212話 レイス対アレス

話は終わりという意味で、俺は居合の構えに入る。


「そうだな。お喋りはこの辺にしておこう。さあ、レイス——」

「はっ、ターレス様。小僧、ターレス様が手を下すまでもない——死ね」


姿勢を低くし、間合いを詰めてくる!


サスケ殿が負ける相手だ……本気でいかないと死ぬ!


居合したまま——敵の進行方向に向かって地面から闇の手を出現させる。


「闇の手よ!」

「甘いですね!」


次々と地面から現れるそれを、華麗なステップで躱していく。


「十分だ——フレイムランス」

「くっ!?」


奴がステップをし、着地をする瞬間を狙う!


「チッ! 水よ!」

「ほう? 魔法剣士ということか」


水の壁が出現し、俺の炎を相殺した。

やはり、一筋縄ではいかない相手か。


「ふふ、魔法剣士が自分だけとは思わなかったですか?」

「いや、そんなことはない。少し驚きはしたが」


両方を極める大変さは身に染みているからな。

さすがは、ターレスの側近というわけか。


「では、次はこちらから——ウォーターブレード!」

「フレイムウォール」


まっすぐ向かってくる水の剣を、炎の壁で蒸発させる。


しかし、次の瞬間——奴を見失う。


「どこだ?」


……俺みたいに闇に消えることはない。

それに……ヒュン、ヒュン、ヒュンと不気味な音がする。


「……そこか!」

「なっ!?」


狙ったところに刀を振り下ろすと……いつの間にか接近していた奴の肩を切り裂く。


「チッ、浅かったか」

「なんと……見えたと? この私の瞬速が」


どうやら、目でも追えないスピードで動いていたようだ。

それが、あの不気味な音の正体か。


「完全に見えたわけじゃない。ただ、感じただけだ。しかし……なるほど、サスケ殿がやられるのもわかる」

「ふふ、それはこちらのセリフですよ。自分の血を見るのは久々です」

「そうか——なら、もっと見せてやろう」


今度は、こちらから攻める!


「くっ!? 速い!」

「速さには自信があるんでね」


逃げる相手を、刀で執拗に攻め立てる!



「ぐかぁ!?」

「どうした? 血が出てるぞ? ガードが間に合ってないぞ!」

「お、おのれぇぇえぇぇ!! もういい! やってしまえ!」


フェイクかと思い、俺は敵から目を離さない。


しかし、次の瞬間——獣のような咆哮が響く。


「ガァァァァァァァア!!」

「キャァ!?」

「えっ!? どこから!?」

「ふふ、やってしまいなさい!」

「なに!?」


思わず振り返ると……瓦礫の山から、例のバケモノが現れていた。


そして、それは——近くにいた無防備な二人に襲いかかろうとしていた。




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