159話 再会

 飛び続けること、数時間後……。


「見えてきたか……クロス、ここで降ろしてくれ。敵意がないことを知らせたい」


「キュアー!(わかったよ! 丁度良かった。僕も、体力が限界に近かったから)」


「どういうことだ?」


「キュア(この姿で顕現するには世界に負担をかけちゃうんだ。それもあって、パパの中で隠れてたんだ。だから、普段はいつも通りに影の中にいるね)」


「なるほど……いつでも顕現できるわけじゃないってことか。わかった……では、どうしても力が必要な時は頼む」


「キュア!(うんっ! 任せてよ!)」





 その後、皆に説明をし……地上に降りる。


 そして、影にクロスを仕舞い……。


「さて、行くとするか」


「御主人様……相手はどう出ますかね?」


「わからない……が、俺の推測が正しければ……」


 女神復活、邪神、聖女、魔王……。

 教会、帝国、王国……彼らの言う本来の支配者……。

 この世界は誰かによって

 それが教会だとしたら……そして、我が国に女神を宿す神器がある意味……。

 これらを繋ぎ合わせると……そういうことなのかもしれない。







 疲れて眠るエリカとレナを抱きつつ、歩き続けると……。


「主人殿! 馬が近づいてくるのだ!」


「ああ、そのようだ。皆、武器を構えるな。敵対しない意志を示す方向で。オルガ、万が一に備えて母上たちと後ろの方へ。アスナ、君は辺りの警戒を」


「御意」


「はーい!」


 エリカとレナを母上とカエラに預け、護衛をオルガに任せ……。

 カグラとセレナを伴い、近づいてくる馬に接近していく。


「さて、誰が来る……って——ええぇ!?」


「アレスゥゥ——!!」


「あ、姉上ぇぇ!?」


 駆けてくる馬に乗っているのは、紛れもなくヒルダ姉さんその人だった!


「やっぱり! 黒いドラゴンでピンときたわ! 久しぶりねっ!」


「ちょっ!?」


 馬から飛び降りてくる姉さんを優しく受け止める。


「えへへ! アレスの匂いだわ!」


「あ、危ないじゃないですか! もうそんなにお腹大きいのに!」


 おそらく、もうそろそろ生まれてもおかしくないはず。

 子供ができたと報告があってから半年は経っているのだから。


「良いじゃない! 久々の再会だもの! もう、すっかり大人になったわね」


「まあ、もうすぐ成人を迎えますからね」


「あのアレスが成人かぁ……私が子供を産むくらいだものね」


「ええ、本当に。姉上、楽しい話は尽きないのですが……とりあえず、真面目な話をしてもいいですか?」


「仕方ないわね。でも、その前に全員に挨拶させてちょうだいね」


「ええ、それくらいなら。みんなも喜ぶでしょう」


 俺は姉上を降ろして、二人に視線を向ける。


「久しぶりね、二人とも」


「「ヒルダ義姉様、お久しぶりでございます」」


「あら、立派なご挨拶が出来るようになったわね。それに、綺麗になったわ。きちんとアレスに愛してもらってるの?」


「「ふえっ!?」」


「あら、その顔はまだってことね。この子ったら、意外と奥手なのね」


「「あぅぅ……」」


 二人は仲良く同じような反応をする。


「姉上……勘弁してください。というか、まだ結婚もしてませんから」


「それもそうね。さて、じゃあ……あっちにも行こうかしら」


「ええ、うずうずしてる妹が待ってますよ」


 後ろを見れば、エリカが我慢しているのが目に入る。

 おそらく、邪魔をしてはいけないと思い、俺の言いつけを守っているのだろう。

 俺は姉上の手を引いて、母上たちの元に行く。


「エリナ様、お久しぶりでございます」


「あらら、すっかり大人になって……あのお転婆だったヒルダちゃんが……あの人にも見せてあげたかったわ」


「それは、どういう……」


「姉上、それは後で。今は、ただ再会を喜びましょう。エリカ、いいぞ。ただし、姉上は身籠っているゆえ、優しくな」


 俺の言葉を受けて……エリカが飛び出す!


「ヒルダお姉ちゃん!」


「エリカ! 大きくなったわね! ステキなレディに近づいたわ!」


「ほんと!? お姉ちゃんにみたいになれる!?」


「ええ、もちろんよ。貴女なら、私なんかより、綺麗で立派なレディになれるわよ」


「えへへ……」


 エリカにとっても、ヒルダ姉さんは特別な存在だ。


 我が家系にて、女の子は二人だけだからな。


 二人が抱き合う光景を見て、先行きが不安だった心が晴れていく。


 今はただ、この再会を喜ぶとしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る