211話 真実の一端?

 とある世界に神が二体。


 片方は表の世界の神、片方は裏の世界の神。


 それぞれ主神より任され、世界を見守っていた。


 しかし、とある時……表の世界の神に異変が起きる。


 神とは人々の信仰によって成り立っている。


 自分の存在を保つ術であり、力の源でもある。


 人々の信仰が薄れ、次第に力を失っていった。


 表の神は焦った……このままでは、いずれ消えゆくと。


 神である自分が消え去るなど、耐えられないと思ったのだろう。


 そして、裏の世界の神を頼ることにする。


 裏の世界の神は、まだまだ力を持っていたからだ。


 それこそ、現世に干渉できるほどに人々の信仰を持っていた。


 表の神はそこに目をつけた。


 表の世界では文明が発達し、今更力を取り戻すことは不可能だった。


 故に、裏の世界の一部を借りて、そこで信仰を募ると。


 いずれは回復し、元の世界に帰ると。


 裏の神は承諾し、一つの大陸を与えることにする。






「……それが、この大陸だと?」


「おそらくな。だから、この世界にはまだまだ大陸があるはずだ」


「どうして、お前は知っている?」


「全てを知ってはいない。ただ、私の一族は……ここではない世界の者の末裔だ。故に、代々受け継がれてる情報はある。それらを繋ぎ合わせれば……そこまで間違ってはないはずだ」


 ……ここではない世界?

 信仰が薄れる……文明が発達……そういうことか?

 表の世界というのは、前世の俺が元々いた世界のことか?

 そして、今世の俺がいる世界こそが……裏の世界。


「二つの世界は何らかの繋がりを持っている。故に、世界の壁を越えることが可能?」


「さすがに理解が早い。転生する前は、あちらの世界にいたのだろう?」


「知っているのか」


「無論だ。それを知った時から——私は決めた」


「なに?」


「いや、なんでもない……どんな世界だ?」


「なんてことないさ。人々は醜い争いをしてるし、善なる者は損をする。上に立つ者は腐り、下にいる者達は搾取される」


「どこの世界も同じということか」


「ああ——勇気ある者が立ち上がって歴史を作ることもな」


 あの世界とて、今は停滞しているが……。

 昔からそうだったわけじゃない。

 一部の勇敢なる人たちが、今の歴史を作り出した。

 だから、今日の俺たちがいた。

 そのことに感謝せず、のうのうと生きているやつが多いがな。


「なるほど……私が悪で、お前が善か」


「いや、どっちでも良い。それを決めるのは……俺たちじゃない」


「クク……そうだな」


「ただ言えることは、俺は善なる者ではない。俺は自分が生き残るために戦う。大事な人たちと、この先を生きていくために戦う……そんな自己中な人間だ」


 女神に従って生きている方が幸せだったという者もいるだろう。


 ただ流されるままに生きること……それを否定はしない。


 だが、俺は……自分の意思で生きたい。


 魔王であり邪神の使徒と呼ばれる俺は、今のこの世界においてはいてはいけない存在。


 ならば……この世界の理が、俺を否定するというなら……その理を覆すまでだ!

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