117話戦闘

 奴らは……何者だ?


 いや……バカか、俺は。


 今は、そんなことを考えてる場合ではない!


「ガロン殿! ロナードを守ってください!」


「あん? しゃあねえ!」


「アスナ! 俺の背中は任せる!」


「あいさー!」


「ロナード! 時間を稼ぐ!」


「わかった!」


 俺は抜刀して、刀に火を纏わせる。

 そして、好き勝手している奴らに突撃し……。


「ヒャハハ!」

「クズめ」

 馬ごと、バターのように斬り裂く!

「ギァァアァ!?」

「貴様ぁぁ!!」

「させませんよ!」

「ゲホッ!?」


 俺の素早い動きに、アスナはしっかりついてくる。

 訓練の成果もあるだろうが、元々の才能もあるのだろう。

 カグラとは違った意味でやりやすい。


「おい! こいつだ! 銀髪のガキだっ!

「報酬は頂いたぜっ!」

「馬鹿言うな! 俺がやる!」


(どうやら、盗賊の類か? 装備や格好もバラバラだ。そして、狙いは俺? いや、都合がいい……俺に群がってくるなら)


「アスナ! 無法者のようだっ! 俺が一気にやる! 護衛を任せる!」

「了解です!」


 俺は刀を鞘にしまい、精神統一をする。

 ……市街地に被害が出ないように、範囲を狭めて……。

 尚且つ、奴らを焼き尽くす威力を……!


「アスナ! 俺の後ろに!」

「はいっ!」


 アスナが、俺の後ろに来ると同時に……。


「しねぇ!」

「俺が先だっ!」

「後ろにはロナードもいるぜ!」


(ロナードも狙いか……俺とロナードを消したい人間がいる?)


「まあ、良い……炎の波よ、敵を飲み込め——フレイムウェイブ!」


 威力調整をした炎の波は……。


「ギャァァァァ!」

「ァァァ!」

「ヒイィィィ!?」


 接近してきた奴らを飲み込んでいく。

 そして馬で駆けてきている奴らは……もう止まることができない。

 自動的に、俺の魔法の餌食となっていく。


「くっ……」

「平気ですかー?」

「ああ……こればっかりは、いつになっても慣れそうにないな」

「そうですねー……人が焼ける匂いってきついですよね」

「だが、これである程度一網打尽に出来たな」

「後ろの方にいる人は、まだ辛うじて生きてますね。一人くらい捕まえておきます?」

「ああ、ならず者なら、命の危険が迫れば口を割る……そうもいかないか」


 炎の波が去った後……。

 二人の男が、スッと立ち上がり……生きている者を槍で突き刺す。


「とっさにカスどもを盾にしましたが……なるほど、これは中々ですね」

「チッ! めんどくせえ」


 身長180程度で、引き締まった身体の男だ。

 顔は能面みたいに、無表情のまま……なまじ顔が精悍なだけに気味が悪い。

 もう片方は、それを超える大きさと肉体の持ち主で、厳つい顔をしている。


「アスナ!」

「わかってます! 相性が悪いですね! 交代します!」


 アスナが後方に下がり……すぐに、ガロン殿が来る。

 どうやら、ロナードが先に手配してくれたみたいだな。


「アレス、きたぜ。んで、俺の相手はアレか? へっ、良いぜ」

「なんだ?あいつは? 情報にねえ奴だ」

「お前の相手をしてやるよ。ほら、かかってきな」

「……チッ、計算が狂うぜ」


 にらみ合ったまま、二人はその場から離れていく。

 俺は目の前のこいつから視線を逸らさない——いや、逸らせない。


「一応聞くが……何者だ?」

「答えるとでも?」

「いいや」

「では、無駄ですね」

「そのようで」


 居合いの構えにて、奴と対峙する。

 奴は槍を構え、静かに佇む。


(隙がない……構えといい、盗賊の類じゃないな)


「ふむ……らちがあかないですね——」


(くる!)


「くっ!?」

「ほう?」


 気がついた時には、目の前に槍が来ていた!

 連続して槍が繰り出されるのを、身体をひねり躱すが……手が出ない!


「ならば……!」

「むっ!?」


 身体から炎を燃やして、相手にぶつける!


「これはこれは……この服があっても熱いとは」

「……随分と良いものを着てるな」


 見た目はただの服だが、燃えていない。


「そちらこそ……ふむ、奴がやられるわけですね」

「……なるほどな」


(この二人は、教会の者だろう。ならず者の中に潜んで、俺達をひっそりと始末するつもりだったということか)


「ふふ、察しも良いと……腕も悪くない。魔法は一流に近い……計算外のこともありましたし……ギレン! 退きますよ!」


「させるか! ファイアースネーク!」


「シッ!」


(槍の一振りでかき消した!?)


「ならば……燃え尽きろ——クリムゾン蒼炎


「くっ!?」


 相手を蒼い炎が包み込む……流石に上級魔法なら。


「ゼァ!」


「……光ってる?」


 光が奴を包み込み、俺の炎が弾かれる。


「ま、まさか、これを使わされるとは……なめてましたね」


 そして奴は武器をしまい、両手で身体を守っていた。


(——今なら!)


 抜刀の構えから瞬時に接近し——


「甘いですよ——聖光気!!」


 奴の腕が一層光り輝くが——全ての力を込めて。


「火龍一閃」


「なぁ——!?」


「団長!?」


 俺の放った居合いは——奴の右腕を切断した。


「セァ!」


「ぐはっ! ……なに?」


 右腕を切断されつつも、俺に蹴りを入れてきただと?


「退きますよ!」

「おうよっ!」


「ま、待て!」


 奴は一瞬だけ振り返り……。


「素晴らしい威力ですね。敬意を表して、名前だけ教えましょう。ハロルドと申します——以後お見知りおきを」


 そして、二人は見えなくなっていく……。


 この戦いで仕留められなかったのは……手痛いかもしれない。


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