第34話楽しい時間が終わり……

 戦闘を終えた後、俺たちは屋敷に帰ってきた。


 もちろん、事後処理をする兵士達にはお礼を言ってある。


 俺たちは疲れ果てて、悪いが先に帰してもらった形だ。




「いやー疲れた……」


「拙者はまだまだ平気なのだっ!」


「ふぇ〜、カグラちゃんは元気だねー」


「僕はダメです……凄いや、カグラさんは」


「ふふん!領地で走り込みをしたのだっ!」


「いや、そういうレベルじゃないから」


「ほ、褒めてくれないのですか……?」


 錯覚かな?

 カグラの頭に犬耳が見える……。


「偉いね、カグラ。よく頑張ったね、僕も負けてられないや」


「ありがとうございます!今度、一緒に走りますか!?」


「ハハ……うん、そうしようかな。まずは体力をつけないとね」


「わ、わたしも……!」


「では、僕もですね……!」


「うん!みんなで強くなるのだっ!」




 その後、お昼ご飯を食べてると……結局、皆でお昼寝をしてしまう。


 起きた後は風呂に入って、さっきの戦いについて意見交換したり。


 お互いの出来ることなど確認したり。


 カグラにせがまれて、俺の舞いを軽く披露したり。


 セレナと魔法の撃ち合いをしたり、カグラはオルガと模擬戦をしたり。


 結局、 夕ご飯の時間までそんなことをして過ごすのだった。




 夕ご飯時になると、ゴーゲンさんも帰ってきたので共に食事をする。


「ゴーゲン殿、後始末をありがとうございます」


「いえ、某の仕事ですから。今回は、お疲れ様でした。見事な戦い振りでしたね」


「そう言って頂けると嬉しいです。ですが、まだまだ精進してまいります」


「某も、負けていられませんな……弱気にならずに、この地を守って見せましょう」


「ゴーゲン殿……僕の方でも、何かしら手を打っておきます」


「……感謝いたします」




 夕飯を食べ後、再び風呂に入る。


 その後は、部屋でお話タイムとなる。


「オルガ、ありがとね。とっても楽しかったよ」


「拙者もなのだっ!」


「わたしもですー」


「僕の方こそありがとうございます。久々にみんなに会えて嬉しかったです」


「おや?オルガがデレましたね?」


「オルガは、いつも遠慮をするのだ」


「でも、それが良いところです」


「……からかわないでください。みんながそんなだから、僕がしっかりしないと」


「いうね……そんな大人ぶった君には……こうだっ!」


 枕をぶん投げる!


「うわっ!?」


 顔面に当たったオルガが、布団の上を転がる。


「なんなのですか!?楽しそうなのだっ!」


 カグラが思い切り振りかぶっている……俺に向けて!!


「ちょっ——!?君のはシャレにならないから——!?」


「いくのだっ!アレス様のいけず——!」


「グハッ!?」


 渾身の力で投げられた枕が俺に直撃する!


「わたしも……!アレス様のいけず——!」


「ま、待って!君たち、意味わかってないよね!?うおっ!?」


 セレナからも枕を投げられ……。


「やりましたね……いきますよっ!」


 復活したオルガまでもが参戦してくる!


「げげっ!?多勢に無勢だよっ!君達!?僕、一応皇子様だからね!?」


「「「知りませんっ!!!」」」


「あら、息ピッタリ……じゃなくて!」


 結局、俺1人で奮闘することになったが……。


 ……非常に、良い時間となった。


 来週からの学校も、この4人で頑張っていこうと思う。


 あっ——ちなみに、女子とは部屋が別々だということを明記しておく。





 そして……夜が明ける。


「では、父上、母上。行ってまいります」


「身体に気をつけてね、オルガ。アラドヴァル家の男子として、己に恥じぬ行動をしなさい」


「はい!母上!」



「うむ、しっかりやるように。アレス様の力になりなさい。それが、我が家の意思だと思え」


「畏まりました、父上」


「いや、ゴーゲン殿……それは……」


「某が勝手に思っているだけですので。貴方は、お好きなようになさってください」


「……わかりました」


「お世話になったのです!」


「お世話になりました!」


「お嬢さん方もありがとうね。オルガ、どっちかはお前の嫁さん候補かと思ってたのに……」


「母上!?そ、それは……」


「息子には、まだ早かったようだな。オルガ、お前も跡を継ぐ身だ。自分で選ばないようなら、我々が決めてしまうぞ?」


「うっ……が、頑張ります……」


「せ、拙者には……あ、アレス様が……」


「わ、わたしには……あぅぅ……」


「ハハ……ミンナタイヘンダネ……」


 どうしていいかわからない俺は、乾いた笑いをするのだった……。




 ゴーゲン殿達に別れを告げ、馬車が走り出す。


 しばらく雑談した後、帰ってからの予定を決めることにする。


「さて……オルガはこのままうちに来るけど、2人はどうする?」


「行きたいのですっ!」


「わ、わたしも……」


「決まりだね。そうか……全員が揃うのは初めてか」


「お、お土産は何が良いですか?」


「おいおい、そんなに緊張しないでくれよ。友達の家に遊びにくる感じでさ」


「む、無理ですよ!?王妃様の自宅ですよ!?」


「ん?皇子様の自宅でもあるけど?」


「それは——もういいのです!」


「クク……嬉しいこと言ってくれるね」


「大丈夫ですよ、オルガさん。エリナさんは、平民のわたしにも優しい方ですから」


「そうなのだっ!拙者なんか、膝枕までしてもらったのだ!」


「そ、そうですか……よし、アラドヴァル家の男子として、アレス様の友として認めてもらわないと……」


 そんな会話をしている時……クロスから反応がある。


(キュイー!)


(どうしたの?……慌ててる?)


(キュイキュイ!)


(何かが、迫ってきてる……?)


(キュイ!)


(よくわからないけどありがとう。警戒してみるよ)


(キュイキュイ)


 ……さて、どういうことかわからないが。

 無視できることではない……。

 何もないなら、それはそれで良い。


「アレス様?どうしたのです?」


「怖い顔してますよ……?」


「具合が悪いでしょうか?」


「いや、平気だ。ちょっと、まってて」


 俺は責任者に、嫌な予感がすることを告げる。

 ブリューナグ家の古参騎士で、名前はダイスさんという。


「左様ですか……」


「信じられないのは、無理もありませんが……」


「いえ、そんなことはありません。意外と、そういうことは馬鹿に出来ませんので。わかりました、警戒をしておきます」


「ほっ……助かります」


 話のわかる人で良かった。


 さすがは、ブリューナグ家の家臣だ。


 さて……何が起きるのだろうか?

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