出来損ない皇子に転生~前世と今世の大切な人達のために最強を目指す~

182話 ひとときの……

　その後、仲間たちの元に戻ると……。

「主人殿！」

「御主人様〜！」

「我が主君よ、無事で何よりです」

「アレス様！ みんな生きてます！」

　そこには傷を負いつつも、五体満足で立っている仲間たちがいた。

　心配していたわけではないが……良かった。

「ああ、よくやってくれた。天使は倒せたか？」

「うむ！ 拙者の剣で一刀両断なのだ！」

「むっ！ 私の撹乱があったからですよー！」

「「むぅ〜！！」」

「わかった、わかった。二人とも、良くやってくれた」

　この二人も今は子供みたいなことを言っているが、戦いにおいてはそうではない。

　やはり、結衣や勇者とは違うだろう。

　勇者は完全に遊びの範疇だったし、結衣は現実を見ていない。

「そっちもか？」

「ええ。手強い敵でしたが、セレナさんがいましたから」

「ううん、そんなことないよ。オルガ君が、敵をわたしの方に来させなかったからだよ」

「……お前たちは大人だなぁ……俺とは違って、本当の意味で」

　アスナやカグラより、この二人は落ち着いているな。

　俺は前世の記憶がある分大人に近いが、それはある意味でズルをしているようなものだ。

　この二人は年齢の割に、精神的に落ち着いている……いやはや、頼りになること。

　お陰で、俺は結衣に集中することができそうだ。

「アレス〜！！」

「おわっ！？ ヒルダ姉さん！ 危ないですよ！」

　気配もなく、後ろから抱きつかれた……なんという技だ。

　信頼している姉さんとはいえ、俺が気配に気づかないなんて。

　……うん？ いや、しかし……それを頼むには危険が伴う。

「どうしたの？ アレが例の女の子なの？ 前世での大切な人？」

「え、ええ……姉上にとっての、俺のような存在です」

「……なるほど、それは大事ね。じゃあ、しっかりしなさい」

「はい、無論です」

　……ほんと、敵わないや。

　俺が少し弱気になってるのに気づいたらしい。

　その後、一度陣地に戻り……エラルド殿と話をする。

「アレス殿、ご無事でなによりです」

「エラルド殿もお疲れ様でした」

「さて……聖女と勇者に関しては貴方にお任せします」

「感謝します」

　エラルド殿の兵士達には、徹底させて頂いた。

　結衣と勇者が出てきたら、俺が相手をすると。

　面倒だろうに、有り難いことだ。

「いえ、お気になさらずに。どっちしろ天使を含めて、アレの相手をするのは兵士には荷が重いでしょう。適材適所というやつです」

「そう言ってくれると助かります」

「ふむ。では、まずは疲れを癒してもらい、起きたらこれからの対応を練ると……」

　その時、天幕の中の外から声が聞こえてくる。

　……どうやら、おちおち寝てもいられないらしい。