187話 女神戦

 ……さて……いよいよか。


「こうして会うのは初めてか?」


「ええ、そうですね。私が意識を取り戻してからは」


 黄金の髪に、人形のように整った容姿とは裏腹に……。

 その目には、隠しきれない憎悪が見えている。

 よっぽど、俺のことを殺したいらしい。


「ヘイゼル兄上はどうなってる?」


「憎んでいた兄の心配ですか?」


「別に憎んでなどいないさ。無論、生きているなら責任はとってもらうが」


「甘い男ですね……龍神が好みそうです——虫酸が走る」


 龍神? 邪神ではなく? ……やはり、何かあるな。

 うむ……少々揺さぶってみるか。


「お前はなんだ?」


「女神ですよ、この世界を救った」


「ほう?」


「邪神に支配されていたこの地を、私は救いに来ました。人々の願いによって」


「……それっぽいことを言う。先程は龍神とか言ってたが?」


「それは……ええ、かの者が闇に堕ちる前の名前です。彼は邪神となり、この世界を……そして、貴方が元いた世界を滅ぼそうとしたのです」


「ふぅん……」


「信じられないのも無理はありません。ですが、真実なのです。どうです? 貴方が大人しく邪神の分体を渡すと言うなら、見逃してあげないこともないですが?」


「断る。そもそも、結衣を洗脳した貴様など信じるに値しない」


「彼女は、あのままでは貴方に騙されそうだったので。そうですか、残念ですねぇ……ええ、本当に」


「その割には嬉しそうな顔をしてるが?」


 隠しきれない笑みがこぼれている……醜悪な。


「おや……私としたことが。念願のモノを前にして、興奮してしまったようですね。さあ——さっさと邪神の分体を出してください」


「そう言われて出す奴がいると思うか?」


「なら……出させるまで」


 そう言い、奴が神器アスカロンを構える。

 槍の武器……オルガと鍛錬を重ねてきて良かった。

 俺は魔力を全力で放出し、その身にまとう。


「気を抜いたら死ぬ——はっ、上等だ」


「もう一度死になさい——予定通りに」


 迫り来る槍を、刀で受け流す。


「くっ!」


「ふふ、そもそも相性が悪いですよ。刀では槍には勝てませんから」


 確かに間合いを詰めることが難しい。

 何より、神器がかすっただけで……考えたくもない。


「だが! ここで臆するようでは師に向ける顔がない——セァ!」


 居合の状態から刀を振り抜き、槍の穂先のみを下から叩く!


「なっ!?」


 反動で槍の共に奴の腕が上がり、その体を無防備に晒す。


 その隙に、一瞬で間合いを詰め……。


「死ね」


「あっ」


 ストンと……奴の首が落ちた。




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