210話 個別対応

作戦通りに——敵が動き出す前に!


「光の雨よ、敵を滅せよ——シャイニングレイン!」

「風の嵐よ、敵を切りきざめ——トルネイド!」


敵に向かって、後方から二人の魔法が放たれる!

その威力は凄まじく、だだっ広い玉座の間の天井をも破壊する!


「くっ!? もう一人いただと!?」

「そういうことだ。これで実質的に四対六だな」


エルバは今の魔法を避けきれず、瓦礫の中に埋もれた。

あいつの強さは大したことはない。

そして、もう一人は片腕が使えない。


「オルガ! 今度こそハロルドを仕留めろ!」

「御意! 場所を変えて仕留めます!」


目の前の敵から視線を逸らさずに指示をする。

片腕が使えないなら、オルガが負けることはないはず。

今度こそ、あいつを仕留めてもらう。


「アスナ! サスケ殿に勝てなくて良い! 時間を稼げ!」

「はいはーい!」


時間を稼ぐだけなら問題ないはず。

本来、アスナの戦い方はそういうものだからだ。


「カグラ! 勇者は任せた!」

「わかったのだ!」


カグラの力なら、そうそう押し負けることはない。

タイマンはきついだろうが……。


「ロレンソ! カグラの補佐を頼む! 当てようとしなくて良い! 牽制で充分だ!」

「わ、わかりました!」


最初のあの一撃を放てるなら問題ない。

元々、魔法の才能はあるやつだ。


「結衣! セレナ! 全体のフォローを!」

「わかったわ!」

「任せてください!」


間違ってもセレナや結衣を前線に出すわけにはいかない。

これなら、どうにか戦える。


「さて……お前の相手は俺がする」

「ふふ、良いのですか? 我が主人の相手がいませんが?」

「はっ、奴が動くか? 楽しむことが目的なのだろう?」

「よくお判りで」

「それに……別に二人同時でも構わない」

「……舐められたものですね!」


すると……ターレスが拍手をする。


「下がれ、レイス。少し話がしたい」

「はっ、ターレス様」


なるほど、レイスと言うのか。


「いやいや、実に愉快だ。何かするだろうと思っていたが……まさか、あんなゴミクズを使っての先制攻撃とはな。生きているのは知っていたが……敵を倒すためでなく、片腕をもぎ取ることに専念させたのは良い作戦だ」


「それはどうも」


「全員で姿を消していたなら、もっと警戒をしていただろう。あえて自分一人だけが闇をまとい、消えているのが一人だと思い込ませた……ふふ、良い作戦だ」


「随分とお喋りになったな。今まで散々黙ってきたのに」


「そう言うな。約束を守ろうと思ってな」


そう言い、奴が静かに語り出す……。



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