184話 結衣視点

 ……どうしたら良いの?


 ……どうしたらよかったの?


 あいつから……確かに和馬さんを感じる。


 姿や形は違うけど、あの目……私が好きだった目。


 ……和馬さんなの? やっぱり嘘なの? わかんないよぉ……。




「おい、しっかりしろって」


「うるさいわね……あんたこそ、よく平気ね? 腕を斬られたのに」


 あの時は驚いた。

 腕を斬られたこともそうだけど、その後に再生したことも。

 私は……その覚悟があったのかな?


「そりゃ、痛かったぜ? でも、これで証明されたじゃんか。斬られても平気だって」


「それはそうだけど……」


「へへ、俺はやるぜ」


 ……おかしい。


 中村は楽観的とはいえ、ここまでじゃなかったはず。


 そもそも……私もおかしい。


 


 それに、必要以上に憎しみに囚われてるような気が……。


「おお……この気配は……」


「教皇さん?」


「おお、何か飛んできたぜ」


「えっ?」


 次の瞬間——目の前に光が現れる。


「おお! マリア様!」


「教皇よ、ご苦労だったわ。どう?」


「も、申し訳ございません! 未だ魔王を討つには至らず……天使はやられ、聖女様と勇者様も未だ覚醒をしておりませんので……」


 覚醒? 何のことだろう?


「いえ、気にしなくて良いですよ。天使は所詮時間稼ぎのようなものですから。覚醒してませんか……なるほど、勇者様は近いですが……聖女様は……やはり……ダメダッタカ」


「えっ?」


 最後、なんて言ったの?


 すごく低くて、恐ろしい声が聞こえてきたけど……。


「まあ、いいでしょう。ハロルド」


「はっ、ここに」


「貴方はいいですね……実に私好みの使徒です」


「あ、ありがとうございます!」


「ナンバーズも、残りは貴方だけですか……役立たずばかりです」


 えっ? あんなにいたのに?


 いつのまにやられちゃったんだろう?


 どうしよう……頭が上手く働かない。


 私って……こんなだったっけ?


 もっと、冷静にならないといけない気がする。


「……まずいですね。来て正解だったわ……憎しみの力が揺らいでる」


「あの……? さっきからどうしたんですか?」


「力を使うので、この手は使いたくありませんでしたが仕方ありません——」


 次の瞬間——私の体が動かなくなる。


 っ!! 声も出ない!?


「憎しみゆえに、意識を持っていた方が良いと判断しましたが……ここからは邪魔ですね」


 ……意識が消えていく……。


 何も考えられなく……なってくる。


 そして……私の意識は暗い海の底に沈んでいった……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る