214話 助っ人参戦

その姿を確認した瞬間、俺は奥の手を使うのをやめる。


姉さんがいるなら問題ない。


あの程度のバケモノに負けるような人ではないから。





「ヒルダ姉さん!」

「アレス! 任せなさい! すぐに——」

「ガァァァァァァァア!」

「片付けるわ!!」

「ギャァアァァァ!?」


後ろで、断末魔の声が響き渡る。

あのバケモノ……場所から言って、おそらくエルバか。

瓦礫の山に飲まれ死んだかと思ったが……最後に自分に女神の血を注入したか。

いや、レイスが指示したということは、すでに打たれていたか。


「おのれ……ここでヒルダお嬢様ですか。まさか、ターレス様に直接刃向かうとは」

「どうやら、想定外のようだな……まあ、俺たちもだが」


すると、奴がターレスの元に下がる。

同時に、姉さんが俺の隣にやってくる。


「ターレス様……やはり、失敗だったのでは?」

「ヒルダを嫁にやったことか? それとも……すぐに殺さなかったことか?」

「両方です」

「ふむ……女ゆえに使い道があったからな。真の皇家の血と女神の血……その子孫は使えるしな」


……こいつら、自分たちの身内だろうが……!

思わず拳を握りすぎて、血が流れる。


「アレス、ありがとう。でも良いのよ、私には貴方達がいるわ」

「姉さん……」

「お爺……いえ、ターレス。そしてレイス。身内として、貴方達を……」

「いえ、ヒルダ姉さんは下がってください」

「ちょっと!?」


助けに来てくれたことは嬉しいし、素直に助かった。

だが、他に優先してほしいことがある。


「姉さんには、アスナを助けて欲しいんです。サスケ殿が操られているのです」

「……師匠が……そうだったわね。でも、この二人相手では……」

「平気です——いざとなれば奥の手を使うので」

「そう……わかったわ! 無茶するじゃないわよ!」

「それはこっちのセリフです」


その場から離脱し、姉さんがアスナの方へ向かっていく。


「クク、相変わらず甘い男だ。身内殺しをさせたくなかったか?」

「姉さんの覚悟はわかってる。今更、それを止めることなどしないさ」

「ほう? では、何故だ? 言っておくが、そろそろ退屈になったから——私も動くぞ?」

「問題ない。これで、二対二になる」


俺は先ほど、クロスによる信号を受けた。


ヒルダ姉さんが通ってきた道に、父上達がいたなら……来るかもしれないから。


そして、予想通りに……。


(パパ! くるよ!)


「アレス様! 近衛騎士ゼト参りました!」

「ァァァァ! クソッ! やってやるよ!」


扉の向こうからやってきたのは、最強の助っ人だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る