外伝~ターレス~

……さて、どうするかね?


「ターレス様」

「レイスか」


相変わらず、気配のない男よ。

まあ、それくらいでないと任せられないが。


「ルーン家から放たれた刺客は排除致しました」

「そうか、ご苦労だったな」

「いえ……流石に手こずりました。自害を許してしまうくらいには」

「なるほど……腐ってもルーン家ということか。道具であることを放棄して、自らの意思で動く刺客など……なんの意味もないが」


しかし、その腕前は一級品だ。

故に、今まで生き長らえてきたが……。


「いかが致しますか?」

「ふむ……どうやら、アレス皇子がやり過ぎているようだな。何より……神敵である可能性があるとお達しがあった」

「……神に仇なす者」

「教皇様より、お知らせが来てな。確定ではないが、怪しいということだ」


道理で、色々とおかしいわけだ。

年に似合わない立ち振る舞い、頭の回転速度……。

魔法の才能に、剣の才能まであるとな。


「なるほど……私が見失うことも含めて、色々と合点がいきましたね」

「お前が、尾行中に見失うと聞いた時は驚いたが……闇魔法を使っているなら話は変わる」

「はい、我々では探知できませんから」

「しかし、そうと知っていればいくらでも対処法はあるな?」

「もちろんです……ただ、今は厳しいですね。サスケ殿が味方についてしまったので」


うむ……タイミングが少し遅かったか。

もう少し早く知らせが来ていれば……いや、過ぎたことは仕方あるまい。

それも含めて、楽しむだけだ。


「まあ、良い。神敵だとわかってさえいればいい。さて、使い捨ての駒は何が残ってる?」

「ザガンかと……」

「あやつか……うむ、ひとまずそれで行くとしよう」


所詮分家当主の息子だ、いくらでも替えはきく。

それに、当主本人もな……。


「その後は如何なさいますか?」

「成人の日がもうすぐだったな?」

「ヘイゼルですね」

「その辺りまでに計画を立てておこう」

「御意。では、私は情報集めと防御に徹しております」


……さて、楽しくなってきた。

この国を裏から操る使命を持つ、我がゲイボルグ家。

代々の当主にのみ伝えられる使命だが……。


「教皇様の意思に逆らうつもりもないが……つまらんのも事実だ」

「決まりきった結末は嫌いですか?」


どうせなら、生を実感できるようなモノを……。


「ふっ……」

「如何なさいました?」

「いや、人のことは言えんな」


ルーン家の当主のことを笑えんな。

私も……結局は、意味を持たせたいと思っているか。

……それが、人間というモノか。

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