200話 合流

クロスに乗りつつ、皇都に近づいていき……。


「クロス、女神の気配はあるか? この辺りから、アスカロンが飛んでこないか注意してくれ」


(うん! ……でも、変なの。気配はするんだけど、しないというか……)


「どういうことだ?」


(うーん……わからない)


もしや、俺が与えたダメージが予想より大きかったか?

そのせいで弱っている?

……それならば、チャンスかもしれない。

でも……何かが、腑に落ちない。






結局、攻撃もないまま……。


いよいよ、皇都が見えるというところで……。


(パパッ! あれ! 下見て!)


「なに? ……クロス!」


(うん! 降りるね!)


クロスが、ある地点に向かい降りていく。


そこには……。


「父上! 兄上! ゼトもいるのか」


「アレス! 良かった……無事だったか」


「…………」


「アレス様、ご無事でなによりです」


「ええ、何とか。それよりも、兄上? 何故黙っているのですか?」


「……すまん!」


「ちょっ!?」


兄上が、俺に頭を下げるなんて……。

これは……そういうことか。


「頭をあげてください。それは、カイゼルとサスケ殿がいないことに関係ありますか?」


「……ああ」


「では、きちんと話してください。まずは、それからです」


「……強いな、お前は」


そんなことない……俺の胸は、今にも張り裂けそうだ。

ただ、それを隠すのが上手いただけだ。





その後、お互いの状況を簡潔に説明しあう。


人数が多いので、俺と父上で話を進めることにする。


「ターレスが皇都を制圧?」


「ああ、そうだ。女神が出て行った後、アレスを信じて、我々は行動を起こした。無事に皇都を掌握したが、数日後にターレスが攻めてきた」


「女神ではなく?」


「ああ、女神は見当たらなかった」


……何が起きている?

女神はどこに行った?

ターレスは何故動いた?


「……とりあえず、これからについて考えましょう」


「うむ。アレス達の考えを聞かせてくれ。俺は役に立たない、お前の足手まといにだけはなりたくないからな」


「兄上もそれでいいですか?」


「……ああ」


やはり、意気消沈しているか。

ターレスに対する意識は、並大抵ではないだろう。


「では、話は簡単です。このまま、フラムベルク領に向かってください。そこにはヒルダ姉さんや母親がいますので。母親や姉さんに、無事な顔を見せてあげてください」


「アレス、改めて感謝する……よくぞ、妻達を守ってくれた」


「当然ですよ、家族ですから」


「……俺も良いのか?」


「もちろんですよ。ヒルダ姉さんにとっては、貴方は弟なのですから」


「俺は嫌われている」


「そんなことないですよ? 何だかんだ言って心配してましたし」


「……どっちにしろ、俺も役には立たんか。わかった、お前に従うとしよう」


「何より、貴方は皇帝なのでしょう? なら、生きることが最優先です。ゼトさん、すみませんが……」


「ええ、わかっております。お二人は、私が責任を持ってお送り致します」


「よろしくお願い致します。ゼトさんなら安心です」


話をまとめた俺たちは、すぐに行動を開始し……。


別々に分かれ、それぞれの道を急ぐのだった。

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