183話 ???視点

 ……フフ……ようやく力が戻ってきたわ。


「ぁぁぁ……」


「俺の力が消えてくゥゥゥ……」


「し、死にたくない……俺は、なんのために……」


 私の目の前には、がいる。

 そのどれもが、これから死に行く運命にある——私の餌となって。

 ナンバーズとは、私の使徒の血を強く受け継ぐ

 つまり、弱くなった私の力の元になる。


「教皇様はともかく、な、なんでハロルドのような若造が……」


「あら、まだ生きてたの」


 私に意見をしたこいつは、確かナンバーズ1であるネイルね。

 古参であり、強さも桁違いだったけど……餌になってもらった。


「お、俺は聖騎士最強の……」


「だからよ。貴方は私の血を濃く持っていたから。フフ、光栄に思いなさい。この私の力になれるのだから——信徒なら本望でしょう?」


「……俺は……」


「それに気づいているのよ——貴方が、密かに背信していることは」


「な、な……」


 この男は、密かに教会を正そうとしていた。

 野心を抑え、ここまで上り詰めたみたい。

 他のナンバーズにも、それとなく掛け合ったりね。


「残念だったわね。教皇はともかく、私には通じないわ」


「や、やはり……女神は……女神ではなかった……邪神めぇ……」


 そう言い、男は沈黙した。


「邪神ネェ……フフ、私は女神よ。でも……この世界にとってはそうではないかもしれないわね。まあいいわ、ようやく……幾千年待ち続け、力を蓄え……ようやく、あの龍神を殺せる力を……いえ、焦ってはいけないわ。仮にも、相手は龍神なのだから」


 ほんとしぶとい龍神ね……上手く封印したのはいいけど、ここまで粘るなんて。

 でも、結果的には悪くないかもしれない。

 あいつはしびれを切らして、分体を作るという強硬手段に出た。

 あの分体を殺せば、あいつの力は弱まる。

 そうすれば……今の私ならいける。


「そして、弱った龍神を私が殺せば……この世界は、私の物になるわ」


 だが、そのためには……力を温存する必要がある。

 弱ったとはいえ、


「元の私の力が戻ってきて、これで五分といったところね」


 確実に勝利を収めるためには、道具である勇者と聖女に役に立ってもらわないと。


 使徒である魔王を殺してもらい、その分体を弱らせる。


 そうすれば私の力は温存できるし、憎っくき分体を殺せる。


 これだけ力が戻れば、もう姿を維持することは簡単だ。


 さあ……ひとまず、魔王の顔でも見に行こうかしら。

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