166話 心強い味方たち

 それから数日後……。


 様々な連絡が届く。


「そうか……味方になってくれたか」


「父上! みんな……感謝するのだ」


「これもカグラのおかげだ。ありがとう、君がいてくれて良かった」


「は、はぃ……えへへ」


 ブリューナグ家全体が味方についてくれたことは大きい。

 これで、奴らも動きづらくなるはず。


「しかし、心配でもある。後で書くので、手紙を送ってくれますか?」


「うむ、手配しよう」


 彼らには牽制に専念してもらおう。

 なにせ、魔の森から出てくる魔物を倒すが彼らの仕事だ。

 その邪魔だけはしてはならない。


「私にもコルン様から手紙が届きました!」


「ああ、これもセレナのおかげだ」


「わ、私は……アレス様にしてもらったことを返してるだけですから」


 ほとんどの者達が、女神を熱狂的に歓迎したらしい。

 しかし、一部の官僚や民達が、それに恭順の姿勢を取らなかったと。

 それはセレナに救われた方々で、そのセレナが信じる俺を信じてくれるということだ。





「我が家からも手紙が届きました。どうやら、姉上が帰ってきたそうです。ノスタルジアの人々から信望を集めていたそうで……彼らが教会本国から、アラドヴァル家を守ってくださるそうです」


「それは朗報だ。俺のせいで、お世話になった方々に迷惑をかけるのは忍びない」


「いえ、平気ですよ。我らはアレス様から受けた恩を返す時がきたと喜んでいましたから」


「いや、大したことはしていない」


「そんなことありませんよ。魔物が出る道の流通整備や、物資の供給などを進言なさってくださいました。お陰で、我が領地も何とか立て直すことができたのですから」


「しかし、それは父上の功績だ」


「貴方は相変わらずですね。いえ、だからこそ……僕は、貴方に仕えるのです」


 ……嫡男であるオルガを引き込んでしまい、申し訳ないと思う。

 しかし、助かったことも事実だ。

 ここは、素直に甘えさせてもらおう。

 そして、いつか……この恩は、必ず返す。


「お兄様からも来たのじゃ! 我が国は、師匠の味方をすると!」


「ロナード……そうか、有り難いことだ」


「我が国も師匠に受けた恩を忘れていないのじゃ! きちんと民に説明をして、理解を得られたと書いてある!」


「では、俺からも手紙を送ろう。無理だけはするなと」


 地盤を固めたとはいえ、まだまだ安定はしていないはず。

 俺のせいで、再び国が混乱したら……それだけはダメだ。


「でも……」


「レナ、大丈夫だ。敵に回らないだけでも充分に助かる」


「そうですな。後方の守りを気にしなくていいのは助かる」


「その通りです。東側から北にかけてはブリューナグ家、南側にグロリア王国、北西にはアラドヴァル家がいてくれる。これで、帝国本国と西からくる教会のみに集中することができる」


 それならば、対処のしようがある。

 本当に……今までやってきた良かった。

 俺が過ごした時間は、無駄ではなかった。


「父上から手紙も来ましたしね〜」


「おいおい、さっきまで泣いていたくせに」


「な、泣いてませんし!」


 そう言うアスナの目は腫れている。

 なんだかんだで、父親のことが心配だったのだろう。


「そういうアレスだって泣きそうだったわよ? ねっ、エリカ?」


「うんっ! でも、私も嬉しい!」


「ふ、二人とも……まあ、嬉しいけどね」


 サスケ殿から、カイゼルも生きていると報告があった。

 今は、俺が万が一を考え伝えておいたことを実行していると。



 すると……黙っていたヒルダ姉さんが前に出る。


「話はまとまったわね!」


「ええ、そうですね」


「この後はどうするの?」


「サスケ殿手紙には女神、そして聖女と勇者を調べると書いてありました。それまでは待機ですかね。その間に戦力確認や、防備の強化について話し合うと思います」


 オルガと会うのも久々だし、連携なども再確認しないといけない。

 あと、クロスについても考えないと。


「私は何をすればいいの!?」


「姉上はじっとしててくださいよ。もうすぐ生まれるのですから」


「いやよ!」


「義兄さん、連れてってください」


「そうするよ。ヒルダ、行くよ」


「ちょっ!? 待ちなさいよ!」


 流石に妊婦さんなので、義兄さんを振り払えないらしい。


 姉さんは、義兄さんに連れられ……部屋を出て行く。


 そうだ……新しい命のためにも。


 信頼する仲間達と——この困難を乗り越えてみせる!

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