116話行動開始

 黒の騎士服に着替えていると……。


「それ、似合いますねー?」


「うん? ああ、ありがとう」


「それって、良いものですよね?」


「父上が、俺に送ってくれたものだな。父上が冒険者をしてた時に愛用してたもので、過去の遺跡から発掘されたって言ってたっけ。自動修復機能と、見た目以上に頑丈だそうだ」


 今まで着る機会はなかったけど、今回は着ていく。

 見た目も正装だし、戦いの後のことを考えると、この格好が良いだろう。

 それに、今回は本気でいかないといけない。


「ふふ〜おそろですね?」


「まあ、両方黒い服か」


「カグラさんに怒られちゃいますねー?」


「いや、どうだろう? それよりも、拙者も欲しい!とか言いそう」


「……たしかに」






 準備を済ませ、玄関に向かうと……。


「うむ、来たか」


「よっしゃ! さっさといこうぜ!」


「すみません、遅くなりましたね」


「いや、俺たちも今来たところだ。さて、今現在味方の兵士達が、屋敷の周りにいる敵兵を押し返している。さらには、各地の兵士達が王城に向かっているらしい」


 なるほど、ロナードが人質ではなくなったからか。

 ここから敵に回るってことは……あっち側の人間ってことか。


「じゃあ、向かってくる奴らには遠慮しなくていいかな?」


「そいつらは、俺がいると知りつつ攻撃をしてきた……ならば、仕方ないが倒すしかあるまい」


「わかった」


 辛そうな顔だ……敵に回るとはいえ、自分の国の兵士だ。

 その心中は穏やかではないだろう。





 そして、最終確認をする。


「ガロン、お主が先陣を切ってくれ」


「おうよっ!」


「アレス、済まないがフォローを頼む」


「うん、わかった」


「アスナ殿は、遊撃を頼めるか?」


「いいですよー」


「よし……皆の者! 力を貸してくれ! 俺は逆賊であるライトを——討つ!」







 大使館を飛び出した俺たちの前には、すでに道ができている。


「ロナード様! 今のうちに!」

「ここは我々にお任せを!」

「この国を頼みます!」


「うむ! 任された!」


 それでも、抑え切れない兵士を……。


「邪魔だァァァ!」


「グフッ!?」

「ガハッ!?」

「ゴフッ!?」


 徒手空拳で、ガロン殿が蹴散らしていく。


「凄いですねー」


「ああ、まるで前にカグラがいるようだ」


 やはり純粋な前衛がいると楽だな。


「だが……サボるわけにもいかないか」


「今だ! 撃てぇぇ!!」


「やらせません!」


 飛んでくる弓矢を、アスナが小太刀で弾く。


「アレス!」


「任せてくれ——ファイアスネーク」


 市街地に被害を出さないように、操作して弓兵だけを狙っていく。


「ヒィ!?」

「お、追ってくる——ぎゃあァァァ!」

「や、やめ——アァァァ!」


 あるものは高いところから落ち……。

 あるものは顔を炎に包まれ……。

 それぞれ、物言わぬ死体に変わっていく。


「アレス……すまない」


「いえ、俺とて覚悟は出来てます。成人はしてませんが、もう子供ではありませんから」


 人を殺す忌避感が消えたわけてはないが……。

 もう、割り切れている自分がいる。

 果たして、それが良いことなのかは別として……。





 そして……王城の前にたどり着くが……。


「橋を下ろせー! 扉を開けろー!」

「ダメだっ! 奴ら閉じこもる気だっ!」

「時間稼ぎか!?」


「橋が上がっていて、門が閉じられているか……」


「ロナード! 俺なら上っていけるぜ!」


 跳ね橋は半分に分かれて上っている状態だ。

 確かに片方を登って、あっち側に飛ぶことは可能だろう。


「いや、それでは的になってしまう」


「あんだよ、じゃあどうすんだよ?」


「の、脳筋さんですねー」


「はは……カグラよりひどいね」


 一体、今までに何があったやら……。

 あとで、きちんと話を聞かないとね。


「うむ……無駄だと思うが、まずは呼びかけてみよう。ガロン、護衛を頼む」


「おうよ」


 ロナードとガロン殿が、城に近づいていく。


「城の兵士よっ! そして貴族や文官達よっ! 我の名はロナード-グロリア! 此度の騒動は我と兄上だけで決着をつける! そなた達を罪に問わないと約束しよう! 故に、ここを開けるが良い!」


「だ、騙されるな!」

「あんな奴が王になったら、俺たちは終わりだっ!」

「平民の血が入った奴が王になろうなどありえん!」

「お前こそ、大人しく死刑を受け入れれば良いものを!」


 王城の扉の上にいる奴らが、何やら騒ぎ立てている。

 どうやら、ロナードが王位につくと不都合な奴らのようだ。


「あんだ? あいつら……」


「俺を目の敵にする大臣や、上位貴族の子息どもだな……」


 すると……王冠をした人物が前に出てくる。


「父上殺しのロナードよっ! 王位は俺が継いだ! お前は大人しく死刑を受けるが良い!」


「俺は父上を殺してなどいない! お前こそ、父上を殺したのではないのか!? 俺には父上を殺す理由がない!」


「ふ、ふざけるなっ! お前は王位欲しさに父上を殺しんたんだっ! 」


「何を言うかっ! 俺は最初から王位を継ぐ気などないと言っていたっ!」


「う、嘘だっ! だって、宰相が……」


「なに? 宰相だと……?」


「アレス様! 何か後ろから来ます!」


「なに? ……なんだと?」


「ヒャハハハ!」

「死ねっ!」

「どけぇぇぇ!!」


 振り返ると、そこには兵士達を惨殺していく者達がいた。

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