171話 事態は動き出す

それから数週間後、事態は動き出す。


姉さんの部屋で過ごしていたところ、呼び出しがかかり……。


俺とオルガ、カグラにセレナとアスナで、エラルド殿の部屋に入る。


「たった今、報告が入った。教会と皇国の合併軍が、我が領地に迫っていると」


「いよいよですか。最近魔物の数が減ったことにより、信者が増えてきましたからね」


女神が現れて以降、魔物の数が減っているらしい。

それを教皇やターレス達が、女神のおかげだと触れ回っていると。

そのせいで、今までは訝しんでいた人達も、それに同調し始めていると。


「うむ。それに、女神の加護を受けぬ者達のところには魔物が多数出現するそうだ」


「特にブリューナグ家やグロリア王国ですね……」


「お父様から手紙が届いたのだ。すまないが、助けに行ける余裕がないと……」


「カグラ、気にすることはない。魔物がこっちに来ないように抑えてくれるだけ助かるさ」


そのおかげで、こちらは敵の軍だけに専念できる。

戦いの最中に魔物まで出てきたら、たまったものではない。


「そもそも、おかしくないですかー?」


「うん? アスナ、何が気になった?」


「魔物は邪神が生み出すんですよね? どうして……


「……たしかに」


「確かにおかしいです。邪神の味方をすると見なされてる土地を襲うのも変ですし」


「むぅ……拙者は難しい話はわからないのだ」


「はは……君は相変わらずだね。まあ、僕もだけど」


「もう、二人ったら」


「仕方ないですねー。セレナさん、向こうで少し話しません?」


「うん、良いよ。じゃあ、アレス様……」


「ああ、すまないが考察を頼む。後で、俺に聞かせてくれ」


「はい、わかりました」


「ではでは〜」


そう言い、二人は端っこの方に向かう。

我がパーティーのブレーンはセレナとアスナだ。

柔軟な思考と、それに対応する力を持っている。

戦いのメインはオルガとカグラ……我ながら、良い仲間に出会えたな。


「それで、来るまでの時間はどのくらいですか?」


「大体、二日後には我が領地に到着する予定だ」


「なるほど。では、明日にでもこちらから出向いた方が良さそうですね」


「うむ、我が領地からも用意していた軍を派遣する。裏切ることのない、古くからいる家臣たちだ」


「ありがとうございます。指揮官はどなたに?」


「もちろん、私だ。かの者たちは、私以外……当主以外には従わないからな」


「ですが、危険では?」


「問題ない。我が息子は立派になった。孫もできた……孫とは不思議なものだ。あの子に、辛い役目を負わせたくない自分がいる。我が家は厳しい家だ。兄弟間で争い、使えない者は処分される運命だ」


「エラルド殿……」


「この機会に——私の代で終わらせる。アレス殿、お力を貸して頂きたい」


「もちろんです。共に、この歪んだ世界を変えてみせましょう」


そうだ、俺も最初から想いは変わっていない。


大切な人たちのために——この世界を変えてみせる!

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