126話 懐かしき日々

 ……うん? 何か柔らかいものが……。


「むにゃ……」

「セレナ? ……なぜ?」


 目を開けると目の前にはセレナがいる。

 呼吸をするたびに、年に似合わない立派なモノが上下する。


(大人っぽくなってきて……色々な意味で。こりゃ、和馬の意識がなかったら手を出していたかもしれない)


 俺はふと背中からも何かを感じ……寝返りをうつと……。


「すやぁ……」

「……カグラまで」


(こっちは、顔は完全に完成しきってるな……整った綺麗な顔をしている。それでも、寝顔なんかは愛嬌があって可愛いな……本人は気にしてたけど、アレもきちんと成長しているしね)


「困ったなぁ……身動きが取れない」


(動いたら色々と触れてしまうし……そうしたら、流石の俺もまずい)







 結局、二人が起きるまで待ち……。


 たった今、何故か俺の部屋で正座をしています。


 とりあえず、俺は飯も食わずに朝まで寝ていたことはわかったが……。


「あぅぅ……恥ずかしよぉ〜」

「はぅ……恥ずかしいのだ」

「さて……説明をしてもらえるか?」

「えっと……アレス様が起きなくて……」

「そしたら、アスナが添い寝をしようとしたのだ!」

「ですから、私達がお守りしようと思って……」

「なるほど……まあ、良く潜り込もうとしてきたからなぁ」

「「アレス様??」」


 二人の冷たい視線が、俺に突き刺さる。


「い、いや! 誓って手は出してないからね!?」

「ほっ……さ、最初は私かカグラちゃんですからね!」

「拙者は、その……はぃ……」

「もう! カグラちゃん! しっかりして!」

「ははっ! セレナは変わったなぁ。昔は、あんなにおどおどしてたのにね」

「はっ……い、嫌ですか?」

「いいや、良いと思うよ。ハキハキしてて、自立した女性って感じでカッコいいよ」


(そうだよなぁ。見た目だけでなく、中身も成長するよな。すでに城で働いているわけだし)


「ほっ……良かったぁ〜。わたし、カッコいい女性になりたいんです! だから、どんどん頼ってくださいね!?」

「クク……ああ、そうさせてもらうよ。それにしても……カグラ?」


 ずっとモジモジしているカグラに近づくと……。


「「ひゃい!?」

「何を驚いている?」

「か、かっこいいのだ……」

「はい?」

「うぅー……」


(……俯いてしまった。カグラが女の子になってる……何というか、新鮮だなぁ)


 どうやら、それぞれ方向性は違うが……色々と変化したようだ。


 そのあとに、軽く説明を受ける。

 セレナは、基本的には両親がいる離れに。

 カグラとアスナは、これからうちに住むことになったらしい。

 幸い、部屋は余っているので問題はない。

 ちなみに、レナはエリカと同じ部屋に住むことになったと。





 そのまま話していると……窓から人が入ってくる。


「はいはーい! おはよーございます!」

「やあ、アスナ。どうでも良いが、窓から入るんじゃない」

「ふふ〜良いじゃないですか。私と御主人様の仲ですし」

「むぅ〜! 気安いですよ! わたしは、まだ認めてませんからね!」

「御主人様……ずるいのだ! 拙者の方が、ずっと前から仕えたいと思ってたのに! 決めたのだ! 今日から拙者も主人殿と呼ばせて頂くのだ!」


 女子三人寄らば姦しいとは言ったものだ……だが、不思議と悪い気はしない。

 ハーレムモノの主人公には、感情移入出来ないタイプだったんだが……。

 改めて……やはり、俺は和馬ではないということだな。


(今の俺を結衣が見たら……幻滅するんだろうなぁ。俺自身も、変化に戸惑うくらいだし)











 その後、朝食を食べて……。


 レナとエリカと遊んだら……。


 久々の稽古である。




 庭にて、カイゼルと対峙する。


「ふむ……良き構えです。隙が減りましたね」

「まあね。俺も遊んでいたわけじゃ——」


 自然体で言葉を発しつつ、予備動作なしで一気に距離を詰める。


「むっ!?」


 剣を振るうが、受け止められる……。


「けど……いくよ!」


 体重を乗せて、連続した剣技をお見舞いする!


「くっ!? こ、これは……!」


 すぐにカイゼルの防御が追いつかなくなり……。


「どうかな?」


 俺は膝をついたカイゼルに剣を向ける。


「……参りました。もう、私では相手にならないですな」

「まあ、そう言わないでよ。カイゼルには、もっと働いてもらわないとね」

「これはこれは……手厳しいお方だ。先帝を思い出しますな……あの方も、ゆっくりしなよと言いながら、私に無茶な命令をしたものです」

「本当はそうさせてあげたかったんだけど……どうも、色々ときな臭くてね。そうも言っていられないんだ」

「ええ、わかっております」


 すると……。


「拙者も!」

「ああ、良いよ」


 再び剣を構えて……。


「ハァ!」

「くっ!?」


 カグラが剣を振るうだけで……暴風が吹く!


「でも……」


 剣を斜めにして受け止めて、、カグラのパワーを逃がす。


「ふふ……流石なのだ」

「そっちこそ……相変わらずの力だね」

「まだまだです!」


 次々と剣撃が襲ってるが……それを避けつつ、小手を叩き込む!


「どう……まじか」


 以前なら、これで剣を手放していたが……。


「ふふふ、痛くも痒くもないのだ」

「まいったね、これは……」


 どうやら、とてつもない肉体強化が成されている。

 もはや、魔力なしでは傷一つつけられないか。


「でも、相変わらずアレス様は上手いのだ。ちっとも、当たらない」

「まあ、俺は食らわないことが前提だから。カグラは食らっても前へって感じかな」

「はいっ! 拙者の役目は主人殿をお守りすることですから!」


(……そうか。じゃあ、それに値する男にならないとね)


 いやはや……これは負けてられないや。


 何より……懐かしくて、心が温かくなる。


 なんか……帰ってきたんだなぁって思うよね。

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