俺も覚悟を決めなくてはいけない)


(ホントは、もっと成長してからだったんだけど……耐えられるかどうか)


(気にするな。どっちにしろ、このままでは皆が死ぬ——今世と前世で出会った大切な人たちが)


神の力を手に入れた奴が、前の世界を襲わないという保証はない。


今、ここで……俺が止める!


「むっ……?」


「ァァァァ!!」


渾身の力を振り絞って立ち上がる!


「クロス! いや龍神よ! 龍神の使徒である我に力を与え給え!」


「グルァァァァ!(うん!いくよ!)


クロスが、俺の影に……いや——俺の体に入り込む。


その瞬間——俺の意識は闇へと沈んだ。

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