外伝~皇帝~

~皇帝視点~



……どうなった?


クソ……身体が重い。


俺の体はどうなってる?


「へ、陛下!?」


「父上!」


「静かに! 病人の前です!」


……この声は、ライルにゼト、そしてコルンか。


「ラ、ライル」


「はっ、ここに」


「よかった、無事で……」


「ち、父上……」


「すまん、手を握ってもらえるか? あまり、目が見えん」


「は、はいっ!」


手に暖かな感触がある……よかった、まだ感触は残っているか。


「ライル……略式だが、お前に皇位を継承する。これが、その証だ……二人とも、証人となってくれ」


「「畏まりました」」


「へっ? お、俺がですか……? まだ、心の準備が……」


俺はライルの手に、玉璽を渡す。


「気をしっかり持て。お前なら、立派な皇帝になれるはずだ……俺なんかよりよほどな。何より、今のヘイゼルはおかしい。や、奴に逆らうな……今は傀儡でも良い……耐え忍べ……いずれ、また逆転のチャンスはくる……」


「は、はい……!」


「アレスの扱いは……皇族とは関係ないと発表しろ。そして、俺とエリナを貶めて良い……お前はそれによって、皇位を継承することを決めたと言え。そうすれば、お前を叩く奴はいない……幸い、お前とアレスの関係はよくは見えていない」


「よ、宜しいのですか?」


「あ、ああ……もしもの時は、そうしてくれと……アレスに頼まれていた……自分のせいで、皇族そのものが批判されないようにと……国が割れては意味がないと……」


「あいつが……本当に、皇帝になるつもりがなかったのか……闇魔法を使えるのはなぜですか? 父上は知っていたのですか?」


「俺は知っていた……使える理由はわからん。だが、あいつが邪悪な者とは思えない。なにか……ゴホッ!ゴホッ!」


「ち、父上!」


「へ、平気だ……何とか、生き抜いてみせる……でないと、アレスに笑われてしまう……ゼト、コルン」


「「はっ!」」


「俺に代わり、ライルを補佐してくれ……できることなら、俺が最後まで責任をとりたいが……身体は思うように動かないし……もう、あまり目が見えん。これでは、まともな指揮はできまい」


今も身体を動かそうとしたり、視線を集中させてるが……。

身体は震えるだけで反応しないし、視界がぼやけている。

いや……生きているだけマシだと思わなくてはな。


「……父上、後のことはお任せを。何とか、立ち回ってみせましょう」


「……立派な顔つきになりおって……だが、無理はするな。おそらく、ターレスが黙っていまい」


「……はい」


「お主にとっては辛いかもしれないが……」


「いえ、俺にとっては……あいつは敵です。そ、それに……父上がいますから」


……ああ、俺は良い息子を持った。


それに気づくのが遅すぎたか……。


アレスもすまない……結局、何もしてやれなんだ。


無力な父を許してくれ。


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