152話 合流
喧騒の中、どうにか家の近くにきたが……。
「御主人様! 戦ってますよ!」
「ああ……! 」
激しい金属音が、ここまで聞こえてくる。
そのまま近づいて行くと……見知った気配が俺たちの側に降り立つ。
「主人様、ご無事でなによりです。アスナも、よくぞここまで主人様を連れてきたな」
「お父様!」
「サスケ殿……状況は?」
すると……渋い顔を見せる。
「……ただ今、屋敷が襲われています」
「なに? ……誰にだ?」
「教会の騎士と、おそらくターレスの私兵かと思われます」
「理由は?」
「主人様が神敵だと。闇魔法を駆使する邪神の使いだと言っております」
……すでに、バレていたか。
そして、今まで静かだと思っていたが……このタイミングでか。
いや、この時を狙っていた?
奴らは、こうなるとわかっていた?
どうしてだ? ……いや、今は良い。
「戦況は?」
「カイゼル殿とカグラ様が前衛、後衛でセレナ様が応戦しております。そして、私の兵士は護衛に専念している状態です」
「なるほど……くっ」
「は、早く治療しないと……!」
ちっ……目眩が……しかし、そいつらを一度退かさないと。
「アスナ、身体を支えてくれ。サスケ殿、俺が倒れたら運んでください」
「りょ、了解です!」
「御意」
そのまま闇のマントを羽織りつつ、俺たちは後ろの方に回り込み……。
「セィァァ!」
「ハァァァァ!」
「つ、つえぇ! くそっ! ハロルドの兄貴はまだか!?」
アレは……確か、ハロルドと一緒にいた聖騎士か。
なるほど、ハロルドが俺を……あいつが別働隊というわけか。
だが、カグラの予想外の強さに戸惑っている様子だ。
「流石はカグラとカイゼルだ」
「聖騎士を相手に一歩もひいていませんね」
二人で家の入り口を陣取り、多数の騎士を相手にしている。
それでも、一人も通した様子はない。
「だが、あのままではいずれ……いくぞ」
「はい、あとはお任せを」
「ふぅ……ファイアーウォール!」
カグラとカイゼルの目の前に、炎の壁を出現させる!
それが、二人に向かおうとした敵を焼き尽くす!
「ギヤァァァ!?」
「ど、どこからだ!?」
「こ、この炎は! ハロルドの兄貴がしくじったか!?」
よし! 今のうちに!
俺が声をかけようとしたが……。
「カグラ様!」
「はいっ!」
二人が一斉に攻勢に打って出る!
「行きます! エアプレッシャー!」
さらに、セレナが追い打ちをかける!
ほんと……頼りになる仲間たちだ。
俺がなにも言わなくても合わせてくれるとは……。
「くそっ! 一度ひけ!」
そして襲撃者たちが、次々と後退していく……。
「みな……無事か?」
「あ、主人殿!」
「アレス様! すぐに治します!」
駆け寄ってきたセレナに、俺は回復魔法をかけてもらいつつ……。
「ありがとう、セレナ。そして、カグラ。よくぞ、俺の家族を守ってくれた……」
「当たり前なのだっ! 拙者にとっても家族ですから!」
「そうですよー!」
「……素敵な婚約者がいて、俺は幸せ者だな」
「「はぅ!?」」
照れる様は可愛いので堪能したいが……今は、それどころではないな。
「カイゼル」
「ここに、我が主人よ」
「状況を説明してくれ」
「御意」
そして、傷を癒しつつ説明を受ける。
要約すると……。
俺が出発したあと、カエラとオルガがやってきて……。
カイゼルと庭で稽古をしている時に、学校方面から爆発音が聞こえてきたと。
カイゼルとオルガは顔を見合わせ、すぐに判断し……。
オルガは俺の元に、カイゼルは他の者達と状況確認をした。
そして、その直後に……見知らぬ騎士達が襲ってきたというわけだ。
「わかった……カイゼル、感謝する」
「いえ。それより、なにがあったので?」
「どうせなら、母上達にも聞かせないといけない」
「では、庭に集めましょう」
「ああ、頼む」
……少し辛いが、父上のことも。
そして、カエラとの感動の再会を果たす間も無く……。
俺がわかる範囲の出来事を説明する。
「そ、そんな……ラグナが」
「お父様……」
「二人とも、大丈夫だ。父上は必ず生き残ると言っていた。そして、俺に母上とエリカを頼むと。だから、まずは自分達が生き残ることを考えよう」
二人が顔を見合わせ頷くのを確認し……。
「カエラ、帰ってきて早々すまない。オルガも無事だと良いのだが……」
「いいえ、アレス様。こうして会えましたから。オルガ君なら平気ですよ。こういう時のために、今まで頑張ってきたんです」
すっかり大人っぽくなったカエラは、強い意志のある瞳で俺に答える。
オルガといい、カエラといい……みんな、成長してるな。
「セレナ達の両親はどうしてる?」
「それが、たまたまなんですけど……」
「拙者の家であるブリューナグの家臣達と一緒に、領地に向かっているのだ」
「ん? どうしてだ?」
軽く話しを聞くと……。
今商談している相手が、たまたまブリューナク家だったらしい。
そして、お互いの婚約者の親同士会ったことがないので……。
良い機会だから商談をしつつ、一度お会いするということになったと。
「なるほど、それは運が良かった。ブリューナク家なら安心だ」
「言い方は悪いですが、これで守りを気にすることが御座いません」
「おい、カイゼル……」
「アレス様、良いんです。カイゼルさんのいう通りです。カグラちゃんの家族なら安心して任せられます」
「そうなのだっ!」
俺は、ここである少女に視線を向ける。
「レナ、心配かけてすまない」
「師匠……! 良かったのじゃ〜!」
ずっと我慢していたのだろう……俺に抱きついてくる。
「安心しろ。必ず、ロナードの元に帰すから」
「グスッ……そ、それには及ばないのじゃ!」
「ん? どういう意味だ?」
「ここに来る前、お兄様が言ってた……もしもの時は、アレスについていけと。それが、俺が敵対できない理由となるからって……どういう意味かわからないけど」
「なるほど、ロナードがそんなことを……」
何となく理由はわかるが……それも後回しでいい。
「つまり、ここにいるのは……」
俺、カグラ、セレナ、アスナ。
カイゼル、母上、エリカ、レナ。
サスケ殿と、今はいないオルガってことか。
ここにいる全員で生き残るにはどうしたらいい?
しかし、そんな俺をあざ笑うかのように……。
状況は、次々と変化するのだった……。
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