180話 覚悟
魔刀ダーインスレイブ、それは神殺しの刀。
迫害を受けていた一族が研鑽を積み、その技術を代々の技師か受け継いできた。
カエラの背中にある暗号を元に、その一族の生き残りが命がけで作成した。
その禍々しい魔力はとてつもなく、気を張っていないと意識が持っていかれそうになる。
その斬れ味、見るものを畏怖させる存在感。
おそらく、ただの人が扱ってイイモノではない。
それでも……こいつは、打ち合えるのか。
「ウォォォォ——!!」
「ハァァァァ——!!」
光り輝く黄金の剣と、黒く染まる漆黒の刀が交差する。
「くそ! 黒い刀とかかっけえじゃんか!」
「そうか。ところで、その剣はなんだ?」
ロングソードタイプの普通の剣に見えるが……。
奴が振るうと、光り輝くように力が増す。
「コレ? 教会に伝わる神剣だとさ。普段は、なんの変哲もない剣だけど、勇者が持つと神剣になるっていうらしいぜ」
「なるほど……」
神の剣と、神を殺す刀か……道理で、互角に渡り合えるわけだ。
いや、むしろ……この刀がなければ、危ないところだった。
「では……行くぞ」
「うおっ!? た、タンマ!?」
相手に隙を与えず、刀を縦横無尽に走らせる!
確かに剣は互角かもしれないが、俺には積み重ねてきた剣技がある!
それは、こんな素人に劣るものではない!
「ちょっと! 私を忘れないでよね!」
「シッ!」
光の矢を、魔剣にて斬り裂く。
しかし、その隙に……距離を取られてしまったようだ。
「あ、あぶねー! 助かった!」
「勝手に死なれても困るだけよ。そいつを殺すのは——私だし」
その目は憎しみに囚われていて、俺の話を聞きそうにはない。
しかし……幸か不幸か、俺の意識はアレスだ。
和馬が強く残っていたら……もっと、辛かっただろうなぁ。
「へへ、でも——俺だって勇者だぜ! 魔王を倒すのは勇者って決まってんだ!」
「魔王を倒すのは私よ!」
「……やれやれ」
高校生くらいだから仕方ないが、現実が見えていない。
受け入れてるようで、その実受け入れてはいなそうだ。
……辛いが、心を鬼にしなくてはいけないか。
俺は下を向いて、小さく息を吸い……。
「ふぅ……」
「どこ見てんだよ!」
迫り来る勇者の剣を——闇を纏った左手で受け止める!
「げげっ!?」
「ここは戦場だ——子供がいる場所ではない!」
空いている右手で魔刀を振るい——腕を切断する!
「ぐ——ぁぁぁァァァァ!? 手がァァァァ!」
「どいてろ」
そのまま、腹に蹴りを入れ、相手を吹き飛ばす。
「な、中村!」
「結衣、もう一度だけ言う——俺の話を聞け」
「いやよ!」
……おじさん、おばさん、申し訳ありません。
この子を説得するのは骨が折れそうです。
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