164話 状況整理

翌日の朝……。


「むにゃ……えへへ」


「あらまあ……妊婦さんとは思えない顔つきな事」


隣で眠るヒルダ姉さんの顔は、だらしなくなっていた。

まるで、少女のような。


「ヒルダ姉さん、起きてください」


「ううん……あれ? アレス? もう、仕方ないわね、いつまでも甘えん坊なんだから……」


「ちょっ!? くっつかないでください!」


妊婦さんだから、力づくで振り払うわけにもいかない!


「主人殿〜楽しそうですね?」


いつの間か、ベットの横にアスナが立っていた。


「いつの間に……いや、なんとかしてくれ!」


「ハイハイ、わかりましたよー。ほんと、この方には弱いんですね?」


そう言い、姉さんを俺から引き剥がす。


「むにやぁ……」


「……否定はできない。俺の恩人だからな」


「少し嫉妬しちゃいますよねー?」


その視線の先には……カグラとセレナがいた。


「いや、拙者はなんとも。というか……なぁ?」


「そうだよね、私達は慣れてるし」


「なるほど、そうでしたね〜」






その後、姉上が起きて……。


食事をした後、全員集まって今後について話し合うことになる。


「私とアレス様で、話を進めさせてもらおう」


「はい、それでお願いします」


先程説得して、何とか敬語を使わないようにしてもらった。

今の俺は反逆者扱いだし、何より使用人達がいちいち驚くから面倒だ。

多分、敬語を使うような人ではないのだろうな。


「ふむ。先程、アスカロン帝国と教会より連盟で通達があった。邪神の使徒、魔王アレスを引き渡せと」


「そうですか……それは皇帝からですか?」


「いや、正確には……女神と名乗るヘイゼル皇子からだ。私の手の者の情報によれば、ラグナ殿は生きているが……身動きが取れない状態らしい。護衛についているのはゼトとコルンという者だそうだ」


「よ、良かったぁ……!」


「お母様!」


その言葉に、母上とエリカが抱き合う。

そうか……生きててくれたか。

あの二人が付いているなら一安心だ。


「ライル兄上はどうしていますか?」


「どうやら、暫定的に皇帝になったらしい。しかし、ターレスや大臣達には勝てまい」


ゼトさんやコルンさんは、父上の護衛で動けないか。

そうなると、兄上には味方が少ない。

本来なら、こんな時のために俺がいたのだが……。


「何より、女神を名乗るモノがいるのが大きいですね」


「うむ、大義名分がある。もちろん、偽りのな」


「では、どうすれば良いか……味方を増やすしかないですね」


「うむ、そうなる。我が家だけでは抑えることは不可能だ。故に、今日まで耐え忍んできた」


オルガの実家は動けない。

位置的にアスカロンを通らないといけないし、領地を守るのに精一杯だろう。


ブリューナグ家は、どうだろうか?


当主はともかく、民が味方してくれるかどうか……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る