196話 ターレス視点

……呆気ない。


もう少し、苦戦するかと思いきや……。


「やはり、驕っていたか。自分を殺す術を、私が持っていないと。バカな話だ……アレスが神を殺す刀を持っていた以上、その可能性を考えるべきだ」


「そうですね、少なくともターレス様なら考えますね」


「レイスか……」


「身体はどうですか? 見た目からは異常は見受けられませんが……」


「ふむ……」


私が、奴らの家族を人質にとって作らせた神殺しの剣……。


アレスのとは少し違う。


この剣は殺すというより、力を吸い取るように作らせた。


いや、正確には封印すると言った方が正しいか?


女神の力を閉じ込め、己の物とするために。


皮肉なものだ……邪神を封印してきた奴が、今度は自分が封印されるとはな。


「今のところ、問題はない」


「それは良かったです。して、この後は如何いたしますか?」


「おそらく、アレスの奴がすぐにでも来るだろう。その前に、舞台を整えるとしよう。聞くまでもないが——準備は出来ているな?」


「もちろんでございます」


「では、向かうとしよう」


「アスカロンは如何しますか?」


視線の先には、地に落ちたアスカロンがある。

光は収まり、ただの槍と化している。


「放っておけ。というより、誰も触れることができん」


「そうですね、聖痕がないといけませんし……畏まりました。では、ゲーム開始ですね?」


「ああ、まずはアレスが来る前に皇都を制圧できるかどうかだ」






その後、用意していた兵士達を率いて……皇都に突撃を仕掛ける。


手筈は整っていたので、あっさりと門が開かれる。


「行け! 勇敢なるゲイボルク家の者よ! 今こそ、我々が立ち上がる時!」


『ウオオオオ!!』


こいつらは、私のいうことを聞く人形だ。

女神の血を薄めに薄めた薬を、こいつらには与えている。

バケモノにもならないし、強さもそこまでではないが……。

自我が薄くなり、ただ薬が欲しいだけの操り人形となる。


「よくやってくれたな、エルバよ」


「は、はい」


「お主は賢い。ザガンを見限り、こうして私に恩を売ってきた」


こやつの一族は、代々ゲイボルク家に仕えている。


ザガンにつくように言っておいたが、自らアレはダメですと進言してきた。


そして一族で私が与えた女神の血を研究し、今回の薬を開発した。


「い、いえ」


「クク、誇って良い。お主は実現のためにザガンを使ったのだから」


薬の開発のために、ザガンに薬を手渡したのはこやつだ。


それは、私が仕組んだことではない。


さて…アレスよ、早くしないとお前の大事な者を奪ってしまうぞ?

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