206話 離脱

 カイゼルの手から鮮血が溢れ出す。


 そのまま間髪入れずに——胴体を斬りつける!


「セァ!」

「ガハッ!? ……お、お見事です、アレス様……」


 そう言い、地に伏せる。


 最後の一撃を入れるか迷ったが……これで一瞬でも正気に戻れば。


「ほう? 正気には戻ったが……殺したか?」

「死なせはしない——その首は預けておく」

「ククク……冷静な判断だ。その胆力に免じて、追わないでおこう」


 そんな奴の言葉を尻目に、俺はカイゼルを担いで走り出す!








 そのまま、走っていると……。


「アレス様!」

「オルガか、ハロルドは?」

「いきなり退いていきました」

「なるほど。とりあえず、俺たちも一度下がる」


 どうやら、ターレスが命じたようだな。




 その後、カグラとセレナ、アスナと結衣と合流する。


「セレナ! 頼む!」

「はいっ! ハイヒール!」


 青い光がカイゼルを包み込み……。


「ガァァァァァァァア!」


 カイゼルが暴れ出す!


「オルガ!」

「はい!」


 二人で押さえつける!


「ガァァァァァァァア!」

「だ、ダメです! 傷は治るのに……!」


 くそ! やはり精神的なものを治すのは無理なのか!?


「……私がやる」

「結衣?」

「その人なんでしょ? 貴方の大事な人って」

「あ、ああ!」

「任せて」


 結衣が力強く頷き……。


「麻薬に近い症状……それを取り除くイメージ……聖なる光よ、かの者に宿る異物を取り除きたまえ——キュア」


 今度は黄色い光がカイゼルを包み込み……。


「ガァァ……」


 穏やかな顔になり……静かになった。

 呼吸を確かめてみると……。


「……生きてる! 結衣! ありがとう!」

「べ、別に……」


 そういや、和馬以外の奴には素っ気ない態度だったな。

 あっちでいう、ツンデレってやつか。


「これ! 私の父にもできますか!?」

「えっ? た、多分」

「アスナ、サスケ殿は?」

「父も退いていきました……すみません、私の力じゃできなくて」


 無理もない。

 アスナの戦闘力はそこまでではないし、そもそも相手が悪い。



「わかった。サスケ殿も必ず取り戻す。結衣、その時は頼む」

「ええ、任せて」

「主人殿、この後はどうするのだ?」

「一度、態勢を立て直す。皆に話しておきたいこともある「?

「では、僕が殿を務めます。ここから抜けましょう」


 俺は頷き、しょぼくれている女の子の方に触れる。


「セレナ、落ち込むな。おそらく、イメージが足りなかったのだろう。こういう時はどうするんだっけ?」

「アレス様……結衣さん!」

「は、はい?」

「私に、さっきの教えてください!」

「い、いいけど……」


 ふぅ……ひとまず、全員生き残れたか。


 後はサスケ殿と勇者……ハロルドは始末する。


 そして、ターレス。


 奴のお遊びに付き合うのも、もうこりごりだ。


 次で——終わらせてやる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る