最終章

158話 八方塞がり

あのあと、あまりの出来事に、俺たちは途方に暮れていたが……。


カグラが、俺の肩に触れ……。


「主人殿、我が領地に行くのだ」


「ブリューナグ領に? しかし、迷惑をかけるのでは……」


「父上から言われていたのだ。万が一の時は、我が家を頼ってほしいと。アレス様は気を使うだろうから、お前が責任持って連れて来なさいと」


……その光景が浮かんでくる。

あの方なら、そういうだろうな。


「しかし、領民は? 俺はおそらく……この世界の敵となった」


「問題ないのだ! 皆、アレス様を信じてくれるのだ!」


……カグラはそう言うが、人とはそんなに優しくはない。

もちろん、俺を信じてくれる人もいるだろう。

しかし、そうでないものも必ずいる。

誰だって自分に災いが降りかかるのは嫌だからだ。

それは当然のことで、それを責めるのはお門違いだろう。


「いや、やめておこう。カグラには悪いが、全ての人がそう思うわけではない」


「うっ……それは……」


「もし俺のせいで、ブリューナグ領で争いになったら……俺は後悔しきれない」


あれだけお世話になっていて、今現在も味方でいようとしてくれるブリューナグ家を巻き込みたくはない。ただでさえ、こうして愛娘を巻き込んでしまっているのに。


「で、では! どうするのだ!?」


「カグラちゃん、落ち着いて」


「セレナ、でも……」


「みんなで考えてみよ? ねっ?」


「……うん」


「セレナの言う通りだ。何も、お前一人で背負い込むことはない」


そして、タイミングを見計らっていたのか……。


「さて、どうしますかねー? オルガ君のところはどうですか?」


「厳しいかと思います。申し訳ないですが……我が領地には、そこまでの力はありません。もちろん、行けば力になってくれるとは思いますが……」


「アラヴァルド家は充分にやってくれた。この魔剣然り、嫡男を俺のために……これ以上、迷惑はかけられん」


「お、お兄様は!?」


「レナ……それは難しい。ロナード王も、自分の地盤固めで精一杯だろう。ここで、我々を匿えば……積み上げて来た地盤そのものが崩れかねない」


レナは黙り、エリカは歯を食いしばっている。

そして、カエラや母上は静かに見守っている。

どうする? 教会は論外、ノスタルジアもだ。

ブリューナグ家やアラヴァルド家が駄目となると……。


「……一か八か、あそこに行くしかないか」


俺はみんなに提案したあと……。


「よし、クロス。ここから南に向かってくれ」


「キュアー!(わかった!)」


クロスに指示をし、とある場所に向かうのだった。


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