167話 嫌な予感
それから、一週間後……。
連携の確認や、個々の鍛錬をしつつ、いつでも戦える準備を進めていると……。
皆で、エラルド殿に呼び出された。
「魔物の出現率が上がっているのですか?」
「うむ、そういうことらしい。これも魔王のせいだと言い回っておるわ。そして、邪神の化身である黒いドラゴンを復活させた者としてもな」
「なるほど……人々の不安をあおぎ、女神や教会に助けを求めるように仕向けているのかもしれませんね」
「やはり、お主もそう思うか」
「ええ、タイミングが良すぎます。何より、俺たちは何もしてませんし。もちろん、知らず識らずのうちに影響を与えてることも考えられますが……どうにも、きな臭い感じがしますね」
「うむ、真実を知っている者からすると変わってくるものだ。そして、サスケ殿から手紙が届いた」
手紙を受け取り、まずは中身を確認する。
「なになに……なんだって!?」
「……どうしたのだ?」
「い、いえ……すみません、少し動揺してしまいました」
「ふむ……見せてもらっても良いか?」
「え、ええ、構いません。すみません……少し失礼します」
「アレス様?」
「主人殿!?」
「御主人様〜?」
皆の声を無視して、俺は足早に部屋から出る。
気がつけば、俺は屋敷の外に出て、街が見える丘に来ていた。
「……そんなわけがない。これはただの偶然に過ぎない」
そうだ、何を動揺している?
そんなことはあり得ない。
「しかし……」
サスケ殿の手紙には、召喚された者の特徴が書かれていた。
召喚されたのは男女で、年の頃は成人程度。
両方とも整った容姿に、学生服という不可思議な服を着ていたこと。
言葉の端々に、わからない単語があったこと。
それは……日本という単語。
「そして、召喚された女性の名は……結衣と名乗ったと」
結衣なんて、割とありふれた名前だ。
学生服を着ている結衣なんて名前、いくらでもいるだろう。
なのに……この予感はなんだ?
もしや……たまに見るあの夢が関係しているのか?
◇
……いない! どこにも!
「あなた!」
「くそっ! どうして見つからない!」
「電話も繋がらないわ!」
「何が起きている!?」
昨日から結衣が帰ってこない!
学校から連絡はあった。
きちんと授業を受けて、放課後帰って行ったと。
「中村君もいないって連絡が来たけど……」
「向こうは駆け落ちかもしれないって言ってたな。しかし、それはない。結衣は……まだ和馬のことを忘れていない」
「中村君が連れてってしまったのかしら……私が余計なことを言わなければ……! 和馬さんのことを忘れて、同い年の男の子とか見てみたらって……」
「……いや、君は悪くないさ。とりあえず、警察からの連絡を待とう」
和馬……天国にいるお前に頼むのは筋違いかもしれない。
それでも頼む!
どうか結衣を守ってくれ!
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