195話 番狂わせ
……オノレェェ。
まだ、この傷は痛む……。
餌を早く手に入れなくては……。
「おのれぇ……ん? ほう? 丁度良いところに」
空を飛んでいると、平地にて人が手を振っているのが見える。
奴こそが、私が探していた人物だ。
「しかし、奴は中々に頭の回るニンゲンだ。少し、様子を見てからにするとしよう」
空から降り立ち、勘付かれぬように近づく。
傷などなく、余裕があるように振舞わなければ。
「出迎えかしら? ターレス」
「ええ、マリア様」
「フフ、貴方は優秀で良いわ。他のは役立たずで」
「と、申しますと?」
「教皇はアレス……魔王にやられ、天使もその仲間にやられたわ。勇者とハロルドの安否も不明よ」
「なるほど、そうでしたか。では、この後はどうなさるので?」
「皇都に戻って少し対策を練るわ。幸い信者が多く残っているので、時間が経てば経つほど私の力は増していくわ」
そうだ、何も焦る必要はない。
こいつを吸収して回復し、その後体制を整えれば……。
どうせあいつらは、黒龍に乗ってくるはず。
近づいてきた黒龍に、最大限に力を圧縮したアスカロンを投げれば良い。
「なるほど——それは困りましたなぁ」
「——なんのつもりかしら?」
気がつくと……私の体を剣が貫いている。
こいつが裏切るなんてね……まあ、予想の範囲内ではあるけど。
でも、私に気づかれずに剣を突き刺す……今は、それが嬉しい。
こやつは聖女の血を濃く受け継いでいる強い個体だということだから。
「おや、随分と余裕がありますね」
「それはそうよ。ただの剣では私は殺せないわ。いくら貴方が私の力を受け継いでいると言ってもね。でも、丁度良かった——私も、貴方を殺すつもりだったから」
そっちが、その気なら……ん? 身体が……。
「さて……私が、なんの策もなくこんなことをするとお思いで? 貴方を神だと知っている、このターレス-ゲイボルグが」
「かっ……な、何をした? 私の体から……力が……」
女神の根源たる力が……抜けていく?
「なに、簡単な話です。今、貴方に突き刺した剣は——神殺しの剣なのですから。実は、何人か匿って作らせていたのですよ。少し、私好みに作ってありますが」
「な、何? ど、どういう……ガァァィィィ!!」
「驕った女神よ——滅びるが良い」
お、オノレェェ!!
わ、私が消える? 弱くなったとはいえ、神たる私が?
こ、こんな形で……ニンゲンこどきに……自分が作り出した存在に……。
龍神の一族……最後の最後まで……やはり……い……や……まだ……。
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