177話 結衣視点

 ……あれが魔王アレス。


 私の大事な人を汚した奴。


「さて、聖女様」


「教皇様……すみません、感情的になって」


「いえ、良いのですよ。無理もございません」


「それより、ナンバーズって方々はどうしたのですか?」


 こっちの国にくるまでは一緒だったのに、いつの間にかいなくなっていた。

 彼らがいれば、そのままあいつを仕留められたかもしれないのに。


「彼らは……女神様の力になっておりますので」


「あっ、そうですよね。まだ完全じゃないので護衛が必要ですもんね」


「ええ、そういうことです」


 正直言って、あの女神様って人の言うことを、全部信じてたわけじゃない。

 でも、今は信じることにする。

 だって……アレは和馬さんじゃない……ううん、和馬さんに似てるけど。

 あんな女の子ばかりといる人じゃないもん。

 和馬さんは、もっと一途で……逞しくて素敵な人だもん。


「なあ、負けちまったけどいいのか?」


「ええ、問題ありませんよ。敵戦力の把握と、お二人に戦場の空気に慣れてもらうためでしたから」


「でも、そのために人が……」


 女神の加護?かわからないけど、そのおかげで吐くようなことはない。

 でも、気分が悪いことに変わりはないし。


「ほほ、聖女様は優しい方ですな。しかし、彼らは信徒ですから。栄誉こそあれ、可哀想などと言ってはいけない。それこそ、彼らが可哀想ですから」


「そ、そうですか……」


「まあ、何処の世界も一緒ってことか。まあ、別にいいじゃん。あれが魔王ね……女を侍らせて気にくわないし、さっさと戦いてえな」


「……ムカつくけど同意するわ」


 なんか、あいつ見てると……イライラするから。

 偽物のくせに、私を心配するような目をして……。


「それは僥倖ですな。では、次は戦場にて合間見えるように手配致します」


「はい、よろしくお願いします」


「うしっ! レベル上げの次は中ボスだな!」


「どういうことよ?」


「あん? だって、ラスボスは邪神だろ? その使徒ってことは、中ボスだろ? さっさと片付けようぜ」


「ゲームの世界じゃないんだから……」


「わかってるさ」


「はぁ……ほんと、脳天気な奴」


「だって、死なないって説明されたじゃん。女神の加護だっけ?」


「即死じゃない限り、死ぬことはないって説明されただけよ」


「俺たちの身体丈夫だし、即死はありえないだろ」


「ほほ。ええ、勇者様の仰る通りです。そのために、女神様に代わり、ここに私がいるのですから」


 ……それでも、死なないわけじゃない。


 怖い……でも、和馬さんを解放してあげないと……。


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