153話 迎撃

話が終わってすぐに……。


「主人様!」


サスケ殿の焦った声が聞こえてくる。


「全員! 戦闘態勢に入れ! カイゼル! 母上達を任せた!」

「御意!」


皆が、素早く行動を開始する!


「しかし……武器がない」


すると……。


「みんなは先に行ってください! アレス様! これを!」


全員が頷き、俺を置いて駆け出す。

そしてカエラが、布に包まれた何かを持ってくる。


「カエラ?」

「私の背中にあった暗号を元に作成した刀ですっ! 父が目指した——神を殺す刀です!」

「これか……禍々しい気配を放っているが……」


その布からは、何か得体の知れない気配がする。


「は、はい……実は、これを作った人……死んでしまいました」


「……なに?」


「正確には、これを完成させた時に狂ってしまって……だから暗号にあった材料で、この魔力を抑える布を作って……」


「……今使うのは危険な気がする。とりあえず、そのまま持っていてくれ」


「わかりました。では、ここでお待ちしてます」


俺は頷き、戦場へと向かう。


大丈夫だ! 俺には魔法がある!





家の前では、再び戦いが始まっていた。


「いたぞ! 邪神の使徒だ!」

「殺せ! 殺せ!」


……俺のことか。


敵意が、完全に俺に向いているしな。


邪神の使徒か……闇魔法を使えることが原因か。


「ならば……遠慮することはないか」


俺に向かってくるなら都合がいい。


「影より生まれし闇よ! 敵を貫け——スティングシェイド!」

「なにをした——ぐはっ!?」

「な! なんだ!? ゴフッ!?」

「せ、背中からだと!?」

「ち、違う! 影からだっ!」


この魔法は、指定した範囲の敵の影から闇の槍を出現させる闇魔法だ。

しかし……やはり聖騎士には効きづらいか。

普通の鎧を着ている兵士はともかく、銀の鎧を着ている奴らは倒れていない。


「何より……魔力がもとない」

「いけぇぇ! 奴らのが数が少ない! いずれ限界はくる!」


……その通りだ。


どうする? 考えろ……カグラはともかく、カイゼルには疲れが見え始めている。


セレナとて、魔力は無限ではない。


ましてや、俺は病み上がりな上に、さっきの一件で魔力を消費している。


その時……俺の全身が警報を発する。


「これは……! 全員! 俺の周りに! 早く! カイゼル! サスケ殿!」

「「御意!」」

「きゃっ!?」

「わわっ!?」

「ひゃぁ!?」


母上達をカイゼルが抱え、サスケ殿がエリカとレナを抱えてくれた。

相変わらず頼りになる御仁達だ。


「どうしたのだ!?」

「アレス様?」

「御主人様あれですか!?

「そうだ! ……くる! 全員! 気合いを入れろ!」


教会の騎士達は、何やら怪訝な顔をしているが……。


「ヒャヒャ! 奴ら固まったぞ!」

「いけぇ! ころせぇ!」


……今度こそ——守り抜いてみせる!


「ハァァァァ——!!」


俺が闇のオーラを展開した瞬間——目の前が光に包まれる!


「ぎゃァァァ!?」

「ァァァ!?」

「溶けるぅぅ……!?」


教会騎士どもが、消滅していく……!

直接くらったら、ああなるってことか……。

俺の大切な人達を、あんな目にあせるわけにはいかない!


「全員動くなよ!」


あの時とは違う! 今回は来るのがわかったからな!


「……セァ!」


両手を広げて、闇のオーラで光を打ち消す!


「ふぅ……酷い有様だな。カイゼル、サスケ殿」

「平気です。最初から後ろを向かせております」

「こちらもです」

「助かる……あまり見せて良いものではない」


目の前には、身体がぐちゃぐちゃになった人間達がいるが……。

それを、母上やエリカ達に見せないようにしてくれてたらしい。


「そして……来たか」

「あ、あれは……ヘイゼル皇子ですか?」

「どういうことなのだ? しかも、あの槍は……」

「あちゃ〜ここまで追ってきたってことですかね?」


アスナの言う通り……その視線は俺に向けられていた。


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