162話 同盟?

 その後、話を続ける。


「さて息子よ、聞いてたな?」


「はい、父上。しかとこの耳に」


「もし私に何かあれば、この口伝を次代にお前が繋げろ。無論、私の代で終わらせることができればいいがな」


「俺としては終わらせたいですね。なにせ、そうしないと……俺に待っているのは死ですから。何より、俺の大事な人たちまで死なせるわけにはいかない」


「そうよっ! お義父様! ここで終わらすのよっ!」


「ええ、父上。こうして味方が揃ったのも偶然には思えません。きっと、今がその時なのだと思います」


「……そうだな。次のことを考えていては決意も鈍るか……では、まずは確認がしたい」


「何をですか?」


「闇魔法と龍神様だ」


「龍神様?」


「先程はわかりやすくドラゴンといったが、魔界に封印されている方は龍神と呼ばれる存在だと伝わっている。元々、我が家の守り神にして主人だと。そして、その使徒が魔王と呼ばれる」


「なるほど……では——影よ、我の中にいる者を顕現せよ」


 俺が唱えると……小さいドラゴンが現れる。


「キュア! (呼んだ!?)」


「ああ、クロス。この人がお前に会いたかったそうだ」


「キュー?(そうなの?)」


「おおっ……! まさしく伝承通りの姿だ! 漆黒の鱗、四肢があり、長い尻尾に立派な翼……守り神そのものです」


「キュー……(よくわからない……)」


「アレス様、龍神様はなんと申しているのだ?」


「へっ? アレス様?」


 どうした? いきなり腰が低くなったけど。


「これは失礼しました。つい先程までも疑っていたわけではないのですが……やはり、こうして実物を見た以上、貴方と龍神様には敬意を払わなくてはなりません」


「ち、父上が頭を下げるなんて……」


「ふふ、アレスはすごいのよ!」


「おふたりとも……エラルド殿、普通でいいですよ」


「むっ……そういうわけにはいきませんな。ところで、先ほどの質問に答えてもらってもよろしいか?」


「はぁ……俺も詳しくはわからないのですが、どうやらクロスには詳しい記憶がないらしいのです。この子を預けた者らしきからは、この子は我が分身だとか……その者が、もしかしたら龍神と呼ばれる存在かもしれません」


「キュー!(よくわかんない!)」


「なるほど、そういうことですか。ですが、間違いなさそうですね。そして、それこそが貴方が魔王だという証です」


「とりあえずは、こんなところですかね。クロス、戻っていいよ」


「キュー!(うん!)」


 クロスが、再び影の中に入る。


「顕現していると力を消費するみたいです。なので、普段は俺の魔力で補充をしつつ、影の中にいる状態ですね。そして、ある程度自由に体の大きさを変えることも可能だと」


「ふむ、万能ではないということですな。だからこそ、我ら一族に伝わっているのでしょう。もし現れたのなら、その手助けをしろと。先程は偉そうに言いましたが、こちらから協力させてくださいませ」


「いえ、そんなことはありませんよ。こちらこそ、よろしくお願いします」


「はい。では、ひとまずはお休みくださいませ。明日以降、お仲間も含めて話し合いをするとしましょう」


「助かります。皆、疲れていますので」


 これで、ひとまずは安心して過ごすことができそうだ。

 俺たちはともかく、エリカや母上、レナには安全な場所にいてもらわないと。


「アレス! 一緒に寝るわよっ!」


「はい!? ダメですよ!」


「アレス殿、妻のお願いを叶えてもらっていいですか?」


「ちょっ!?」


「私からもお願いする。ずっと、貴方の話ばかりを聞かされていたもので……」


「はぁ……それはすみません。姉上、今日だけですからね?」


「うんっ! 大丈夫よ! お嫁さん達には許可取るから!」


 俺はその日、姉さんと手を繋いで、眠りにつくのだった。


少し嬉しかったのは……みんなに内緒だ。

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