141話 過去の因縁

 それから数日後……とある情報を得た俺たちは、行動を開始する。


 時間は深夜……騒ぎになっても、そんなに問題にならない時間だ。


「さて、準備はいいか?」

「「「はいっ!」」」


 心強い三人の声が重なる。


「今回は闇魔法は使わない。おそらく、そろそろ気づかれるはずだ」

「そうですね〜私も、大分気づくようになりましたし。気配というか、風の流れというか」

「バレたら大変ですもんね」

「むむ……では、正面突破……拙者の出番なのだ!」

「ああ、カグラを頼りにしてるよ。それに切り札は使いすぎない方が良い。今後使うのは、ここぞという時にする。幸い、闇魔法を使わなくても良くなってきた」


 サスケ殿がいるおかげで、情報も潜入も格段に楽になった。

 それに、もうさすがに……俺たちの正体もバレているだろう。

 ここんところ、少々やり過ぎている気はするし。

 だが……止まるつもりはない。


「じゃあ……行くぞ!」


 俺自身も気合を入れて——皇都の外れにある館に潜入する!







 そこでは、捕まえた女性たちを売買しているという情報だったが……。


 薄暗い広い空間に着いた時……突然、眩しい明かりに照らされる。


「やはり、罠だったか」

「くははっ! 仮面なんかしても無駄だっ! 貴様の正体はわかっている!」


 体育館のような広い空間には、確かに女性たちが檻に入れられている。

 しかし、それ以上に……荒くれ者達が、俺たちを囲んでいた。


「何より……ここでザガンか。いや、好都合か」

「何を余裕ぶってる! さっさと仮面を取れ——アレス!」


 俺はゆっくりと仮面を取り……奴と対峙する。


「久しぶりでもないか……ザガンよ」

「ククク……落ちぶれたものだなぁ? 皇族ともあろう方が、密偵の真似事か? 所詮、出来損ないということか」

「好きに言うが良い。俺は、俺の意思でやっていることだ。それに、お前には言われたくない。お前こそ、随分と落ちぶれたな? 奴隷商売に手を出すとはな——クズめ」


 こいつは、自分で買うだけじゃなく……自らも、売りに出していた。

 それも……自分が飽きて捨てた人間を。


「なっ——!? き、貴様が言うな! こそこそとしやがって!」

「仕方あるまい。お前達がろくでもないことをするからだ」

「う、うるさい!」

「それにしても……お前は変わらなかったか」

「ハァ? 何言ってんだ?」


 その瞳からは、傲慢さしか感じない。

 どうやら、あの時のまま……いや、それ以上に。

 これは俺の甘さだ……責任は自分でとる!


「御託は良い……お前は——もう許さんからな?」

「こ、こっちのセリフだ! 貴様のせいで俺の人生は台無しだ! 俺様はエリートだったんだ! それを貴様がァァァ!」

「何を言ってる? 全て自業自得だろうが……さて——死んでもらうぞ?」


 会話をやめて、俺は居合の構えを示す。


「こ、こっちのセリフだ! お前ら! アレスを捕らえろ! 女共は生かしておけ! あんな良い女達は勿体ない! 奴の目の前で犯してやる!」

「ゲヘヘ……良いねぇ」

「どれも良い女じゃねえか」


 ……馬鹿め……俺の逆鱗に触れたな。

 俺は全身に力を入れ……三人の前に立つ。


「主人殿、お気になさらずに」

「そうですよー、御主人様。あんなのは流しましょう」

「アレス様のお気持ちは嬉しいですけど、私たちだって守られるためにいるんじゃありませんから」


 ……バカは、俺もだったか。

 そうだ……俺は彼女達を大事に思っている。

 だが、守りたいと思っても……自分が守ればいいなどと思ってはいけない。

 それは、彼女達を侮辱する行為に他ならない。


「そうだったな……すまん、みんな。俺に力を貸してくれ」

「もちろんなのだ!」

「はいっ!」

「あいさー!」

「くっ……! アレスなんかについたことを後悔しろ!」


 さあ……始めようか!


 過去の因縁にけりをつけるために!

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