178話 対面

それからも小競り合いが続き、あっという間に十日が過ぎた。


戦闘が途切れたタイミングで、俺とエラルド殿で話し合いをする。


「状況はどうなってますか?」


「うむ、何やら時間稼ぎをしてるようだ」


「時間稼ぎですか……何のためにでしょう? やはり、聖女や勇者を慣れさせるためですか?」


意識的に、結衣とは言わないようにしている。

結衣を殺すことはあり得ないが、今の俺は魔王で……結衣は聖女なのだから。


「それもあるだろう。しかし、戦力が戦力が乏しいが気になる。帝国の強者たちは、ほとんど味方になっているからともかく、ナンバーズと呼ばれる聖騎士達が少ないのが気になる」


「あのハロルドと同格の聖騎士ですか……確かに、それだけで厄介ですよね」


しかも、サスケ殿の手紙によると……ハロルドはナンバーズの中では、末席に近いという。

必ずしも強さで決まるものではないらしいが、新人であることには違いないと。


「帝国に入ったところまでは確認出来ているのだが……さて、いつ頃やってくるか」


「その時が、勝負になりそうですね」


「ああ、そうかもしれない」






それから、幾日か経ち……戦況が動くことになる。


「アレス殿!」


交代で休憩していた俺とアスナの元に、義兄さんが駆け込んできた。


「どうしたのです?」


「て、天使が現れました!」


「俺が戦った奴ですか……わかりました、すぐに向かいます」


アレを倒せる者は限られている。

兵士に多大な犠牲が出る前に、俺たちで対処しないと。






テントを出て、戦場に向かうと……。


俺の視線には、様々なモノが入ってきた。


「アハはっ! たまんねえぜ!」


「ひひひ! これぁが女神様の力だぁぁぁ」


斧を持ち、体長三メートルを超える巨体の天使と……。

槍を構えた細身の天使がいて、兵士達を蹂躙していた。


「くっ! やらせないのだ!」


「これ以上、好きにはさせません!」


でかい天使をカグラが、細い方をオルガが対応する。

俺が言わなくても、相性の良い方を選んだようだ。


「だとしても、一対一ではきついな。アスナ、お前はカグラを補佐してくれ」


「はいはい、仕方ありませんね〜」


次に、隣に来たセレナに視線を向け……。


「セレナは、オルガを補佐してくれ」


「わかりました!」


皆が、何も言わずに応えてくれる。

……俺の視線の先に、誰がいるかわかっているからだ。


「結衣……来たか」


「気安く話しかけないで。私をそう呼んで良い男性は一人だけなんだから」


そう……魔王と呼ばれる俺の目の前には、聖女と勇者が立ち塞がった。

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